宇宙皇子 妖夢編

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
宇宙皇子 > 宇宙皇子 妖夢編

宇宙皇子 妖夢編』(うつのみこ ようむへん)は、藤川桂介の歴史伝奇ファンタジー『宇宙皇子』シリーズの第3部。挿絵はいのまたむつみ。実際に日本各地に伝の残る修験者・役行者こと役小角の弟子として、架空の人物「宇宙皇子」が金剛山で葛藤しながら成長していく姿を描く。物語の舞台は現実の西暦660年代以降の飛鳥地方をモチーフにしているが、作中では年代を星暦として表現している。

ストーリー[編集]

天上界の旅を終え、地上界へと帰還した宇宙皇子と仲間達。かつて琉球への旅で永遠の生命を授かった宇宙皇子と各務、元神籍にあったキジムナーに対し、只の人として限られた生を選んだ仲間たちは地上界への帰還と同時に齢八十を越す老人へと姿を変えた。

しかし小角はそんな彼らをも現役の修験者として扱い、既に現世を去り、鬼籍に入った以前の指導者達の後任として宇宙皇子を智童子・軍鬼道士に、苦須里を禅童子、釣を法鬼道士、各務を遊鬼道士・祭鬼道士、多加良を庫裡鬼道士、そしてキジムナーに客鬼道士としての使命を与えた。

宇宙皇子と各務には神仏へ近づくための修行と試練を、キジムナーへは神籍へ復帰するための修行を、他の遊鬼士らには道士として、限られた生命の中で己を尚高めよという、小角からの試練に対しての葛藤が始まる。

登場人物[編集]

宇宙皇子(小子辺)
天上界からの帰還を果たし、生まれ育った飛鳥の地、金剛山へ戻る。休む暇もなく小角より智童子・軍鬼道士として後進を指導せよとの使命を受ける。それはいよいよ鬼達の指導者としての立場に立ち、金剛山を率いていけという小角からの試練でもあった。
かつての遊鬼の仲間達の補佐を得ながら、指導者として葛藤し始めていく。
各務(かがみ)
小角の弟子の一人。かつて琉球で宇宙皇子と共に永遠の火をくぐり、永遠の生命を得たために地上界へ帰還した際も若々しいままの姿で戻る。小角から祭鬼道士の使命を与えられ、更に自らの希望で遊鬼を率いる遊鬼道士の使命を受ける。
宇宙皇子に少しでも近づくために更に葛藤と修行を続けていく。
役小角(えんのおづぬ)
金剛山で修行する修験者。宇宙皇子の師。神変大菩薩。妖夢編になると地上界へは殆ど姿を見せず、金剛山を宇宙皇子に託し、より大きな視点から小宇宙を見守る。
苦須里(くすり)
小角の弟子の一人。尾張の出身。地上界へ帰還した際、天上界を旅していた年月全てを取り戻し、齢八十を越える老体になる。しかし小角より禅童子としての使命を与えられ、宇宙皇子の不在には金剛山を纏め、残された生命で更に自己を高める修行を続ける。
妖夢編中盤、朝廷より送られた金剛山討伐の兵士達が小角の道場までも汚そうとした際に田加良・釣と共に老体をおして討ってで、戦いで命を落とす。その最期は長年、共に修行の道を歩んできた皇子、各務、釣らに大きな衝撃を与えた。
田加良(たから)
小角の弟子の一人。難波の出身。地上界へ帰還した際、天上界を旅していた年月全てを取り戻し、齢八十を越える老体になる。思いかけずも小角から庫裡鬼道士の使命を与えられ戸惑うが、それは更に修行せよという小角からの試練であった。
妖夢編中盤、朝廷より送られた金剛山討伐の兵士達が小角の道場までも汚そうとした際に苦須理・釣と共に老体をおして討ってで、命を落とす。その最期は長年、共に修行の道を歩んできた皇子、各務、釣らに大きな衝撃を与えた。亡くなった後、試練に直面して苦悩する皇子、各務の前に苦須理と共に霊体として現れ、若年の頃と同じように目前の試練について語り合うというシーンがある。
釣(つり)
小角の弟子の一人。美濃の出身。地上界へ帰還した際、天上界を旅していた年月全てを取り戻し、齢八十を越える老体になる。思いかけずも小角から法鬼道士の使命を与えられ戸惑うが、それは更に修行せよという小角からの試練であった。
金剛山へ送られた朝廷の討伐軍に対し、苦須理・田加良と共に立ち向かい、彼だけが生き残ってしまう。その直後のシーンでは自分だけが生き残った事を強く嘆いていた。その事件以降は「鬼」としての全ての任を解かれ、戦いで傷ついた全ての修験者、全ての兵士の魂を慰めるために金剛山を祈りながら巡る行に入る。最期は誰にも知られることなくひっそりと落命し、皇子・各務に涙を落とさせた。
キジムナー
小角の計らいで皇子が各務と共に琉球へ旅した際に出会った妖魔。元々は神籍にあったが、堕落し皇子と出会った頃には魔性にまで身を落としている。
再び自由気ままに生きるつもりであったが、小角によって客鬼道士としての使命を与えられ、多加良・釣の二人以上に大きく戸惑う。しかし宇宙皇子に諭され、金剛山で共に修行をする事になる。
見かけが童子であることや、それにそぐわぬ尊大な態度から、遊鬼になったばかりの少年達には面白がられ、歳を経た遊鬼士らからは失笑を買う場面も見せるが、各務と共に少年期より皇子の傍で様々な皇子の葛藤を見続け、また自身も様々な試練に対して葛藤してきた事から、皇子に頼りにされる一面もある。
この頃になると妖力・魔力は衰退し、少しずつ神力を取り戻しつつある。

サブタイトル[編集]

  1. 第一巻 時よ、ゆるやかに
  2. 第二巻 忍ぶ草を結んで
  3. 第三巻 魅せられて、一人
  4. 第四巻 月の兵士日の兵士
  5. 第五巻 魔王の浮橋
  6. 第六巻 皇子よ、怒りの一撃を
  7. 第七巻 金剛山が空になった日
  8. 第八巻 祇園精舎の鐘が聞える
  9. 第九巻 未生の月
  10. 第十巻 かぎりなく狭き道を