スマイルトゥモロー

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スマイルトゥモロー
欧字表記 Smile Tomorrow[1]
品種 サラブレッド[1]
性別 [1]
毛色 鹿毛[1]
生誕 1999年4月20日[1]
死没 2017年7月26日(18歳没)[2]
抹消日 2004年3月19日[3]
ホワイトマズル[1]
コクトビューティー[1]
母の父 South Atlantic[1]
生国 日本の旗 日本北海道静内町[1]
生産者 千代田牧場[1]
馬主 飯田正剛[1]
調教師 勢司和浩美浦[1]
競走成績
生涯成績 14戦4勝[1]
獲得賞金 1億9982万9000円[1]
勝ち鞍
GI 優駿牝馬 2002年
GIII フラワーカップ 2002年
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スマイルトゥモロー(欧字名:Smile Tomorrow1999年4月20日 - 2017年7月26日)は、日本競走馬繁殖牝馬[1]

主な勝ち鞍は、2002年優駿牝馬(オークス)(GI)、フラワーカップGIII)。

生涯[編集]

デビューまで[編集]

1966年、千代田牧場が競走馬生産を充実させるために、北海道静内町に移転[4]。同年にイギリスニューマーケットにて、9歳の繁殖牝馬であるウェルシュティットビットを購入し、日本に輸入した[4]。それから千代田牧場にて生産を行ったが、牝馬の仔は1頭(チハヤエンゼル、1968年生)のみであった[4][5]。チハヤエンゼルが繁殖牝馬となって以降、代を重ねていったものの成績が良くなく、千代田牧場にとって優先順位の低い牝系になってしまっていた[4]

1988年、ウェルシュティットビッドから数えて5代目となる、コクトビューティーが千代田牧場にて誕生[6]美浦トレーニングセンター古賀史生厩舎に所属し、中央競馬で26戦4勝の成績を残した[6]。牧場では念のため、繁殖牝馬とし、初年度からアーミジャー、カコイーシーズ、フレイズと下級種牡馬との交配を実施[4]。特に2番仔と3番仔は、未熟児だったことから、コクトビューティーの売却が検討されるほどであった[4]。1998年、5年目の交配相手には、ホワイトマズルを選択。ホワイトマズルは1996年度に種付け頭数88頭中、生産頭数わずかに8頭だったこともあり[7]、牧場社長の飯田正剛は「(前略)(ホワイトマズルの)株価がガタガタに落ちていたんです。受胎すれば儲けものといった感じの、なかば投げやりな配合だった[4]。(カッコ内補足加筆者)」と回想している。

1999年4月20日、5番仔である鹿毛牝馬(後のスマイルトゥモロー)が誕生[1]。牝馬は将来の繁殖牝馬として自己所有するという方針から、牧場での所有となり[4]、「スマイルトゥモロー」という競走馬名が与えられた。さらに所有に際しては、名義を期待度の高い順に先代の飯田正、その妻の政子、そして社長の正剛に割り振るルールが存在した[注釈 1][4]。そのため、父サンデーサイレンスブライアンズタイムの仔は、正や政子の名義となる傾向が高かった[4]。対して、スマイルトゥモローは正剛による所有となり[4]、美浦トレーニングセンターの勢司和浩厩舎に入厩した[1]

競走馬時代[編集]

2001年10月27日、福島競馬場新馬戦(芝1200メートル)にて二本柳壮が騎乗してデビューし、4着。11月18日、同条件である2戦目の新馬戦で初勝利を挙げる。続いて、フェアリーステークスGIII)で重賞初出走するも11着に敗れた[8]

