性 (生物学)

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(せい、: Sex)とは、有性生殖を行う生物において、次世代生産時に両親とは遺伝的に異なるタイプの個体を生じるように保証する機構のことである。

転じてその過程において生じる性交への欲求衝動、およびそれらにまつわる活動のことも指すことがある。

区分

有性の生物は二つ以上の性からなる。性には二つの区分の方法がある。

一つは生産する配偶子の大きさによる区分であり、通常認識される性区分(性別)はこちらである。小型の配偶子(配偶体)(精子花粉など)を生産する個体は、大型の配偶子(配偶体)()を生産する個体は、双方の配偶子を生産する個体雌雄同体と呼ばれる。

人間の雌雄は男性女性と呼ばれる。

植物の中には、成長や周囲の状態によって、精子を生産していた個体が、卵子を生産するようになったり、その逆の変化を示したりする種類がいる。このような「性転換」は、自分の子孫を可能な限り多量に生産するという、個体の繁殖行為との関係で多く研究されている。

もう一つは、配偶できるかどうかの組み合わせ(配偶型)である。これは同型の配偶子を生産したり、一つの個体が大小双方の配偶子を生産する生物に認められ、自らのクローン個体などの同じもしくは近い配偶型とは交配できないものである。この配偶型は2つとは限らず多いものでは数十の配偶型が認められる。これは性に含める場合も含めない場合もあるが、2個体の遺伝子を組み替えて新しい遺伝子型を持つ個体を作るという、性の生物学的意義を考えた場合は、より重要もしくは本質的なものであるとされている。哺乳類のように雄個体同士、雌個体同士が物理的に交配できない生物で認められた例はない(ホルモン操作などで、性転換すれば本来雄同士・雌同士の個体でも交配できる。その結果、自然には存在しない超雄超雌などの個体が生まれることがある)。

また「単性」は、性別のある生物の中で一方の性を指す時に使う言葉であり、特に生殖時に雌のみあるいは雄のみが生まれる現象をいう。

もともと、最も古いタイプの生物である単細胞生物無性生殖を行い、分裂のみで数を増やしていた。これには指数関数的に個体数を増加させることができるといった長所があったが[1]、新個体は旧個体のクローンに過ぎず、基本的に全く同じ遺伝子を持っていて、遺伝子の変化は突然変異に頼らざるを得ず、ウイルスなどの寄生者に対する抵抗力が非常に弱いという欠点があった。これに対し、個体間で遺伝子を交換し新個体を作ると、こうした欠点をかなりの程度補うことができる。このため性が生まれ、個体数の増加速度の減少などのコストやリスクがあるにもかかわらず有性生殖を行うようになったと考えられている[2]

脚注

  1. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p85-86 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行
  2. ^ 「生命の意味 進化生態から見た教養の生物学」p96-98 桑村哲生 裳華房 2008年3月20日第8版発行

関連項目

外部リンク