甲斐享

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

甲斐 享(かい とおる)は、テレビ朝日系でシリーズ化されている刑事ドラマ相棒』の主人公の一人。右京の三代目相棒。恋人と旅行に来ていた香港にて偶然右京と遭遇、そのままとある事件に共に関わり、解決後は右京に引き抜かれる形で特命係に配属された。トラブルに巻き込まれやすく、特命係へ異動した後は様々な災難に巻き込まれている。

  • 成宮寛貴[1][2](S11-1〜S13-最終話 / S15-最終話〈回想〉 / S17-1〈回想〉、2〈回想〉、19〈回想〉 / S22-10〈回想〉)
  • 橋爪龍(少年期〈S12-9〉)[注 1]
  • 上田晟人(青年期〈S13-最終話〉)
年齢 29[注 2]
階級 巡査部長[3]
出身地 東京都港区
経歴
  • 早慶大学政治経済学部経済学科
  • → 警視庁中根警察署地域課(2005年)
  • → 警視庁中根警察署刑事課強行犯係
  • → 警視庁特命係(S11-1〜S13-最終話)
  • → 懲戒免職(S13-最終話)
親族
特技 絶対音感(S11-1)[注 3]
好きなもの 炭酸飲料
苦手なもの 幽霊

経歴[編集]

2005年に大学を卒業してノンキャリアとして警視庁に入庁、交番勤務を経て署長推薦の選抜試験に合格し中根警察署刑事課捜査一係に配属された。念願の刑事になった直後の香港旅行中、日本大使館での拳銃暴発事故に遭遇し、偶然知り合った右京と共に事件解決に奔走する。その際右京に警察官としての価値を認められ、彼直々の要望を受けて特命係へと引き抜かれた(S11-1)。

ダークナイト事件[編集]

特命係に在籍中、親友の妹を殺した容疑者が心神喪失で不起訴処分になった際、妹の仇を討たんとする親友の犯行を止めるべく、自ら容疑者を襲撃して死なない程度の傷を負わせる。

それをネット上で賞賛された事で以降警察の追及を逃れた犯罪者たちに制裁を下す暴行犯「ダークナイト」として2年に渡り犯行を重ねるようになる[4]

最終的には右京に真実を突き止められる[5]。懲戒免職となった。(S13-最終話)

動機に「世間からの賞賛が気持ちよかった」とは言うが自身でも判然としていない。また峯秋は右京への対抗心によるものではないかと推察している。

現在も服役中で、息子である結平への影響を懸念し悦子との婚姻届提出を拒み続けている(S22-10)。

性格[編集]

御曹司という出自とは裏腹に、荒っぽく血の気の多い性格。峯秋との親子仲は冷えきっている一方、侮辱する発言には激怒するなど複雑な感情を抱いている様子。子供の頃に見ていた刑事ドラマの影響で刑事課への憧れは強く、特に捜査一課配属を目指している事から、他の歴代相棒とは異なり捜査一課の面々を素直に慕っている(S11-2など)。特に芹沢には可愛がられており、情報提供のやり取りを頻繁に行っている。伊丹らとは特段仲が良いわけでも悪いわけでもなく、概ね対等に接している。

一人称は「僕」または「俺」。二人称は、「あなた」だが性格が荒れると「あんた」に変わる。父親である甲斐峯秋のことは基本的に「親父」と呼んでいる。右京については、後述参考。

捜査・仕事振り[編集]

やや感情的な言動が目立ち[5]、自分を挑発してきたり、反省の色が見られない人物に激昂して掴みかかり、右京などに止められることもある。

さらには迂闊なミスから取り返しのつかない事態を引き起こすなど、大きな失敗をする事もあった(S11-3、最終話)。

しかし、自分の失敗にしっかりと向き合い、忘れずにいようとする意識も持っており、良くも悪くも素直な性格である。

また、歴代の特命係員の中で唯一被弾したことがある(S12-最終話)。

能力[編集]

若年ながら細かな事にも気付く優れた観察力を持ち、勘も非常に鋭い。不測の事態に陥った場合を除き(S12-10)、車の運転は普段は右京や悦子に任せている。また幼少期に親の命令で強制的にピアノを習っていたことで、絶対音感になり、耳がいい。

