シトロエン・ZX

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5ドア(初期型)
3ドア(後期型)

シトロエンZXCitroën ZX )は、フランスの自動車会社シトロエンが、1991年から1997年まで製造したハッチバック型の乗用車である。後にステーションワゴンが追加された。中国ではその後も継続生産されている。

概要[編集]

1986年に生産を終了したGSの後継車種として登場したBXは1,400-1,900ccクラスとなり、水冷エンジンを持ち装備も上級化したため、ベースモデルのAXとの車格のギャップが大きくなり過ぎ、GSの購買層を完全には吸収できなくなってしまった。この隙間を埋めるために1991年に発表されたのがZXである。

同じPSA・プジョーシトロエングループのプジョー・306パイロットモデルという性格を持ち、ホイールベースは異なるが、プラットフォームを共有している。ボディ形状は5ドアのハッチバックでスタートし、クーペと呼ばれる3ドアハッチバックや、ブレークと呼ばれるステーションワゴンも後に追加された。

ボディサイズは、全長4,070mm×全幅1,700mm×全高1,404mm、ホイールベース2,540mm、エンジンは1.1L、1.4L、1.6L、1.8L、1.9L、2.0Lのガソリンエンジンと1.9Lのディーゼルエンジン、それらをシトロエン伝統のFF方式で駆動した。スタイリングは、当時関係の深かったイタリアのデザイン会社ベルトーネが担当、最終的には例に漏れずシトロエン社内デザインセンターが細部をまとめた。ブレークのリア周りはベルトーネのスタイリング。内装はシトロエン社内デザインセンターが担当した。

サスペンションは、前輪がマクファーソンストラットで、後輪がトーションバー式フルトレーリングアーム。GSの後継車種でありながらハイドロニューマチックの採用はなく、一般的な金属ばねが使われている。しかし旋回時の横Gとストローク(足の伸び縮み)でブッシュを変形させ、後輪が前輪と同位相に操舵する、セルフステアリング・リアアクスルと呼ばれる簡易的な四輪操舵機構が新しく採用されている。

1995年にフロントグリル周辺の形状が変わるなど小規模な変更を加えながら、1997年発表のクサラにその地位を譲るまで生産された。

中国での生産[編集]

ZXはPSAグループ中国武漢に合弁会社・神龍汽車(東風プジョー・シトロエン)の主力車種として生産され、タクシー等に幅広く用いられている。中国市場専用のノッチバック版のエリゼーも投入されている。

日本での販売[編集]

日本では、正規輸入代理店であったユーノス西武自動車販売が、5ドアモデルであるクラブ(1.6L)とシュペール(1.9L)の輸入を1992年から開始。1994年にはクーペ(1.8L)が追加され、クラブがクーペと同じ1.8Lに、シュペールは2.0Lに排気量がアップされた。1995年にはブレーク(1.8L)が追加された。

1996年ユーノスが消滅したことに伴い、西武自動車販売のみの輸入となってからは、クラブ、クーペ、ブレークの3タイプになり、全て1.8Lの排気量となり、クサラが輸入開始される1998年まで販売された。デザインがシトロエンとしては没個性的で、またエグザンティアに採用されたハイドロなどのシトロエン伝統の装備を持たなかったこともあり、販売は伸び悩んだ。しかしながら、シトロエンの特長として挙げられる長いホイールベースによる快適性では決してその名に恥じるものではなく、乗り心地もコイル式としては極めてなめらかで優れたものであった。

モータースポーツ[編集]

ZXラリーレイド

シトロエンはPSAグループ同門のプジョーラリーレイド競技から撤退した後を継ぐ形で、1991年よりパリ-ダカールラリー(パリダカ)にワークス参戦。同年発売のZXを宣伝する意味から、参戦車両をZXラリーレイド (ZX Rallyraid、ZX RR) [1]と命名した。外観は一応市販車のイメージに寄せているが、中身はプジョー・205 T16 グランレイドの進化型である405 T16 グランレイドをリファインした、鋼鉄製パイプフレーム製シャシー+ミッドシップエンジン+四輪駆動のT3(プロトタイプカテゴリー)のマシンそのものであった。エンジンは330馬力の直列4気筒2.0リッターターボ。仕様変更に合わせて「エボリューション5」までが存在した。

パリダカではアリ・バタネンピエール・ラルティーグを筆頭に、ジャッキー・イクスユベール・オリオールビョルン・ワルデガルドティモ・サロネンブルーノ・サビーらがドライブ。1991年、1994年、1995年、1996年に4勝し、FIAクロスカントリーラリー・ワールドカップのマニュファクチャラー部門でタイトルを5連覇(1993年-1997年)。通算42戦36勝[2]という圧倒的な戦績で、三菱・パジェロをほぼ圧倒した。

しかし1998年にFIAは高速化に歯止めをかけるため、T3クラスのメーカー参戦を禁止し[3]、ZXのラリーレイド活動に終止符が打たれた。なおダカールではこの規定が先取りで1年早く導入されていたため、1996年までしか参加していない。セダンに近いフォルムだった外観は、最終型でバギーカーに近くなっていた。

ラリーでは90年代にグループA規定やF2キットカー規定の下に改造され、フランス国内選手権で用いられた。

脚注[編集]

<- Previous シトロエン ロードカータイムライン 1980年代-
タイプ 1980年代 1990年代 2000年代 2010年代 2020年代
0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 0 1 2 3
ハッチバック 2CV
LN / LNA AX C1 I C1 II
ヴィザ サクソ C2
C3 I C3 II C3 III
DS3 DS3クロスバック
C4エアクロス
GSA ZX クサラ C4 I C4 II C4 III
オープン DS3カブリオ
セダン BX エグザンティア C5 I C5 II
CX XM C6
ミニバン C15 ベルランゴ ベルランゴ II
C3ピカソ
クサラピカソ
C4ピカソ I C4ピカソ II
エバシオン C8 I C8 II C8 III
オフローダー メアリ
クロスオーバーSUV Cクロッサー
DS4 DS4
DS5
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