真夜中の鎮魂歌

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真夜中の鎮魂歌』(まよなかのレクイエム)は、栗本薫によるハードボイルド小説。

概要[編集]

左手を切断された天才ジャズ・ピアニストと若きトランペッターとの愛憎劇。

1986年11月25日にカドカワノベルズ角川書店)から書き下ろしで刊行された(ISBN 4-04-770951-4)。のち、1988年1月10日に角川文庫版(ISBN 4-04-150028-1)が刊行されている。表紙はノベルズ版、文庫版ともに福田隆義が担当している。

巻末の「あとがき」によれば、本作が執筆されたのは1975年であるという。テレビドラマ『悪魔のようなあいつ』にインスパイアされたという作品で、当時のタイトルは『真夜中の天使』であった。しかし、本書の出版が決まった際、栗本は既に同名の別作品を刊行していたため、タイトルを変更した。本作に登場する今西良は、この別作品の主人公と同名であるが、「あとがき」によれば全くの別人であるという。

あらすじ[編集]

かつて天才ジャズ・ピアニストとしてバド・パウエルにも例えられた男、風間四郎。しかし、麻薬がらみでヤクザとトラブルになり、左手を切断されてからは、暴力団幹部としてやさぐれた日々を送っていた。

ある日、風間は岸壁で暴走族との喧嘩に巻き込まれた若者と出会う。狼のような激しさを持つその青年・今西良が吹くトランペットの音に、風間は強く惹かれていった。

今西良、そして無垢な少女・高野ミキとの出会いが、風間の凍りついた心を少しずつ溶かし始めていた。しかし、そこから広がっていった波紋がやがて悲劇を引き起こし、彼らを激しい愛憎劇の中へと巻き込んでいく。

主要な登場人物[編集]

風間四郎
暴力団・立川組の幹部。麻薬がらみで左手を失った天才ジャズ・ピアニスト。
今西良
狼のような雰囲気を持った青年。ジャズ・トランペッター。
高野ミキ
立川組系の芸能プロダクション・江崎プロに所属する14歳の歌手の卵。
西村礼二
人気作詞家。プレイボーイとしての悪名が高い。
塙雪子
元モデルの女優。かつて清純派として知られたが、スキャンダルで人気が急落した。
山村国男
兵庫県警の刑事。殺人容疑で今西良を追っている。
松本修
暴走族の少年。