家族八景

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
家族八景
著者 筒井康隆
発行日 1972年(単行本)
発行元 新潮社
ジャンル SF小説
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 上製本
ページ数 231(文庫)
次作 七瀬ふたたび
コード ISBN 978-4101171012(文庫)
ウィキポータル 文学
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

家族八景』(かぞくはっけい)は、日本小説家筒井康隆SF小説。また、それを原作とした漫画、およびテレビドラマ。

概要[編集]

1970年から1971年にかけて『小説新潮』『別冊小説新潮』に掲載された1話完結の8編の短篇小説からなる。それぞれの短編のタイトルは、「無風地帯」「澱の呪縛」「青春讃歌」「水蜜桃」「紅蓮菩薩」「芝生は緑」「日曜画家」「亡母渇仰」。後に続編として執筆された『七瀬ふたたび』『エディプスの恋人』をあわせた「七瀬シリーズ」「七瀬三部作」のひとつ。

第67回直木賞候補作。筒井にとっても3度目にして最後の直木賞候補だった。司馬遼太郎が『朝日新聞』記者に本命視することを示唆し、下馬評が高いことから筒井も期待していたが落選、井上ひさし綱淵謙錠が受賞した[1][2]

あらすじ[編集]

18歳の火田七瀬は人の心を読めてしまう精神感応能力者(テレパス)の女性である。高校卒業後、住み込みのお手伝いとなり様々な家庭を転々とする。家族それぞれの内面を読んでしまうことで、行く先々の家庭に亀裂や事件を起こしてしまう。女性として肉体的成熟を迎えて性的な関心を向けられるようになり、20歳を迎える最終話でお手伝いをやめることを決意する。

漫画[編集]

1977年、『天才バカボン』の連載を終えた赤塚不二夫に原作付きの作品を描かせるという企画の一環で、『ハウスジャックナナちゃん』のタイトルでマンガ化された。『週刊少年マガジン』12月11日号から12月25日号にかけての連載で、「澱の呪縛」「日曜画家」「亡母渇仰」を原作とした全3話。作品には『バカボン』のバカボンのパパが御用聞き役で登場している。他に牛次郎の『建師ケン作』、遠藤周作の『おばかさん』をマンガ化していた[3]

山崎さやか(現山崎紗也夏)が『七瀬ふたたび』をコミカライズした『NANASE』第4巻巻末に「Another episode : 死を待つ家」のタイトルで『家族八景』の一部エピソードも番外編として漫画化した。

2007年から2008年にかけて、清原なつのの作画により角川書店コミックチャージ』誌上で全8話がマンガ化された。単行本はチャージコミックスから上下巻の全2巻が出た。

テレビドラマ[編集]

1979年版[編集]

1979年2月25日TBS系列の『東芝日曜劇場』にて「芝生は緑」(しばふはみどり)のタイトルで放送された。七瀬シリーズの初映像作品で、七瀬役は多岐川裕美が演じた。多岐川によると、シャワーを浴びると人の心が読めるという設定でコメディー調のドラマだったという[4]

NHK少年ドラマシリーズで放送されたシリーズ続編『七瀬ふたたび』で多岐川は七瀬役を演じており、『東芝日曜劇場』の話があった際、多岐川の七瀬を気に入った原作者の筒井が推薦したことで再び七瀬を演じることになったという[5]。少年ドラマシリーズ版『七瀬ふたたび』は『東芝日曜劇場』よりも後の放送だったが、実際には先に制作されたものである[5]

キャスト(1979年版)[編集]

スタッフ(1979年版)[編集]

1986年版[編集]

1986年1月30日に、フジテレビ系列の木曜ドラマストリート枠にて『家族八景 18歳の家政婦は見た!! すべての秘密は今暴かれる?』(かぞくはっけい 18さいのかせいふはみた すべてのひみつはいまあばかれる)のタイトルで放送され、七瀬役は堀ちえみが演じた。

キャスト(1986年版)[編集]

