3Sロープウェイ

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オーストリア・マイヤーホーフェン英語版にある3Sロープウェイの運用と保守の様子

3Sロープウェイまたは3Sゴンドラリフトドイツ語: 3S-Bahnイギリス英語: 3S Cable Car または 3S Gondola Liftアメリカ英語: 3S Aerial Tramway)は、スイストゥーンにあるフォン・ロール傘下であったフォン・ロール・トランスポート・システムズ(英語:Von Roll transport systems、現・ドッペルマイヤー・ガラベンタ・グループ)によって開発された索道システム。ゴンドラリフトと交走式ロープウェイそれぞれの利点を併せ持つ。先頭の「3S」は、ドイツ語の「3-Seil(3本ロープの意)」から来ている。

システムの概要[編集]

3Sロープウェイの最初の建設はアルパインエクスプレスIで、1991年ザースフェーで建設された。さらに1994年にはアルパインエクスプレスII が稼働を開始したが、これ以降の建設は行われなかった。

搬器は約30人分の乗客収容スペースを持ち、フニテルで使用されるものと共通となっている[1][注 1]。2本の固定式ロープ(支索)で懸垂、残り1本の循環式ロープ(曳索)で牽引を行う。最高速度は6m/s。

システムは「3S」の名前の由来でもある3本の支曳索(ロープ)で構成され、ゴンドラは、従来の循環式索道と同様に支曳索から取り外し可能で、他のゴンドラ運行に支障なく乗降できる。この方式は三線自動循環式(TGD:Tricable Gondola Detachable)とも呼ばれ、従来の交走式ロープウェイと比べ、次のような利点がある[2]

  • 同規模の交走式ロープウェイと比較してエネルギー消費が少ない
  • 強風での安定性・快適性
  • より高い地点に建設可能
  • 高速運転 - 7m/s超の運転が可能
  • 大人数乗車可能な大型搬器
  • バリアフリー対応
  • 滑車内蔵型発電機による無線LAN空調等の電源搭載が可能

アルパインエクスプレスの開発建設には7000万スイス・フランが費やされたが、ザースフェーの2基以外はフォン・ロールによる3Sロープウェイ建設は無く、フォン・ロールも1996年にオーストリアのドッペルマイヤー・グループに買収され、以降の建設はドッペルマイヤーが行っている。 2009年、本方式としては初の都市索道としてザイルバーン・コブレンツが建設された。

後に、イタリアのライトナー・グループも3Sロープウェイの開発を行った[3]

曲線で建設出来ない索道の弱点を克服するため、ランゲン式上野式に類似した懸垂式モノレールへ台車を使用して乗り入れ、公共交通機関にする方法も構想されている。外観は同じく索道技術を応用したスカイレールにも類似しており、想定されている運航方式も、前者よりは従来の自動循環式ゴンドラリフトやこちらに近い[4][5]

キッツビュール3Sロープウェイ[編集]

オーストリアキッツビュール3Sロープウェイは、ソーカセルグラベン地域と、キルヒベルク・レスターヘーエのスキー場を接続している。2005年1月に開業、全長3,642メートル、所要時間は約9分。最も高い地点は地上から400メートル。支柱は80メートルのものが1本のみで、谷側の駅との間隔は2,507メートル。建設費は1,350万ユーロ、ゴンドラは1基あたり10万ユーロ。

施工会社はドッペルマイヤー。ケーブルの直径は54ミリ。

消費電力は400キロワット。

ゴンドラは全部で19基だが、24基まで拡張可能。各ゴンドラは24人収容でき、毎時3,200人を輸送できる。一部のゴンドラにはガラスの床が使用されており、400メートル下の地上を眺められる。

ピーク2ピーク・ゴンドラ[編集]

2008年12月、カナダブリティッシュコロンビア州ウィスラー・ブラックコームスキーリゾートは、 ウィスラーラウンドハウスロッジとランデブーを結ぶピーク2ピーク・ゴンドラ開業し、ブラッコムは3Sロープウェイを設置する北米初のスキー場となった。2つのスキー場の接続という点では、キッツビュール3Sケーブルカーと類似している。ピーク2ピーク・ゴンドラの開業により、ウィスラー・ブラッコム間の往来に下山の必要が無くなった。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 3Sロープウェイ方式のザイルバーン・コブレンツとフニテル方式の谷川岳ロープウェイは共にスイスCWA製のZETA型搬器を使用している。

出典[編集]

  1. ^ Koblenz”. CWA Constructions SA. 2020年4月4日閲覧。
  2. ^ Ropeway 3S cabins”. CWA Constructions SA/Corp. 2019年3月11日閲覧。
  3. ^ Tricable and bicable gondola lifts”. LEITNER Ropeways. 2019年3月11日閲覧。
  4. ^ Wälderbahn”. Kairos. 2021年2月1日閲覧。
  5. ^ Wälderbahn”. Gondola Project (2016年9月16日). 2021年2月1日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]