右京との関係[編集]

右京のことは「杉下さん」と呼ぶ[注 4]。右京からはあだ名で「カイトくん」と呼ばれているが、公的な場では「甲斐くん」と呼ばれる事もある(S11-4、S12-10)。香港で右京と邂逅して当初は、その変人ぶりに辟易して悪態をついたり特命係配属への不満を露骨に示していた他、個人的感情を排し冷徹に事件の真相を追求する右京に対し反発する事もあった。それでも数々の事件に関わって右京の能力と正義感を認めるようになり「最強の味方」と吐露する程の信頼を寄せるまでになった(S12-10)。右京もそんな享が秘める正義感を以て「警察官にとって一番必要なものを持っている」と改めて評価し、互いに信頼し合える相棒関係を築き上げていった。感情的な言動が鳴りを潜めてからは生来の刑事としての資質を遺憾なく発揮し右京の右腕として活躍していた。

現実世界での扱い[編集]

右京が一度若い者と組むのが良いということで、30歳(撮影開始当時)だった成宮寛貴が起用された[6]

水谷は成宮演じる享からは色気を感じていて、男同士の何かを感じさせるものがありつつも、若さゆえの葛藤や揺れ動く様を見せる姿が自分の若いころに通じる不安定さがあったとも話している[7]

反響・評価[編集]

ねとろぼ調査隊が2024年に行った「相棒」の登場人物人気ランキングでは第7位であった[8]。ダークナイト事件による降板は右京の演者である水谷豊にとっても視聴者にひんしゅくを買ったと認めており人は極限までいくことがあるという話を、ものすごく納得して演じていたという[9]。また初登場時から右京はあまりそっけない態度は取らず、それまでの相棒たちにはなかった優しい対応も見せ最初からあだ名で呼ぶなどが印象的である。一見するとヤンキーのようだが刑事としての強い正義感と高い能力を持ち右京にはなかなかできない所をカバーしていた。演者の成宮寛貴が俳優業を引退したこともあり、享がその後登場したのは回想シーンのみだがその度にSNSでは大きな反響を呼んだ。享は、事件に巻き込まれやすい体質だったが、それがしっかりと息子・桔平にも受け継がれているとも評価されている。[10]

親族[編集]

甲斐峯秋(かい みねあき)[編集]

石坂浩二[11](S11-1〜)
経歴
階級 警視監

享の父親。警察官僚で階級は警視監。かつての小野田のポジションを受け継いだ作中の狂言回しの一人。 表向きは穏健な好々爺らしく振る舞うが、自身や組織の利益のためには手段を択ばない狡猾な一面を持つ。一方で警察官僚としての矜持は持ち、特に「テロリストとは交渉しない」という基本理念への固持から、外務省出向時代に邦人の人質を結果的に見殺しにしてしまった過去があるほか、自身が誘拐された際にも「交渉による自身の解放は望まない」旨を発言した(S12-1)。 毀誉褒貶の多さは承知の上で右京を高く買い友好的に接しているが、上述のような非合法的な取引に手を染める立場から特命係と対立することも多い。更に享が「ダークナイト」事件の犯人として逮捕された際には、右京の強烈な正義感にあてられたという考えから、右京を「劇薬」だと危険視している(S13-最終話)。しかし、それでも、自身の思惑のために右京を利用したり(劇場版III)、時には右京の要望に同調して手助けをする(劇場版IV)など、状況に応じて右京ら特命係を動かしている。 享とは仲が悪く、享への称賛も素直に受け入れられずにおり、彼が警察官になったことにも否定的で、右京から享のスカウトの要望があった際には以前の部下たちの様に自分で警察を辞めていくだろうと考え、快諾している(S11-1)。享が全国指名手配された際には警察官としての立場から「警察庁次長の息子という理由で、現場で適切な行動が妨げられてはならない」と幹部たちに指示し、射殺命令すら躊躇せず出していた(S12-10)。一方で、享が警察に就職するまでの経緯を右京から聞いた際には驚きと共に笑顔を見せていたり(S12-5)、享が逮捕された時には処分が下さ2れるタイミングを遅らせるために逮捕の直前に大河内を通じて監察官保留とし、逮捕後も自身の立場を利用して享に旅立つ右京を見送らせるように便宜を図る(S13-最終話)など、ある程度は父親としての情も持っていた。また、享と悦子の間に生まれた孫の桔平のことは可愛がっている。 享の逮捕後には責任を取る形で警察庁長官官房付への降格処分を受けるが、参事官である中園曰く降格は一時的な「緊急避難的措置」であり、停職中だった右京を簡単に復職させたり(S14-1)、亘を特命係に異動させるよう根回しをしたり(S15-1)、伊丹の懇願を受けて薫を警視庁の嘱託職員枠で再任用する手筈を整える(S21-2)など、その権力が衰えている様子は全く見られない。 のちに副総監である衣笠から打診を受けた「特命係の指揮統括役」への就任を熟慮の末承諾し、特命係を配下に置く立場となった(S16-2)。 絵に造詣があるほか、享の不祥事により閑職に回されてからは茶道を嗜むようになり、執務室に茶道具を置き、訪問者に薄茶を点てて振る舞っている。