スタッフ(1986年版)[編集]

2012年版[編集]

家族八景
Nanase,Telepathy Girl's Ballad
ジャンル テレビドラマ
原作 筒井康隆
企画 大月俊倫、菅井敦、丸山博雄
脚本 佐藤二朗池田鉄洋前田司郎江本純子上田誠
監督 堤幸彦、白石達也、高橋洋人、藤原知之
出演者 木南晴夏 ほか
エンディング 南波志帆少女、ふたたび
製作
プロデューサー 平部隆明、神康幸、竹園元、深迫康之
制作 毎日放送(MBS)
放送
放送国・地域日本の旗 日本
放送期間2012年1月19日 - 3月22日(MBS)
2012年1月24日 - 3月27日(TBS)
放送時間毎週木曜 24:55 - 25:25(MBS)
毎週火曜 24:55 - 25:25(TBS)
放送枠毎日放送の深夜ドラマ枠
放送分30分
回数10
公式サイト
テンプレートを表示

2012年1月より、毎日放送(MBS)制作・TBS系列の深夜ドラマ枠にて『家族八景 Nanase,Telepathy Girl's Ballad』(かぞくはっけい ナナセ・テレパシー・ガールズ・バラッド)のタイトルで放送された。木南晴夏は本作が連続ドラマ初主演となる[6]

七瀬が心の声を読むシーンでは、七瀬には勤務先の家の人々の心の声がただ聞こえるだけでなく、第1話では裸になっているなど毎回何らかの奇妙な姿に変わって見え、その人の本心がより具体的に現れる演出となっている。事前番宣番組『異色の新ドラマ!! 家族八景 Nanase,Telepathy Girl's Ballad Navi〜家政婦の火田はミタSP〜』の中で、堤幸彦が自身なりの解釈をしたポイントとして語っている。心を読まれた人の内面の声は木南が担当する。七瀬の年齢はこのドラマでは20歳に設定されている。他の登場人物にも原作と異なる年齢設定がある。

第7話「知と欲」は原作にはないエピソードとして追加されている。また各エピソードの順序も原作とは異なっており、原作最終話は「亡母渇仰」であったが、ドラマ版では「芝生は緑」となっている。

2012年2月10日、16日、23日の3回にわたってニコニコ生放送で『家族八景Presents 七瀬の夜語り』と題したトーク番組が配信され、木南晴夏とゲストが出演して撮影の裏話などを語った[7]。ゲストは、佐藤二朗(2月10日)、大月俊倫(2月16日)、堤幸彦(2月23日)。

メイキングを収録した映像特典付きのブルーレイとDVDが期間限定版として2012年6月6日に発売。

キャスト(2012年版)[編集]

主人公
ゲスト

スタッフ(2012年版)[編集]

放送リスト[編集]

話数 放送局 放送日 サブタイトル 脚本 演出
第1話 MBS 2012年1月19日 無風地帯 佐藤二朗 堤幸彦
TBS 2012年1月24日
第2話 MBS 2012年1月26日 水蜜桃
TBS 2012年1月31日
第3話 MBS 2012年2月2日 澱の呪縛 池田鉄洋 白石達也
TBS 2012年2月7日
第4話 MBS 2012年2月9日 青春讃歌 江本純子 高橋洋人
TBS 2012年2月14日
第5話 MBS 2012年2月16日 紅蓮菩薩 佐藤二朗 深迫康之
TBS 2012年2月21日
第6話 MBS 2012年2月23日 日曜画家 白石達也
TBS 2012年2月28日
第7話 MBS 2012年3月1日 知と欲 前田司郎 深迫康之
TBS 2012年3月6日
第8話 MBS 2012年3月8日 亡母渇仰 藤原知之
TBS 2012年3月13日
第9話 MBS 2012年3月15日 芝生は緑〜市川家編〜 上田誠 堤幸彦
TBS 2012年3月20日
第10話 MBS 2012年3月22日 芝生は緑〜高木家編〜
TBS 2012年3月27日

