九条の大罪

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九条の大罪
ジャンル 青年漫画
漫画
作者 真鍋昌平
出版社 小学館
掲載誌 ビッグコミックスピリッツ
レーベル ビッグコミックス
発表号 2020年46号 -
発表期間 2020年10月12日 -
巻数 既刊11巻(2024年2月29日現在)
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九条の大罪』(くじょうのたいざい)は、真鍋昌平による日本漫画作品。『ビッグコミックスピリッツ』(小学館)にて、2020年46号から連載されている[1]。2024年3月の時点で累計部数は300万部を突破している[2]

半グレヤクザや前科持ちといった顧客からの厄介な案件を主に扱う弁護士が、法律と道徳を分けて考え、依頼人の利益のために最良の解決策を追及していくストーリーとなっている。執筆にあたり、作者は『闇金ウシジマくん』の連載中から闇金業者の視点で物語を描くことに限界を感じており、取材中によく挙げられていた弁護士の話を聞いてみたくなって約50人から聞いた結果、前述の弁護士の話で心を動かされて「人間が抱える葛藤、心の揺れ動きを描きたかった」と描き始めたうえ、足かけ5年にわたって司法に関する取材を重ねている[1][3]

沿革[編集]

2020年10月、『ビッグコミックスピリッツ』同年46号より連載開始[1]。飲酒運転で親子をひき逃げした半グレが執行猶予を勝ち取り、父を亡くして悲しむ遺族は金銭的にも大損をするという第1話は、SNSでも大きな反響を呼んだ[4]

2021年2月に単行本第1巻が発売された際には、「無罪請負人」と呼ばれる弁護士の弘中惇一郎からコメントが寄せられている[5]。同年5月の第2巻の発売時には映画監督の西川美和はあちゅう、テレビディレクターの上出遼平、1巻に引き続き弁護士の弘中惇一郎から推薦コメントが寄せられている[6]

同年12月、本作の第4巻に登場する「ぴえん系女子」なキャラクターのしずくが、佐々木チワワの書籍『『ぴえん』という病 SNS世代の消費と承認』の表紙に採用となる[7]

2022年1月、「全国書店員が選んだおすすめコミック 2022」にて、第10位を獲得[8]

あらすじ[編集]

弁護士・九条間人が請け負う顧客は、半グレ、ヤクザ、前科持ちなど、訳ありな人々。ネットでは悪徳弁護士と罵られ、離婚した妻からの養育費に追われても、九条はイソ弁の烏丸と共に、依頼人の擁護に務める。

登場人物[編集]

登場人物の名字は京都の地名由来が多い。

主要人物[編集]

九条 間人(くじょう たいざ)
依頼人を善悪や貴賤で選別しない弁護士。月1万円で借りた知人のビルの部屋の生活環境が悪いため、ビルの屋上でテント生活をしている。バツイチで元妻に全財産を分与し、子供の養育費を払っているため、お金に余裕はない模様。インターネット上では悪徳弁護士と罵られているが、本人は気にしていない。本名は鞍馬で、九条は別れた妻の姓。
烏丸 真司(からすま しんじ)
九条の事務所で働いている居候弁護士。東大法学部を首席で卒業後、大手法律事務所に所属していた。
山城 祐蔵(やましろ ゆうぞう)
九条が独立する前に所属していた事務所の「ボス弁」だった弁護士。九条にとっては恩師のような存在。悪徳介護施設「輝興儀(きこうぎ)」の顧問弁護士として、遺言詐欺の案件で九条と法廷で争う。
壬生 憲剛(みぶ けんご)
「表向き」は自動車整備工場経営。裏の顔は街の不良少年たちから怖れられつつも慕われる半グレのリーダーで、サパークラブやラウンジ、ガールズバー等飲み屋を何件も経営する会長。後輩たちが起こす事件の法的処理を九条に依頼するクライアントであり、九条の動きの早さを買っている。特に第3-8話の案件の処理で「天才」と称し一目置く。
九条とは「先生」「壬生くん」と呼び合う関係。少年時代から可愛がったパグ犬「おもち」の死因に怨恨と自責の深い闇があり、「おもち」の刺青を背中に刻む。冷静で礼儀もわきまえるが失態への制裁は容赦がない。複雑なシナリオも巡らせる。
鞍馬 蔵人(くらま くらと)
東京地検検事。九条の兄。検事の中でも出世コースのエリート。しかし反社と付き合いのある弟の間人は出世コースにとって「弁慶の泣き所」とのこと。勘当した弟には手厳しいが、あった際九条はのらりくらりとかわしている。九条曰く父そっくり。