享の母[編集]

劇中では直接は登場せず、名前も不明ながら何度かその存在に触れられている。初めて言及されたS11-9では海外で暮らしており、そのごのS11-18では誕生日を迎えた峯秋のためにお菓子(スイーツ)の詰め合わせを贈ったが、この件に対して峯秋は右京に対し「私は誕生日のプレゼントにわざわざ欲しいと思うほど甘い物が好きというのではないのに、それをすっかり忘れている」と愚痴をこぼしている。

甲斐秋徳(かい あきのり)[編集]

演 - 新納慎也(S22-10)[12]

享の兄で峯秋の長男[12]。享が特命係にいたころから何度か言及はあったが、S22-10にて直接的な登場を果たした[12]。 初めて直接登場したS22-10時点では財務省の官僚。 峯秋に反発していた享とは異なり、親子仲も悪くなく、享と悦子の息子・結平の父親代わりを務めている[12]。峯秋からは享と比較して「頭の出来も素行も良い立派な息子」とのことであり彼と同じ東京大学法学部出身者であることが示唆されている。過去には結婚するも離婚に至ったバツイチで、別の女性と再婚して新しい家庭を築くことへは消極的。

現実世界での扱い
演者の新納は『テレ朝POST』へ寄せたコメントの中で、享に兄がおりしかも自分がそれを演じることに驚いたと話しており、壊していけない作品に突入するような強いプレッシャーがある中、作中の世界観になじみながらもスパイスとなるようバランスを保ったことを明かしている[12]。一方で、彼は秋徳が自分の置かれた特殊な環境に居心地の良さを感じている点について理解を示している[12]

笛吹悦子(うすい えつこ)[編集]

演 - 真飛聖[11](S11-1〜S13-最終話 / S17-19〈回想〉/ S22-10)

享の恋人で、日本国際航空(NIA)のCAとして働いている。彼より年上で、気風のいい姉御肌然とした性格の女性。 渋谷での合コンで彼に家まで送ってもらったことが切っ掛けで交際を始めた(S11-10)。一方で甲斐親子の確執については頭を痛めており、峯秋との会食をセッティングしたり、峯秋との和解を結婚の条件にするなど、2人の関係を取り持とうと苦心している(S13-1)。その後は妊娠と同時に、急性骨髄性白血病の発症も判明し入院(S13-15、16)。後に寛解し、息子・結平を出産。現在も航空会社の客室乗務員として働いており、享の逮捕後も右京との交流は続いている(S22-10)。 結平の担任教師・姉小路仁に言い寄られており、それを逆恨みする栗原志津子の罠に嵌められ、東国にてスパイ容疑の濡れ衣で連行されそうになるが、内調まで巻き込んでの特命係の決死の作戦で辛うじて東国から脱出した(S22-10)[12]。 映画『或る夜の出来事』が好きで、記憶喪失になった享に劇中のストーリーを彼との出逢いの経緯として語ったことがある(S11-9、10)。ボールルームダンス(社交ダンス)を趣味としている(S12-4)。