3歳となった2002年、3月2日の黄菊賞(500万円以下)は吉田豊に乗り替わって参戦。2回の除外を経て「これ以上待たせると彼女の走りたい気持ちが悪い方向へ行ってしまうということで使った(後略)[9]」(勢司)という動機で出走し[9]、2勝目を挙げた。続いて3月16日のフラワーカップGIII)では岡部幸雄に乗り替わり、3番人気で出走した[10]。2番人気のマイネヴィータが逃げる中、中団に位置[11]。第3コーナーからかかりながらまくりを見せて先頭に立ち、直線では後方に2馬身半差をつけて先頭で入線した[11]。重賞初勝利となり、開業3年目の勢司にとっても初の重賞タイトルであった[11]桜花賞GI)は吉田に戻って出走するも、出遅れて6着となった[10]

映像外部リンク
2002年 優駿牝馬(オークス)
レース映像 JRA公式YouTubeチャンネルによる動画

続いて、5月19日の優駿牝馬(オークス)(GI)に4番人気で出走した[12]サクセスビューティがスローペースで逃げる中、後方待機[12]。最終コーナーで後方勢の多くが、馬場の外々に進路を求めていたが、スマイルトゥモローは最も内側を突いて順位を上げた[12]。直線では、先に抜け出す3頭の外に持ち出して追い上げ、やがて差し切ると、後方に1馬身半差をつけて先頭で入線した[12]。勢司はGI初勝利、千代田牧場生産馬はクラシック初勝利であった[13]。加えて、フラワーカップ優勝馬として初めてクラシック優勝[13]。福島デビューが優駿牝馬を制したのは、1962年優勝のオーハヤブサ、1968年のルピナス以来、史上3頭目であった[13]

それから次第に気性難の影響が大きくなり、以後7戦走るも一度も勝利を挙げることができなかった[10]。道中で引っ掛かりながら暴走するなど、追い切り時には馬場入りするのも一苦労[10]。2003年の府中牝馬ステークスGIII)では、抑えが利かずに1000メートルを56.3秒で通過する大逃げを見せたこともあった[10][14]。2004年3月13日、中山牝馬ステークスGIII)で7着と敗れたのを最後に引退。3月19日に競走馬登録を抹消された[3][15]

繁殖牝馬時代[編集]

引退後は、故郷の千代田牧場で繁殖牝馬となる。9頭の仔を生産し、3頭が繁殖牝馬となった[16]。2017年7月26日、小腸破裂のため18歳で死亡[2]

競走成績[編集]

以下の内容は、netkeiba.com[8]およびJBISサーチ[17]に基づく。

競走日 競馬場 競走名 距離(馬場)

オッズ

(人気)

着順 タイム

(上がり3F)

着差 騎手 斤量

[kg]

1着馬(2着馬) 馬体重

[kg]

2001.10.27 福島 2歳新馬 芝1200m(良) 16 4 7 021.2 0(8人) 04着 1:10.6 -0.6 0二本柳壮 52 ルイジアナスワン 438
0000.11.18 福島 2歳新馬 芝1200m(良) 16 5 9 008.8 0(3人) 01着 1:10.0 -0.3 0二本柳壮 52 (マッキーグレイス) 436
0000.12.16 中山 フェアリーS GIII 芝1200m(良) 16 3 5 009.1 0(6人) 11着 1:09.1 -1.3 0二本柳壮 54 サーガノヴェル 436
2002.03.02 中山 黄梅賞 5下 芝1600m(良) 16 7 14 023.6 0(9人) 01着 1:34.7 -0.4 0吉田豊 53 (メイセイプリマ) 430
0000.03.16 中山 フラワーカップ GIII 芝1800m(良) 15 5 9 006.1 0(3人) 01着 1:49.1 -0.4 0岡部幸雄 53 (マイネヴィータ) 430
0000.04.07 阪神 桜花賞 GI 芝1600m(良) 18 1 1 008.8 0(4人) 06着 1:34.8 -0.5 0吉田豊 55 アローキャリー 428
0000.05.19 東京 優駿牝馬 GI 芝2400m(良) 18 5 10 010.5 0(4人) 01着 2:27.7 -0.2 0吉田豊 55 (チャペルコンサート) 434
0000.11.10 京都 エリザベス女王杯 GI 芝2200m(良) 13 3 3 030.7 0(5人) 06着 2:14.3 -1.1 0吉田豊 54 ファインモーション 430
2003.06.15 東京 エプソムカップ GIII 芝1800m(稍) 18 4 8 010.6 0(5人) 05着 1:48.4 -0.7 0吉田豊 55 マイネルアムンゼン 450
0000.07.13 阪神 マーメイドS GIII 芝2000m(重) 10 8 9 002.5 0(1人) 07着 2:05.8 -2.1 0武豊 56 ローズバド 444
0000.10.19 東京 府中牝馬S GIII 芝1800m(良) 14 6 10 010.8 0(5人) 03着 1:46.9 -0.3 0柴田善臣 55 レディパステル 446
0000.11.16 京都 エリザベス女王杯 GI 芝2200m(良) 15 7 13 020.2 0(7人) 15着 2:14.0 -2.2 0吉田豊 56 アドマイヤグルーヴ 442
0000.12.21 阪神 阪神牝馬S GII 芝1600m(良) 16 2 4 016.7 0(4人) 14着 1:34.6 -1.2 0吉田豊 55 ファインモーション 444
2004.03.13 中山 中山牝馬S GIII 芝1800m(良) 16 5 10 010.7 0(7人) 07着 1:46.6 -0.5 0吉田豊 54 オースミコスモ 448

