フクロノリ

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フクロノリ
分類
: 植物界 Plantae
: 黄藻植物(オクロ植物)門 Ochrophyta
: 褐藻綱 Phaeophyceae
亜綱 : ヒバマタ亜綱 Fucophycidae
: シオミドロ目 Ectocarpales
: カヤモノリ科 Scytosiphonaceae
: フクロノリ属 Colpomenia
: フクロノリ C. sinuosa
学名
Colpomenia sinuosa (Mertens ex Roth) Derbès & Solier in Castagne 1851: 95.
英名
oyster thief
sinuous ballweed

フクロノリ(袋海苔、学名:Colpomenia sinuosa)は、カヤモノリ科に属する褐藻類の一種。

一文字違いで似て非なるものとして、食用のフクロフノリGloiopeltis furcataがあるが、こちらは紅藻植物門スギノリ目フノリ科に属するまったくの別種である。

分布・環境[編集]

日本各地の潮間帯下部から潮下帯に周年みられる。タイドプールや波の穏やかな場所にみられる場合もある。場所や季節によっては海底がみえなくなるほど群生をなすこともしばしば[1]。他の海藻体上に生育する[2]場合もある。

静岡県伊豆半島北部の内浦沿岸にはイシサンゴ目エダミドリイシを主とする造礁サンゴ群集が形成されており、本種はその群集内に密生する。こうしたサンゴ群集に大型海藻が繁茂することは熱帯海域ではほとんどみられず、高緯度海域における特徴の一つとされている[3]

形態[編集]

大きさは直径5~20cm程度。名のとおり薄い膜状の袋構造で凸凹した球形となる。海水中ではこの袋構造内に気体がたまっている様子が観察できる。色は黄褐色や褐色で艶はない。手触りは硬いが脆くて破れやすい。見た目からネバリモLeathesia difformisに似るが、粘り気がない点で経験的に本種と区別できる。また、切片観察を伴うとその体構造の明確な違いから正確な判別が可能[4]

分類[編集]

近縁種であるウスカワフクロノリC. peregrinaC. claytoniaeとの外見上の明確な区別は困難とされ、切片観察をもってしても生殖器官の観察などを経なければならない[4]とされる。

その他[編集]

食品添加物としての誤解[編集]

巷で広まる食品添加物のうち「フクロノリ抽出物(Fukuronori extract)」と呼ばれるものがあるが、これは紅藻類フノリ科のフクロフノリG. furcataという別種から抽出されたもの(多糖類フノラン)[1]を指しており、褐藻類の本種とはまったく関係がない。

脚注[編集]

  1. ^ a b 神谷充伸(2012):ネイチャーウォッチングガイドブック海藻-日本で見られる388種の生態写真+おしば標本-.誠文堂新光社.271pp.
  2. ^ 新崎盛敏(2002):原色新海藻検索図鑑.北隆館.205pp.
  3. ^ 中西善栄・上野信平(1998):駿河湾のエダミドリイシ群集に対するフクロノリ被覆の影響.東海大学海洋研究所研究報告、19号、p.61-69.
  4. ^ a b 生きもの好きの語る自然誌”. 2024年4月10日閲覧。

参考文献[編集]

  • Lee, Kyung Min; Boo, Sung Min; Kain, Joanna; Sherwood, Alison (February 2013). “Cryptic diversity and biogeography of the widespread brown alga Colpomenia sinuosa (Ectocarpales, Phaeophyceae)”. Botanica Marina 56 (1): 15–25. doi:10.1515/bot-2012-0211. 
  • ウィキメディア・コモンズには、Colpomenia sinuosaに関するメディアがあります。
  • ウィキスピーシーズには、フクロノリに関する情報があります。