ネット局[編集]

放送対象地域 放送局 放送期間 放送日時 備考
近畿広域圏 毎日放送(MBS) 2012年1月19日 - 3月22日 木曜 24時55分 - 25時25分[8] 製作局
石川県 北陸放送(MRO) 2012年1月23日 - 3月26日 月曜 24時55分 - 25時25分 4日遅れ
関東広域圏 TBSテレビ(TBS) 2012年1月24日 - 3月27日 火曜 24時55分 - 25時25分 5日遅れ
岡山県・香川県 山陽放送(RSK) 2012年1月26日 - 3月29日 木曜 24時55分 - 25時25分 7日遅れ
熊本県 熊本放送(RKK) 2012年1月30日 - 4月2日 月曜 24時55分 - 25時25分 11日遅れ
静岡県 静岡放送(SBS) 2012年2月2日 - 4月5日 木曜 25時35分 - 26時05分 14日遅れ
北海道 北海道放送(HBC) 2012年2月7日 - 4月10日 火曜 23時50分 - 24時20分 19日遅れ
鹿児島県 南日本放送(MBC) 2012年2月28日 - 5月1日 火曜 24時10分 - 24時40分 40日遅れ
高知県 テレビ高知(KUTV) 2012年3月20日 - 5月22日 火曜 23時50分 - 24時20分 61日遅れ
岩手県 IBC岩手放送(IBC) 2012年4月12日 - 6月21日 木曜 24時55分 - 25時25分 84日遅れ
長野県 信越放送(SBC) 2012年9月27日 - 11月30日 木曜 23時50分 - 24時20分 252日遅れ

実現しなかった映像化[編集]

1978年NHKからテレビドラマ化の申し入れがあったが、ホームドラマとすることに筒井側が難色を示して断ったという[9]1985年にも、角川書店角川映画原田知世主演により映画化する企画があったが、文庫本の出版権を持つ新潮社角川文庫でも出版することを認めなかったために企画が流れている[10]。これらに先立ち1977年にも番組制作会社C.A.Lからテレビドラマ化の打診があったというが、筒井は七瀬シリーズとしており本作か他作品かは不明[11]

脚注[編集]

  1. ^ 筒井康隆「自作解説 メイキング・オブ・筒井康隆全漫画」『筒井康隆漫画全集』実業之日本社、2004年、p.186
  2. ^ オール讀物』1972年10月号
  3. ^ 武居俊樹『赤塚不二夫のことを書いたのだ』文藝春秋、2005年、p.284
  4. ^ 増山久明「多岐川裕美さんインタビュー」『NHK少年ドラマシリーズのすべて』アスキー、2001年、p.126
  5. ^ a b 聞き手&構成日下三蔵「筒井康隆 自作を語る 第3回」『S-Fマガジン』2017年10月号、p.253
  6. ^ ORICON STYLE (2011年11月20日). “木南晴夏がデビュー11年目で連ドラ初主演 超能力を持つ家政婦を熱演”. 2011年11月20日閲覧。
  7. ^ 新番組:「家族八景Presents 七瀬の夜語り」/木南晴夏 ニコニコ生放送 2012年2月10日閲覧
  8. ^ 最終話は『みんなの甲子園』の放送により、9分繰り下げの25:04 - 25:34だった。
  9. ^ 筒井康隆『腹立ち半分日記』角川文庫、1982年、p.325
  10. ^ 筒井康隆『日日不穏』中央公論社、1987年、pp.51,96.
  11. ^ 筒井康隆『腹立ち半分日記』角川文庫、1982年、p.266

外部リンク[編集]

フジテレビ 木曜ドラマストリート1986年1月30日
前番組 番組名 次番組
家族八景
毎日放送 木曜深夜ドラマ
家族八景
Nanase,Telepathy Girl's Ballad
TBS 火曜 24:55 - 25:25
深夜食堂2
家族八景
Nanase,Telepathy Girl's Ballad
コドモ警察