現実世界での扱い
週刊誌『女性自身』の編集部による2012年10月の記事では、「演者の真飛が享の遊び相手役かと思いきや、同棲相手だと知り、年上すぎるのでは?」といった意見や、彼女が宝塚版『相棒』で右京を演じたことがきっかけで起用されたのではないかといった声が挙がった[13]
演者の真飛は『テレ朝POST』へ寄せたコメントの中で、本作降板からS22-10までの9年間、悦子の動向が気になっており、ファンからも問い合わせを受けたことを明かしている[12]

笛吹結平[編集]

演 - 森優理斗[12](S22-10)

享と悦子の間に誕生した息子。登場時には小学生。実父にあたる享が婚姻届の提出を拒んでいるため、母の苗字である「笛吹」の姓を名乗っている。シャーロキアン。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 橋爪はS14-10にも柄谷時生の幼少期役として出演している。
  2. ^ 1983年7月7日生まれ
  3. ^ 幼少期にピアノを習った経験から
  4. ^ 一度だけ「右京さん」と発言した事がある(S12-13)が、薫や冠城と違って右京本人にそう呼びかけた訳ではない。

出典[編集]

  1. ^ “10月スタート『相棒11』、成宮寛貴の役名は「甲斐享」”. ORICON NEWS. (2012年8月13日). https://www.oricon.co.jp/news/2015544/full/ 2023年2月23日閲覧。 
  2. ^ “成宮寛貴、3代目『相棒』3年で卒業「最後まで悔いのないように」”. ORICON NEWS. (2015年2月4日). https://www.oricon.co.jp/news/2048132/full/ 2023年2月23日閲覧。 
  3. ^ キャスト|相棒 season13 - テレビ朝日(アーカイブ)
  4. ^ ドラマ「相棒」反町隆史の卒業で注目集まる“元相棒”成宮寛貴の存在”. ZAKZAK (2021年11月26日). 2023年2月23日閲覧。
  5. ^ a b “『相棒』歴代の相方キャストと女将を紹介、最長出演者は誰?”. マイナビニュース. (2022年11月21日). https://news.mynavi.jp/article/20211228-2239827/ 2023年2月23日閲覧。 
  6. ^ 水谷豊が明かす“寺脇降板”秘話 「いつまでも居ちゃだめだ」とアドバイスした理由とは(5ページ目)”. デイリー新潮 (2022年8月20日). 2024年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月24日閲覧。
  7. ^ 水谷豊が語る相棒たちの素顔。成宮寛貴に感じた“色気”と反町隆史が見せた“涙”「若い時とダブるところがあったんです」”. テレ朝POST (2023年3月14日). 2024年3月11日閲覧。
  8. ^ 「相棒」の登場人物人気ランキング! 第2位は「神戸尊」、1位は? | ドラマ ねとらぼ調査隊”. ねとらぼ調査隊 (2024年3月13日). 2024年3月22日閲覧。
  9. ^ 水谷豊が明かす“寺脇降板”秘話 「いつまでも居ちゃだめだ」とアドバイスした理由とは(5ページ目)”. デイリー新潮 (2022年8月20日). 2024年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月24日閲覧。
  10. ^ 『相棒』“3代目相棒”甲斐享、今なお人気の理由は? 元日スペシャルに関係者が集結”. デイリー新潮 (2024年1月1日). 2024年3月26日閲覧。
  11. ^ a b “『相棒11』初回SPで初の香港ロケ! 成宮の恋人役で元宝塚・真飛聖が登場”. 芸能ニュース (ORICON STYLE). (2012年8月31日). https://www.oricon.co.jp/news/2016354/full/ 2016年2月9日閲覧。 
  12. ^ a b c d e f g h i 『相棒』元日SPに“3代目相棒”甲斐享のパートナー・笛吹悦子(真飛聖)が9年ぶり登場!”. テレ朝POST (2023年12月21日). 2024年3月10日閲覧。
  13. ^ 『相棒』成宮の彼女役・真飛聖に「姉さん女房すぎ…」の声”. 女性自身 (2012年10月31日). 2024年3月14日閲覧。