落陽のパレルモ

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NTT西日本NTT東日本フレッツシアター 宝塚ミュージカル・ロマン[1]落陽のパレルモ』(らくようのパレルモ)は、宝塚歌劇団ミュージカル作品。15場[1]

概要[編集]

2005年11月4日から12月13日[1](新人公演は11月29日[2])に宝塚大劇場、2006年1月2日から2月12日[1](新人公演は1月17日[2])に東京宝塚劇場にて、花組により上演された。 併演作はロマンチック・レビュー『ASIAN WINDS!』-アジアの風-[1]

19世紀半ば、イタリア統一をめぐり激動の中にあるシチリアを舞台に、2つの世代の愛を描いている。華やかなドレスに軍服・濃厚なラブロマンス等、宝塚の特性を生かした作品。

花組娘役トップのふづき美世の退団公演。

あらすじ[編集]

1942年、シチリア島南部のパレルモ。ヴィットリオFは、恋人ジュディッタを伴い、パレルモの名門貴族、カヴァーレ公爵家の屋敷へと帰郷する。ジュディッタは彼の曽祖父ヴィットリオ・ロッシと、曾祖母アンリエッタが描かれた肖像画を見て心を奪われる。そこで、ヴィットリオFの祖母・エルヴィラは、二人の愛の物語を、彼女へと語り始める…。

1860年のシチリア。イタリア統一の動きが高まる中、ヴィットリオ・ロッシは革命軍の義勇兵として参加しブルボン兵と戦う。翌年、革命軍が勝利し、シチリアは平穏を取り戻す(第二次イタリア独立戦争)。中佐へと昇格したヴィットリオは、カヴァーレ公爵家の晩餐会に招かれ、そこで、公爵家の長女アンリエッタと出会う。

ヴィットリオは故郷のモンデーロ村の祭りにアンリエッタを誘い密会する。自らの生い立ちを話し、心を交わし合う。突如、政府軍が現れ祭りを中止させる。政府軍の士官としてその場にいたロドリーゴは、アンリエッタの姿を見つけ驚愕しヴィットリオに決闘を申し込む。幸いアンリエッタの父・カヴァーレ公爵が割って入り事なきを得るが、ヴィットリオの転任を宣言する。アンリエッタは屋敷へ連れ戻されるが、嵐の夜、ヴィットリオは彼女の寝室に窓から忍び込み、人々が平等にいられる世の中に変えて必ず迎えにくると約束し、アンリエッタも待ち続けると答え愛を交わす。

一方、1942年、ヴィットリオFはジュディッタに母の花嫁衣装を着せる。その間、ヴィットリオFは彼女がユダヤ人である事と懐妊中である事を祖母に明かし、ファシスト政権下にあるため亡命の意思を告げる。エルヴィラは怒り、その姿を見たジュディッタは自らの血を憎む。だがヴィットリオFは血の一滴まで愛していると慰める。

1942年のジュディッタ同様に、1962年のアンリエッタも許されぬ愛に悩んでいた。カヴァーレ家の次女・マチルダが王族と婚約し、その花嫁衣装が披露されていた。ところが、そこへ賊が押し入り、マチルダを誘拐する。貧しさに耐えかねた平民が、貴族を襲撃したのだった。

誘拐犯と目されるニコラを発見するため、ヴィットリオに帰還命令が下る。その頃、マチルダはモンデーロ村の教会に監禁され、手荒な扱いを受けていた。ニコラはそれを改めさせ、マチルダに粗末な食事を与えつつ、自分たちの悲惨な有様と妹・ルチアのことを語る。マチルダは同情し自らの首飾りを差しだすが、施しは受けないと、ニコラは拒絶した。

帰郷したヴィットリオはマチルダを発見し、テロではなく「国を政治から変えねばならない」とニコラを叱咤するが、ニコラはもう一刻の猶予もないと主張する。ヴィットリオを尾行していた政府軍の兵士が現れ、ルチアを人質に投降を求めた。結局ニコラと仲間は射殺されてしまう。

再び1942年、屋敷から出て行こうとするジュディッタを、エルヴィラは引き止める。二組の恋人たち、そして家族は「身分」の壁に苦しむ。

娘たちの一件で心を痛め病を悪化させたカヴァーレ公爵夫人が死去する。母の死によってアンリエッタは家督の相続を真剣に考え、ヴィットリオに別れの手紙を送る。ヴィットリオはカヴァーレ家の葬列を待ち伏せしてアンリエッタと会い、愛しているが分かれなければならないことを確認する。彼は母・フェリーチタの形見のロザリオを手に、身分に引き裂かれた父母の事を思い出す。