繁殖成績[編集]

生年 馬名 毛色 馬主 戦績 主な勝利競走 供用 出典
初仔 2005年 スマイルオンザラン 鹿毛 ブライアンズタイム 小林英一 8戦1勝 抹消 [18]
2番仔 2006年 スマイルトゥゲザー 黒鹿毛 青山洋一 7戦0勝 繁殖牝馬 [19]
3番仔 2007年 スマイルタイム 12戦4勝 抹消 [20]
4番仔 2008年 イクゼギンギラギン 青鹿毛 ロックオブジブラルタル 佐々木完二 19戦2勝 抹消 [21]
5番仔 2009年 サンキュースマイル 鹿毛 ブライアンズタイム 飯田良枝 2戦0勝 繁殖牝馬 [22]
2010年 不受胎 ディープインパクト [16]
6番仔 2011年 サトノブレゲ 鹿毛 アドマイヤムーン 里見治 2戦0勝 抹消 [23]
7番仔 2012年 トゥモローワールド ディープインパクト 窪田芳郎
窪田康志
5戦0勝 抹消 [24]
2013年 流産 [16]
8番仔 2014年 レインボージャージ 黒鹿毛 ダイワメジャー (株)山紫水明 2戦1勝 抹消 [25]
9番仔 2015年 ギブユースマイル エンパイアメーカー 飯田正剛 2戦0勝 繁殖牝馬 [26]
2016年 死産 オルフェーヴル [16]
2017年 不受胎 [16]
2018年 母体内死亡 ダイワメジャー [16]

血統表[編集]

スマイルトゥモロー血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 リファール系
[§ 2]

*ホワイトマズル
White Muzzle
1990 鹿毛
父の父
*ダンシングブレーヴ
Dancing Brave
1983 鹿毛
Lyphard Northern Dancer
Goofed
Navajo Princess Drone
Olmac
父の母
Fair of the Furze
1982 鹿毛
Ela-Mana-Mou *ピットカーン
Rose Bertin
Autocratic Tyrant
Flight Table