片足の値段(1話)[編集]

森田(もりた)
依頼人。壬生の後輩。飲酒運転で親子をはねてしまい、壬生に相談しに行ったところで弁護士に九条を紹介される。

弱者の一分(2話)[編集]

曽我部聡太(そがべ そうた)
麻薬の運び屋。
金本(かねもと)
麻薬の販売人。

家族の距離(3話)[編集]

家守 華恵(いえもり はなえ)
依頼人。コンサル会社社長。
菅原 遼馬(すがわら りょうま)
介護施設「輝幸」代表。入れ墨を入れている半グレで、実際は詐欺と強盗が本業で、介護施設は隠れ蓑。
久我(くが)
菅原の兄弟分。

自殺の理由(4話)[編集]

植田 篤彦(うえだ あつひこ)
家で自殺していたある人物。
有馬(ありま)
烏丸の同期。

強者の道理(5話)[編集]

京極 清志(きょうごく きよし)
伏見組の若頭。壬生の上司。
佐久間(さくま)
ひったくりをしようとした際暴行した京極を訴えたが脅され 、あっさり訴えを取り下げた。

消費の産物(6話)[編集]

笠置 雫(かさぎ しずく)
依頼人。
中谷 修斗(なかたに しゅうと)
被害者。ホスト。雫に刺殺された。
亀岡麗子(かめおか れいこ)
女性弁護士。九条とは同期で同じ。人権派で女性の性産業などを街頭で訴えている。
小山(こやま)
京極のケツモチのAV会社、「トゥールビヨン」の代表取締役。
粟生(あわお)
AV会社「トゥールビヨン」の監督。
外畠(とのはた)
雫の彼氏。

事件の真相(7話)[編集]

嵐山信子(あらしやま のぶこ)
嵐山の娘。10年前に犬飼達に金品を奪われ河川敷で強姦され、意識を取り戻した時顔を見られたために絞殺された。
犬飼勇人(いぬかい ゆうと)
嵐山信子殺しの主犯。壬生の後輩。10年以上の不定期刑を受け服役中。
又林(またばやし)
嵐山の部下で深見の先輩。
深見(ふかみ)
嵐山の部下で新人。
笠原美穂(かさはら みほ)
信子の元友人。1児の妻。

愚者の偶像(8話)[編集]

門脇 数馬(かどわき かずた)
俳優志望。
音羽 千歌(おとわ ちか)
歌手志望。
山梨 新一(やまなし しんいち)
整形外科医。
モモヨ
AV女優。
門脇 数恵(かどわき かずえ)
数馬の妹。重い病気持ちで手術には二億かかるとのこと。

至高の検事(9話)[編集]

宇治 信直(うじ のぶなお)
検事部長。鞍馬の上司。
小野
鞍馬の同僚だったが、ヤメ検で弁護士になった。
京極 猛(きょうごく たけし)
京極の息子。
市田 朝子(いちだ あさこ)
毎朝新聞の編集部。元は週刊誌の記者。
雁金 正美(かりがね まさみ)
伏見組の若頭補佐。
艮 克茂(うしとら かつしげ)
破門された元ヤクザ。
鞍馬 行定(くらま ゆきさだ)
九条と鞍馬の父親。故人。検事。
烏丸の父親が殺害された事件の検事を努めた。
九条 莉奈(くじょう りな)
九条の娘。
宇治(うじ)
伏見組。雁金曰く金と頭脳と暴力が三拍子そろっているとの評価で、毎月金も収めているため評価は高い。

生命の値段(10話)[編集]

相楽 弘毅(さがら ひろき)
ヤメ検の弁護士。
朝倉 優子(あさくら ゆうこ)
弁護士。相楽の部下。
白栖 雅之(しらす まさゆき)
白栖総合病院の医院長。
白栖 正孝(しらす まさたか)
雅之の息子。
平川 幸孝(ひらかわ ゆきたか)
雅之の次男。婿に入ったため名字が違う。
白栖 早苗(しらす さなえ)
正孝の妻。
平川 恵理子(ひらかわ えりこ)
幸孝の妻。
山根(やまね)
正孝の小学生の同級生。医者。
射場(しゃば)
白栖総合病院の事務局長。
有馬 剛(ありま たけし)
事件屋。