しばらく後、ドンブイユ公爵から見事な礼服が贈られ、屋敷に招かれる。ドンブイユ公はフェリーチタと揃いのロザリオを見せ、父親であると名乗りでる。先日の葬列の際に、ヴィットリオの姿を見かけて気付いたのだった。そして、公爵は舞踏会の招待客にヴィットリオを披露する。彼の育ちに文句をつける者に対し公爵は、貴族の時代はやがて終わる、それを受け入れるべきだと話す。

ヴィットリオとアンリエッタは見つめ合うが、そこにロドリーゴが割って入る。あなたの幸せを祈ると言い、静かに去っていく。ヴィットリオとアンリエッタは祝福の中、舞踏会で踊り続ける。それは華やかな貴族の時代の落陽でもあった…

一方、1942年のヴィットリオFとジュディッタも、二人で屋敷を出立する。シチリアの夕日が二組の恋人たちを鮮やかに照らしていた。

登場人物[編集]

19世紀[編集]

  • ヴィットリオ・ロッシ - イタリア解放軍の闘士。貴族の父と平民の母との間に生まれる。
  • アンリエッタ - カヴァーレ公爵家の長女。
  • ロドリーゴ・サルヴァトーレ・フォンティーニ伯爵 - 名門貴族の御曹司で、アンリエッタの縁談の相手。
  • マリオ・フランチェスコ・ディ・ドンブイユ公爵 - シチリア一の有力貴族。
  • アレッサンドロ・ファブリッツィオ・ディ・カヴァーレ公爵 - アンリエッタの父。カヴァーレ家当主。
  • マリア・コンツェッタ・カヴァーレ公爵夫人- アンリエッタの母。
  • マチルダ - カヴァーレ公爵家の次女。18歳。
  • ベアトリチェ - カヴァーレ公爵家の三女
  • ニコラ・ジロッティ - ヴィットリオの幼馴染。
  • ルチア - ニコラの妹。ヴィットリオに恋している。
  • フェリーチタ - ヴィットリオの母。精神を病み、幼少のヴィットリオを残して自殺する。

20世紀[編集]

  • ヴィットリオ・ファブリッツィオ・ロッシ・ディ・カヴァーレ - オペラの新進演出家。エルヴィラの孫。
  • ジュディッタ・フェリ - ヴィットリオFの恋人。元モデルユダヤ人
  • エルヴィラ・フェリーチタ・マリア・ディ・カヴァーレ - ヴィットリオ・Fの祖母で、ヴィットリオの娘。

物語の設定[編集]

ヴィットリオとその子孫のヴィットリオFの間80年余りの時代は、舞台上では描かれていないものの、パンフレットに年表形式で記載されている。また出演者がそれぞれの年代に扮した写真も添えられている。

時代背景は、ルキノ・ヴィスコンティの『山猫』の設定に似たモチーフを使っている。[3]

スタッフ[編集]

宝塚大劇場公演のデータ

出演者一覧[編集]

出典[6]

高ひづる専科所属)
萬あきら(専科所属)
夏美よう梨花ますみ大伴れいか高翔みず希鈴懸三由岐春野寿美礼眉月凰歌花由美絵莉千晶彩吹真央
悠真倫花純風香真飛聖ふづき美世蘭寿とむ橘梨矢愛音羽麗涼葉らんの紫万新舞城のどか
未涼亜希桐生園加遠野あすか貴怜良桜一花七星きら嶺輝あやと華形ひかる華桐わかな紫峰七海
望月理世花野じゅりあ珠まゆら舞名里音月路奏夏空李光華城季帆初姫さあや日向燦紫陽レネ
星紀はんな姿央みやび桜乃彩音扇めぐむ夕霧らい祐澄しゅん愛純もえり朝夏まなと華耀きらり聖花まい
月央和沙雫花ちな斗南さきら花咲りりか望海風斗華月由舞天宮菜生嶺乃一真澪乃せいら亜門真地
浦輝ひろと初輝よしや湖々マリア芽吹幸奈彩城レア悠南はやき遼かぐら梅咲衣舞煌雅あさひ冴月瑠那
瀬戸かずや瞳ゆゆ夏城らんか野々すみ花白姫あかり鳳真由花蝶しほ花峰千春春花きらら輝良まさと
彩咲めい

