ヴァーサ (海防戦艦)

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「ヴァーサ」(1903年)
「ヴァーサ」(1919年)、前檣が三脚檣化されている

ヴァーサ (Wasa) はスウェーデン海軍海防戦艦アラン級。艦名は第一次ロシア・スウェーデン戦争時の戦列艦から引き継いでいる[1]

ストックホルムのベリスンス造船所で建造[2]。1899年起工[2]。1901年9月25日進水[2]。1902年12月6日竣工[2]

基準排水量3650トン、満載排水量3735トン、全長89.7m、水線長87.5m、最大幅15.02m、計画吃水5.02m[2]

主砲はボフォース44口径21cmM/98型砲2門で、艦前後の単装砲塔に搭載[3]。副砲はボフォース44口径15.2cmM/98型速射砲6門を単装砲塔で搭載した[3]。他の兵装はフィンスポング55口径57mmM/89b型砲10門とアームストロング・ホイットワース45,7cmM/99型水中魚雷発射管2門[2]

主機はモータラ製直立3気筒3段膨張蒸気往復動機関2基、主缶はヤーロー水管缶8基で、出力5500指示馬力[2]。2軸推進で計画速力16.5ノット[2]。公試では16.77ノットを発揮した[2]。航続距離は12ノットで3000浬[2]

装甲はKCで厚さは水線装甲帯が最大175mm、主砲バーベットと前楯190mm、側楯と後楯140mm、副砲バーベット100mm(ニッケル鋼とも)、前楯125mm、後楯60mm、シタデル175mm(ボフォース製とも)、司令塔175mm[4]。甲板は11.5mm厚鋼板2枚+25mm装甲鈑(普通鋼[5]

1906年からアラン級4隻には前檣の三脚檣化とそこへの2m測距儀搭載がなされた[6]

「ヴァーサ」の進水

1914年、海防戦艦「タッペレーテン」が座礁し、「ヴァーサ」と海防戦艦「アラン」などによる牽引が試みられているが失敗に終わっている[7]。1919年、アラン級4隻他の艦隊がイェヴレに入港した際、水兵がそこの祭りに参加したが、乱闘騒ぎとなった[8]。日本の夏祭りが元だという祭りの名前から、このことは「ニッポン戦争」呼ばれたという[8]

1924年、予備艦となる[9]。以後、資金不足のため最低限の維持管理しかなされなかった[10]。第二次世界大戦勃発後に同型艦「アラン」や「タッペレーテン」は再就役することとなったが、「ヴァーサ」状態不良のため再就役不可能とされた[11]。「ヴァーサ」をマルメーで砲台とするとの提案に対しては、資金は他のことに用いたほうが良いよの意見が出た[10]。結局、「ヴァーサ」は1940年3月15日に解役された[9]。1942年には海防戦艦「ドロットニング・ヴィクトリア」に似たシルエットにかえられた[10]。主砲や水線装甲帯は撤去されており、装甲帯はトレ・クロノール級軽巡洋艦の装甲鈑の原料となった[12]。「ヴァーサ」はダメージコントロールの訓練に使用され、1951年に解体された[13]

脚注[編集]

  1. ^ 『海防戦艦』135ページ
  2. ^ a b c d e f g h i j 『海防戦艦』143ページ
  3. ^ a b 『海防戦艦』132、143ページ
  4. ^ 『海防戦艦』134、143ページ
  5. ^ 『海防戦艦』134ページ
  6. ^ 『海防戦艦』142ページ
  7. ^ 『海防戦艦』139ページ
  8. ^ a b 『海防戦艦』128ページ
  9. ^ a b 『海防戦艦』140ページ
  10. ^ a b c "The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", p. 18
  11. ^ 『海防戦艦』140-141ページ
  12. ^ 『海防戦艦』137、140ページ
  13. ^ 『海防戦艦』140、143ページ、"The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", p. 18

参考文献[編集]

  • 橋本若路『海防戦艦 設計・建造・運用 1872~1938』イカロス出版、2022年、ISBN 978-4-8022-1172-7
  • Daniel G Harris, "The Swedish Armoured Coastal Defence Ships", Warship 1996, Conway Maritime Press, 1996, ISBN 0-85177-685-X, pp. 9-24