書誌情報[編集]

  • 真鍋昌平『九条の大罪』 小学館〈ビッグコミックス〉、既刊11巻(2024年2月29日現在)
    1. 2021年2月26日発売[9][5]ISBN 978-4-09-860848-5
    2. 2021年5月28日発売[10][6]ISBN 978-4-09-861044-0
    3. 2021年8月30日発売[11]ISBN 978-4-09-861125-6
    4. 2021年11月30日発売[12]ISBN 978-4-09-861184-3
    5. 2022年3月30日発売[13]ISBN 978-4-09-861262-8
    6. 2022年7月29日発売[14]ISBN 978-4-09-861383-0
    7. 2022年11月30日発売[15]ISBN 978-4-09-861471-4
    8. 2023年3月30日発売[16]ISBN 978-4-09-861603-9
    9. 2023年9月28日発売[17]ISBN 978-4-09-862521-5
    10. 2023年12月27日発売[18]ISBN 978-4-09-862609-0
    11. 2024年2月29日発売[19]ISBN 978-4-09-862680-9

出典[編集]

  1. ^ a b c “「闇金ウシジマくん」真鍋昌平が描く新たなテーマは弁護士!スピリッツで開幕”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年10月12日). https://natalie.mu/comic/news/400257 2021年6月7日閲覧。 
  2. ^ 「九条の大罪 第97審 生命の値段⑥」『ビッグコミックスピリッツ』2024年14号、小学館、2024年3月4日、10頁。 
  3. ^ “『闇金ウシジマくん』に限界、新たに挑んだ“悪徳弁護士”で40万部突破”. 読売新聞オンライン (読売新聞社). (2021年9月23日). https://www.yomiuri.co.jp/culture/subcul/20210922-OYT1T50156/ 2022年4月17日閲覧。 
  4. ^ “依頼人は半グレ、ヤクザ、前科持ち…『闇金ウシジマくん』作者が“胸くそ悪い”弁護士を描くワケ 真鍋昌平さんインタビュー#1”. プレジデントオンライン (プレジデント社). (2021年6月11日). https://president.jp/articles/-/46494 2022年4月17日閲覧。 
  5. ^ a b “真鍋昌平が“どんな悪人でも擁護する”弁護士描く新作1巻、「ウシジマくん」コラボ特典も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年2月26日). https://natalie.mu/comic/news/417899 2021年6月7日閲覧。 
  6. ^ a b “真鍋昌平「九条の大罪」2巻に各界から推薦コメント、ウシジマくんコラボ特典も再び”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年5月28日). https://natalie.mu/comic/news/430160 2021年6月7日閲覧。 
  7. ^ “「九条の大罪」しずくが“ぴえん”な若者に迫る書籍の表紙に、真鍋昌平と著者の対談も”. コミックナタリー (ナターシャ). (2021年12月1日). https://natalie.mu/comic/news/455837 2021年12月1日閲覧。 
  8. ^ “書店員が選んだおすすめコミック2022、第1位は龍幸伸「ダンダダン」”. コミックナタリー (ナターシャ). (2022年1月27日). https://natalie.mu/comic/news/463266 2022年1月27日閲覧。 
  9. ^ 九条の大罪 1”. 小学館. 2021年6月6日閲覧。
  10. ^ 九条の大罪 2”. 小学館. 2021年6月6日閲覧。
  11. ^ 九条の大罪 3”. 小学館. 2021年8月30日閲覧。
  12. ^ 九条の大罪 4”. 小学館. 2021年11月30日閲覧。
  13. ^ 九条の大罪 5”. 小学館. 2022年3月30日閲覧。
  14. ^ 九条の大罪 6”. 小学館. 2022年7月29日閲覧。
  15. ^ 九条の大罪 7”. 小学館. 2022年11月30日閲覧。
  16. ^ 九条の大罪 8”. 小学館. 2023年3月30日閲覧。
  17. ^ 九条の大罪 9”. 小学館. 2023年12月27日閲覧。
  18. ^ 九条の大罪 10”. 小学館. 2023年12月27日閲覧。
  19. ^ 九条の大罪 11”. 小学館. 2024年3月4日閲覧。

外部リンク[編集]