4B5B符号化

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

4b/5b符号化 (4B5B, 4B/5B とも) は、シリアル通信に用いられる伝送路符号の1つ。ISO/IEC 9314-1が規定したもので、この名称は4ビットのデータを5ビットのデータに変換して転送することに由来する[1]

特徴[編集]

1つの通信路上でクロックとデータを同時に送信する際、受信側が正しくクロックを同期するには一定の期間内に必ず遷移が起こる必要がある。 例えばNRZなどで 0000 のような連続する4ビットは、伝送路の物理量が Low を出力し続け High への遷移を含まないため、同期に失敗する恐れがある。 この対策のために、4b/5bでは、5ビット中に最低2回の遷移が起こるようなものに変換して送る。

副作用として、4ビットをそのまま送るよりも多くのビットが必要となる。 利点として、5ビットで表現できるビット列の中にはデータとして使われないものがあるため、規格によってはこのようなビット列を制御用に定義したり、不使用なパターンを受信したらリンク上の不具合として検出したりもできる。

一般に4b/5b という名称はFDDIによる実装を指すが、他の実装として群符号化記録 (GCR) による4b/5b符号もある。 また、4b/5b符号と同様の目的のものとして、8b/10bスクランブラ(擬似乱数)を使う方法がある。

用例[編集]

4b/5b は以下の規格で採用されている。

光ファイバ上では、 NRZIを用いて4b/5b符号を伝送する。 FDDI over copper (CDDI) や 100BASE-TX では、ツイストペアケーブル上にMLT-3を用いて4b/5b符号を伝送する[2][4]

変換方式[編集]

以下に変換テーブルの代表的な実装を示す。 データを表現する16種類の符号(シンボル)のほか、制御用のシンボルがFDDIファーストイーサネットで使われている[2][6]。 このビット変換に決まった法則はなく、事前に用意したテーブルによる変換が行われる。これら5ビット符号は左から順に通信路上に送られる。

4b/5bによるデータ変換
データ 5b符号
十六進数 二進数
0 0000 11110
1 0001 01001
2 0010 10100
3 0011 10101
4 0100 01010
5 0101 01011
6 0110 01110
7 0111 01111
8 1000 10010
9 1001 10011
A 1010 10110
B 1011 10111
C 1100 11010
D 1101 11011
E 1110 11100
F 1111 11101
4b/5bの制御シンボル
シンボル名 5b符号 意味 FDDI 100BASE-X
H 00100 Halt (停止) Yes Yes
I 11111 Idle (アイドル状態) Yes Yes
J 11000 Start (開始1) Yes Yes
K 10001 Start (開始2) Yes Yes
L 00110 Start (開始3) No No
P 00000 Sleep (EEE用途) No Yes
Q Quiet (Loss of signal) Yes No
R 00111 Reset Yes Yes
S 11001 Set Yes No
T 01101 Terminate (終了) Yes Yes

制御シンボルを複数組み合わせて以下のように制御シーケンスとして使うことがある。

FDDIイーサネットで用いる制御シーケンス
シンボル名 5b 符号 用途
JK 11000 10001 開始デリミタ
TT 01101 01101 終了デリミタ(FDDI)
TR 01101 00111 終了デリミタ(Fast Ethernet)
USB PDで用いる制御シーケンス[7]
シンボル名 5b 符号 用途
JJJK 11000 11000 11000 10001 SOP (Start Of Packet)
JJLL 11000 11000 00110 00110 SOP'
JLJL 11000 00110 11000 00110 SOP"
JSSL 11000 11001 11001 00110 SOP'_Debug
JSLK 11000 11001 00110 10001 SOP"_Debug
RRRS 00111 00111 00111 11001 ハードウェアリセット
RJRL 00111 11000 00111 00110 ケーブルリセット
T 01101 終了デリミタ

出典[編集]

  1. ^ ISO/IEC 9314-1:1989, Section 6.1. PHY-to-MAC Services
  2. ^ a b c ANSI Fiber Distributed Data Interface (FDDI) Standards (1991-08)
  3. ^ AES10-2008 (r2019): AES Recommended Practice for Digital Audio Engineering - Serial Multichannel Audio Digital Interface (MADI), Audio Engineering Society, http://www.aes.org/publications/standards/search.cfm?docID=17 
  4. ^ a b IEEE 802.3u-1995: Media Access Control (MAC) Parameters, Physical Layer, Medium Attachment Units, and Repeater for 100Mb/s Operation, Type 100BASE-T (Clauses 21-30), IEEE 802.3, (1995-10-26), https://standards.ieee.org/ieee/802.3u/1079/ 
  5. ^ Universal Serial Bus Power Delivery Specification (Revision 3.2 ed.). USB Implementers Forum. (2023-10-31). https://www.usb.org/document-library/usb-power-delivery 
  6. ^ IEEE 802.3-2022, Section 24.2.2.1 Code-groups
  7. ^ Universal Serial Bus Power Delivery Specification rev.3.2 (2023-10), Section 5.6.1. Packet Framing

外部リンク[編集]