キルミーラ

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キルミーラ: किर्मीर, Kirmīra)は、インド神話に登場するラークシャサである。バカ[1]アラーユダと兄弟[2][3]。またヒディムバーの兄ヒディムバとは親友[4]幻力に長け、クル国カーミヤカの森英語版を住処とし、戦いを仕掛けて打ち負かした者を喰らっていたが[5]パーンダヴァ5王子の1人ビーマに退治された[6]

神話[編集]

バカが殺されたとき、キルミーラは仇のビーマを探したが見つけることができなかった[7]。のちに賭博に敗れたパーンダヴァがカーミヤカの森を訪れたとき、キルミーラは仇がいるとは気づかずに、腕を大きく広げて彼らの行く手を遮った。キルミーラが幻力を放ち、大音響で叫ぶと森中の動物や鳥類が驚いて逃げ出し、大地を何度も踏みしだくと、強風が起きて砂塵が空を覆った。そのためパーンダヴァに同行していたダウミヤはラークシャサを調伏するマントラを唱えて、キルミーラの幻力を打ち消さなければならなかった[8]

キルミーラは彼らがパーンダヴァであることを知ると、ビーマを殺して喰らおうとした。ビーマとキルミーラは樹木を武器にして戦った。2人は森の木々が滅びるような勢いで樹木を引き抜いて、たがいに殴り合い、樹木を砕け散らせた。その戦いはヴァナラ族のヴァーリンスグリーヴァの戦いのようであった。最後にビーマはキルミーラを投げ飛ばし、キルミーラが大地にうつ伏せで倒れこむと、背後から両腕を回して絞め殺した[9][6]

脚注[編集]

  1. ^ 『マハーバーラタ』3巻12章22。
  2. ^ 『マハーバーラタ』7巻151章1-3。
  3. ^ 『インド神話伝説辞典』p.35「アラーユダ」の項。
  4. ^ 『マハーバーラタ』3巻12章32。
  5. ^ 『マハーバーラタ』3巻12章23。
  6. ^ a b 『インド神話伝説辞典』p.133-134「キルミーラ」の項。
  7. ^ 『マハーバーラタ』3巻12章29。
  8. ^ 『マハーバーラタ』3巻12章6-20。
  9. ^ 『マハーバーラタ』3巻12章25-68。

参考文献[編集]

  • 『原典訳 マハーバーラタ3』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2002年。ISBN 978-4480086037 
  • 『原典訳 マハーバーラタ7』上村勝彦訳、ちくま学芸文庫、2003年。ISBN 978-4480086075 
  • 菅沼晃編 編『インド神話伝説辞典』東京堂出版、1985年。ISBN 978-4490101911