※野々すみ花は11月25日から12月13日まで休演。あうら真輝は12月8日から全日程休演(東京公演も含む)。

主な配役[編集]

※「()」の人物は新人公演・配役。氏名の前に「宝塚」、「東京」の文字がなければ両公演共通。

  • ヴィットリオ・ロッシ[7] - 春野寿美礼(華形ひかる)
    • 少年時代 - 宝塚(11月4日-11月24日)・東京(全日程):野々すみ花、宝塚(11月25日-12月6日。野々すみ花休演に伴う):あうら真輝、宝塚(12月8日-12月13日。あうら真輝休演に伴う):瞳ゆゆ(宝塚:あうら真輝、東京:瞳ゆゆ)
  • アンリエッタ・クラウディア・カヴァーレ[7] - ふづき美世(桜乃彩音)
  • ヴィットリオ・ファブリッツィオ・ロッシ・ディ・カヴァーレ[7] - 彩吹真央(朝夏まなと)
  • ロドリーゴ・サルヴァトーレ・フォンティーニ伯爵[7] - 真飛聖(望月理世)
  • ニコラ・ジロッティ[7] - 蘭寿とむ(扇めぐむ)
  • マリア・コンツェッタ・カヴァーレ公爵夫人[7] - 高ひづる(華桐わかな)
  • マリオ・フランチェスコ・ディ・ドンブイユ公爵[7] - 萬あきら(紫峰七海)
  • アレッサンドロ・ファブリッツィオ・ディ・カヴァーレ公爵[7] - 夏美よう(嶺輝あやと)
  • エルヴィラ・フェリーチタ・マリア・ディ・カヴァーレ[7] - 梨花ますみ(桜一花)
  • ミケーレ神父[7] - 大伴れいか(月路奏)
  • カルロ[7] - 高翔みず希(日向燦)
  • ラウラ[7] - 鈴懸三由岐(珠まゆら)
  • エンリコ[7] - 眉月凰(浦輝ひろと)
  • ベッカデッリ公爵夫人[7] - 歌花由美(華耀きらり)
  • トリゴーナ伯爵夫人[7] - 絵莉千晶(姿央みやび)
  • ステファーノ・フォンディ[7] - 悠真倫(夏空李光)
  • マルタ[7] - 花純風香(愛純もえり)
  • カザーロ伯爵[7] - 橘梨矢(嶺乃一真)
  • リカルド[7] - 愛音羽麗(望海風斗)
  • ヴァレンティーニ侯爵夫人[7] - 涼葉らんの(初姫さあや)
  • 執事[7] - 紫万新(星紀はんな)
  • サンドラ[7] - 舞城のどか(花咲りりか)
  • ジョルジォ・フォンディ[7] - 未涼亜希(彩城レア)
  • ルカ[7] - 桐生園加(亜門真地)
  • ジュディッタ・フェリ[7] - 遠野あすか(華城季帆)
  • サーロ[7] - 貴怜良(月央和沙)
  • ルチア[7] - 桜一花(舞名里音)
  • アナベラ・フォンディ[7] - 七星きら(花野じゅりあ)
  • ブルーノ将軍[7] - 嶺輝あやと(祐澄しゅん)
  • ルチアーノ[7] - 華形ひかる(悠南はやき)
  • カザーロ伯爵夫人[7] - 華桐わかな(雫花ちな)
  • マッシモ大佐[7] - 紫峰七海(夕霧らい)
  • タッジオ[7] - 望月理世(天宮菜生)
  • テレサ[7] - 舞名里音(宝塚:瞳ゆゆ、東京:春花きらら)
  • トリゴーナ伯爵[7] - 夏空李光(紫陽レネ)
  • フェリーチタ[7] - 華城季帆(七星きら)
  • マチルダ・コンツェッタ・アマーリア・カヴァーレ[7] - 桜乃彩音(澪乃せいら)
  • ベアトリチェ・ビアンカ・カヴァーレ[7] - 華耀きらり(華月由舞)
  • ベッカデッリ令嬢[7] - 花咲りりか(芽吹幸奈)
  • ペッペ[7] - 彩城レア(冴月瑠那)

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 監修・著作権者:小林公一『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて(舞台編)』阪急コミュニケーションズ、2014年4月1日。ISBN 978-4-484-14600-3 
  • 監修・著作権者:小林公一『宝塚歌劇100年史 虹の橋 渡りつづけて(人物編)』阪急コミュニケーションズ、2014年4月1日。ISBN 978-4-484-14601-0 

外部リンク[編集]