田舎医者

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
田舎医者
Ein Landarzt
初版本の表紙
初版本の表紙
作者 フランツ・カフカ
ドイツの旗 ドイツ帝国
言語 ドイツ語
ジャンル 短編小説
発表形態 雑誌掲載
初出情報
初出 『新文学』1918年
刊本情報
出版元 クルト・ヴォルフ社
出版年月日 1920年
日本語訳
訳者 原田義人城山良彦
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
テンプレートを表示

田舎医者』(いなかいしゃ、Ein Landarzt)は、フランツ・カフカの短編小説。1917年執筆。1918年に年鑑誌『新文学』に掲載され、1920年に短編集『田舎医者』に表題作として収録された。「村医者」とも訳される。

作者フランツ・カフカには、田舎町で医者をしていたジークフリート・レーヴィという叔父がおり、彼が語り手のモデルになっている。

あらすじ[編集]

語り手の田舎医者は、10マイルも離れた場所で重病人の知らせを受けて、困り果てている。外は吹雪が吹き荒れているというのに、馬車を引き立てていく馬がいない。医者が腹立ち紛れに豚小屋を蹴飛ばすと、そこから馬丁とともに二頭の馬が現れる。そこで、医者は、馬丁に命じて目的地へ向かおうとする。しかし、医者の女中ローザに目をつけている馬丁は、留守番をすると言い張る。馬丁が手を打ち鳴らすと、馬が馬車を引いて駆け、医者はあっという間に目的地につく。患者の家では家族が出迎え、ベッドに横たわっている少年のもとに医者を案内する。少年は、見たところいたって健康である。医者は、それよりも馬丁とともに家に置いてきてしまったローザのことを気にかけている。しかし、医者が患者に近づいてみると、患者のわき腹にぱっくりと傷口が開けていることに気が付く。少年は、医者に泣きすがる。そして、家族と次々に入ってきた客たちは、医者を脱がして裸にし、少年の治療を迫る。医者は、少年を慰めて安心させると、衣服をかき集めて家から脱出する。しかし、行きの早さとは裏腹に、馬車は遅々として進まない。聞こえてくる子供たちの歌を聞きながら、医者はもう取り返しが付かないのだと考える。

翻案[編集]

2007年に山村浩二によるアニメーション作品『カフカ 田舎医者』が公開されている。ローザ役の声優には芥川賞作家の金原ひとみが起用された。

日本語訳[編集]

各・収録された作品集

  • 『カフカ全集 Ⅲ』新潮社、1953年
  • 川村二郎・円子修平訳『カフカ全集 1 変身、流刑地にて』新潮社、1980年
  • 池内紀訳 『カフカ短編集』岩波文庫、1987年
  • 長谷川四郎訳 『カフカ傑作短篇集』福武文庫、1988年
  • 池内紀訳 『カフカ小説全集 変身ほか』白水社、2001年
  • 池内紀訳 『カフカ・コレクション 断食芸人』白水Uブックス、2006年
  • 平野嘉彦編訳 『カフカ・セレクションⅠ 時空/認知』ちくま文庫、2008年
  • 吉田仙太郎訳 『カフカ自撰小品集』みすず書房、2010年
  • 丘沢静也訳 『田舎医者/断食芸人/流刑地で』光文社古典新訳文庫、2022年

外部リンク[編集]