石井家住宅

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
石井家住宅

石井家住宅玄関
所在地 神奈川県相模原市緑区沢井541
位置 北緯35度37分38.1秒 東経139度8分56.2秒 / 北緯35.627250度 東経139.148944度 / 35.627250; 139.148944座標: 北緯35度37分38.1秒 東経139度8分56.2秒 / 北緯35.627250度 東経139.148944度 / 35.627250; 139.148944
類型 切妻造 鉄板葺き(元茅葺
建築年 1707年(宝永4年)
文化財 国指定重要文化財(1971年(昭和46年)12月28日)
テンプレートを表示
地図
地図

石井家住宅(いしいけじゅうたく)は、神奈川県相模原市緑区沢井にある、江戸時代の世襲名主であった石井家の住宅。1707年宝永4年)に建てられた整型六つ間取りの神奈川県最古の古民家である[1]

歴史[編集]

残されている家系図によると、石井家は後北条氏(小田原北条氏)に津久井衆三十六騎として仕え、北条氏の滅亡によって帰農した石井源左衛門を一代目として1590年から始まり[2]、旧津久井郡沢井村の名主を明治期まで代々務めてきた。現在まで残っている石井家住宅は、1937年昭和12年)の屋根改修時に梁の仕口に1707年(宝永4年)の墨書が発見されたことにより、6代目当主六郎兵衛が建設したものと判明した。石井家住宅は、1971年(昭和46年)、国指定重要文化財に指定された[3]。2007年(平成19年)11月には築300年を記念した祝賀会が石井家住宅で開かれ、普段は見られない奥座敷なども公開された[4]

建物[編集]

舌状の高台敷地に主屋などの屋敷があり、その前方(南側)に耕地と背面(北側)の山を持ち、墓があるという典型的な名主屋敷作りになっている。現在の当住宅は小屋が大幅に変更されているが、主屋は平面で桁行13間弱、梁行6間弱の規模で、左手に土間、右手床上に「ヒロマ」「チャノマ」「ナンド」「ゲンカン」「ナカノマ」「オクノマ」の6室を前後に並べた「整型六つ間取り」を持つ、神奈川県下で最も古い建築物である。「ゲンカン」「ナカノマ」「オクノマ」の3室続きの接客空間を持つ間取りは、この家の家格の高さを示すものである。当時、広間型三間口が神奈川県民家の主流の中、このような「整型六つ間取り」は珍しく、隣接する山梨県郡内地方の影響が考えられる[5]。 畳を入れるために柱がはみ出さないように土間とヒロマの柱の断面を長方形にする等の工夫が凝らされ、当時としては画期的な新様式の民家であった[6]。建築時は入母屋造茅葺であったが、現在は切妻造亜鉛引き鉄板葺になっている[5]

外周建具は板戸二枚と内側に明かり障子一枚の構成、いわゆる「三本引き」の建具構えである。実際に住んでいる主屋に三本引きの建具が継承されている実例はわずかである。三本溝を持つ敷居と鴨居は使い込まれ、すり減っている。板戸自体も相当古く、風化した框の板の部分修理なども、古い板戸を集めてそこから古材の板を補足するなどしている[3]。身分の高い人を迎える時にしか使わない式台玄関や家一軒の価値と言われた一間半もある[7]

富士山の火山灰[編集]

江戸時代に発生した宝永大噴火の際、材木の上に降り積もった灰を土蔵にしまったという言い伝えが石井家にはあったが、土蔵を探しても見つからなかった。しかし、毎日一度は家族が目にしている奥の間の長火鉢の灰が言い伝えの灰ではないかと、横浜国立大学の日本民家園の先生に鑑定してもらったところ「宝永噴火の時のものである」と証明された[3]

古文書[編集]

石井家住宅には多くの古文書が保管されており、元明治大学学長の木村礎と元相模原市立博物館館長の神崎彰利の指導のもと、明治大学の学生達が数年にわたり分類、調査した。古文書は支配・村政・年貢など12の項目に分類されている[8]。古文書は神奈川県立公文書館に寄託され「相模国津久井県沢井村 石井元三郎家文書」および「相模国津久井県沢井村 石井達也家文書」として登録されている[9]

利用案内・アクセス[編集]

利用案内[編集]

見学は、事前予約が必要。

アクセス[編集]

JR藤野駅から神奈川中央交通の系統番号「野08」和田行に乗車し、中里橋下車。

脚注[編集]

  1. ^ 藤野町教育委員会『ふじ乃町の古民家』藤野町教育委員会、1980年3月31日、19頁。 
  2. ^ 藤野の歴史的建造物めぐり協議会『藤野の歴史的建造物めぐり』相模原市街づくり支援課、2015年、12頁。 
  3. ^ a b c 杉本憲昭『北相模の歳時記 相模原市藤野地域』北丹沢山岳センター、2007年11月、54頁。ISBN 978-4-9901690-4-6 
  4. ^ 「築300年の重み体感」『神奈川新聞』、2007年11月19日。
  5. ^ a b 相模原市教育委員会生涯学習部生涯学習課文化財保護室 編『相模原の文化財 追録用バインダー』相模原市、2008年、119頁。 
  6. ^ 藤野町文化財保護委員会 編『ふじの文化財探訪』藤野町教育委員会、1997年3月、100頁。全国書誌番号:98020399 
  7. ^ 「百年名家」”. BS朝日 (2011年11月17日). 2021年11月6日閲覧。
  8. ^ 我が家の古文書”. 2021年11月6日閲覧。
  9. ^ 公文書館収蔵資料検索”. 神奈川県立公文書館. 2021年11月6日閲覧。

参考文献[編集]

  • 神奈川県都市部建築指導課 編『かながわの建築物100選 写真集』神奈川県都市部建築指導課、1991年3月。全国書誌番号:91037584 
  • 日本図書センターP&S 編『写真資料日本の文化遺産』 建造物編 上、日本図書センターP&S、2008年10月。ISBN 978-4-284-80001-3 
  • 『旅たび相模 丹沢・相模 観光ナビ』(初版)神奈川県県央地域県政総合センター、2011年3月。 

外部リンク[編集]