コクトビューティー
1988 鹿毛
*サウスアトランティック
South Atlantic
1980 鹿毛
Mill Reef Never Bend
Milan Mill
Arkadina Ribot
Natashka
母の母
シルクエンゼル
1983 鹿毛
*パーソロン Milesian
Paleo
シルクベンチュア *ヴェンチア
チハヤエンゼル
母系(F-No.) ウエルシユテイツトビツト系(FN:4-c) [§ 3]
5代内の近親交配 5代内アウトブリード [§ 4]
出典
  1. ^ [27]
  2. ^ [28]
  3. ^ [27]
  4. ^ [27][28]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 後に正剛の妻・良枝が馬主登録を行っている。期待度による優先順位は正剛の次、つまり最下位に配置された。[4]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q スマイルトゥモロー”. JBISサーチ. 2015年6月28日閲覧。
  2. ^ a b “オークス馬スマイルトゥモローが小腸破裂で死す”. 日刊スポーツ. (2017年7月26日). http://p.nikkansports.com/goku-uma/news/article.zpl?topic_id=1&id=1862383&year=2017&month=7&day=26 2019年9月27日閲覧。 
  3. ^ a b スマイルトゥモロー現役を引退し繁殖へ”. keibado.ne.jp. 競馬ブック. 2015年6月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年10月6日閲覧。
  4. ^ a b c d e f g h i j k l 『優駿』2002年8月号 46-49頁
  5. ^ 繁殖牝馬情報:牝系情報|ウエルシユテイツトビツト(GB)”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  6. ^ a b コクトビューティー”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  7. ^ 種牡馬情報:世代・年次別(サラ系総合)|ホワイトマズル(GB)”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  8. ^ a b スマイルトゥモローの競走成績”. netkeiba.com. Net Dreamers Co., Ltd.. 2019年9月27日閲覧。
  9. ^ a b 『優駿』2002年7月号 26-29頁
  10. ^ a b c d e 『'04 さようなら名馬たち』38-39頁
  11. ^ a b c 『優駿』2002年5月号 123頁
  12. ^ a b c d 『優駿』2002年7月号 20-25頁
  13. ^ a b c 『優駿』2002年7月号 132-133頁
  14. ^ 『グラフ優駿 TURF HERO 2003』53頁
  15. ^ “スマイルトゥモロー、ピースオブワールド引退 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. https://news.netkeiba.com/?pid=news_view&no=5440 2021年10月6日閲覧。 
  16. ^ a b c d e f 繁殖牝馬情報:牝系情報|スマイルトゥモロー”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  17. ^ 競走成績:全競走成績|スマイルトゥモロー”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月27日閲覧。
  18. ^ スマイルオンザラン”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  19. ^ スマイルトゥゲザー”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  20. ^ スマイルタイム”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  21. ^ イクゼギンギラギン”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  22. ^ サンキュースマイル”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  23. ^ サトノブレゲ”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  24. ^ トゥモローワールド”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  25. ^ レインボージャージ”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  26. ^ ギブユースマイル”. JBISサーチ. 2021年10月6日閲覧。
  27. ^ a b c スマイルトゥモロー 血統情報:5代血統表”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2019年9月27日閲覧。
  28. ^ a b c スマイルトゥモローの血統表”. netkeiba.com. Net Dreamers Co., Ltd.. 2019年9月27日閲覧。

参考文献[編集]

  • 『'04 さようなら名馬たち』週刊Gallop臨時増刊、産業経済新聞社、2005年1月17日。
  • 『グラフ優駿 TURF HERO 2003』「優駿」3月号増刊、日本中央競馬会、2004年3月20日。
  • 優駿』(日本中央競馬会
    • 2002年5月号
      • 優駿編集部「【重賞データファイル】第16回時事通信杯フラワーカップ(GIII)」
      • 優駿編集部「【Play-back the Grade-Races 2002】第16回フラワーカップ(GIII)」
    • 2002年7月号
      • 優駿編集部「【Play-back the Grade-I Races 2002】第63回オークス(GI)スマイルトゥモロー」
      • 優駿編集部「【Play-back the Grade-I Races 2002】第63回オークス(GI)勢司和浩調教師『すべては馬たちのために』」
      • 優駿編集部「【重賞データファイル】<第63回オークス>優駿牝馬(GI)」
    • 2002年8月号
      • 吉沢譲治「【2002年春GI勝ち馬の故郷】千代田牧場(北海道静内町)チームワーク」

外部リンク[編集]