ハラタケ属

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ハラタケ属
ハラタケ
分類
: 菌界 Fungi
: 担子菌門 Basidiomycota
: 真正担子菌綱 Agaricomycetes
: ハラタケ目 Agaricales
: ハラタケ科 Agaricaceae
: ハラタケ属 Agaricus
亜属、節、種

本文参照

ハラタケ属学名: Agaricus)はハラタケ科菌類の属の一つ。

形態[編集]

子実体はハラタケ型(agaricoid)、成熟した胞子および胞子紋は有色で多くが黒褐色、ひだは柄に対し離生もしくは隔生、柄には膜質のつばを持つもしくは欠くなどの特徴を集めたグループである。

その他の特徴として傘は鱗片が集まったことが肉眼的にも分かりやすい種が多いこと、肉を傷つけたときに変色性を持つものがあることなどがある。

生態[編集]

腐生菌で草原や河川敷に生える種も多い。森林内を好む種も多数知られているが、樹木の外生菌根を形成してはいないと見られている。

人間との関係[編集]

食毒性[編集]

幾つかの食用種が知られている。腐生菌であるため栽培も比較的簡単であり、ヨーロッパでは昔から栽培されてきたことからツクリタケ(作り茸)の和名を持つ Agaricus bisporusもこの仲間である。日本では最近はツクリタケという標準和名よりも「マッシュルーム」という商品名で呼ばれることが多く、小売店でも一年中入手可能である。ただし全ての種が食用というわけではなく、有毒種も知られている。経験的には肉を傷つけたときに黄色く変色するハラタケ類には要注意と言われることがしばしばあるが、これはAgaricus xanthodermus(和名未定)という有毒種が柄の基部に強い黄変性を持つことに因む。有毒種でも嘔吐や下痢程度のものが多く、致命的な毒性のものは知られていなかったが、アフリカから報告されたAgaricus aurantioviolaceus(和名未定)は致命的と言われる。このほかにも食毒不明種は多く、またいくつかの種ではカドミウム等の重金属を子実体に集積させる性質があるといい、特に野生種を食用の際は留意すること。

ハラタケ属菌の中にはハラタケ科の他の属や他の科の有毒種と誤食されやすいものがある。ハラタケ科ではキツネノカラカサ属菌、カラカサタケ属菌、他科ではウラベニガサ科のフクロタケ属菌、オオフクロタケ属菌、テングタケ科テングタケ属菌などが代表的である。色が白いハラタケ類はドクツルタケ類(Amanita spp.、テングタケ科)、タマゴテングタケAmanita phalloides、テングタケ科)の幼菌などと、傘に鱗片を付着させるハラタケ類はキツネノカラカサ類(Lepiota spp.)、フクロツルタケ類(Amanita spp. テングタケ科)は猛毒なものが多く特に注意しなければならない。

薬用[編集]

属名はAgaricusであり、ハラタケ属内の全てが「アガリクス・○○」であるが、日本で特に「アガリクス」といった場合はAgaricus subrufescens(和名カワリハラタケ)を意味することがある。抗腫瘍効果があるとされている。

下位分類[編集]

400種以上の種が知られ[1][2]亜属の単位を認めたいくつかのグループに分けることが多い。以下では6の亜属とその下に20の節を置く分類法で記述するが、研究者により多少の相違がある。

Subgenus Agaricus ハラタケ亜属[編集]

模式亜属であり、以下の1節から成る単型である。

Section Agaricus ハラタケ節[編集]

Subgenus Flavoagaricus[編集]

以下の1節からなる単型である。

Section Arvense[編集]

Subgenus Minores[編集]

以下の2節を含む

Section Leucocarpi[編集]

Section Minores[編集]

Subgenus Minoriopsis[編集]

Subgenus Pseudochitonia[編集]

以下の13節を含む

Section Bohusia[編集]

Section Brunneopicti[編集]

Section Chitonioides[編集]

Section Crassispori[編集]

Section Cymbiformes[編集]

Section Duploannulatae[編集]

Section Flocculenti[編集]

Section Hondenses[編集]

Section Nigrobrunnescentes[編集]

Section Rubricosi[編集]

Section Sanguinolenti[編集]

Section Trisulphurati[編集]

Section Xanthodermatei[編集]

Subgenus Spissicaules[編集]

以下の4節を含む。

Section Amoeni[編集]

Section Rarolentes[編集]

Section Spissicaules[編集]

Section Subrutilescentes[編集]

名前[編集]

昔はこれらの属にはPsalliotaという名前が与えられており、これは現在でも古いキノコの本に見ることができる。属の旧名であったPsalliotaはギリシャ語で輪を意味するpsalion/ψάλιονに由来しており、エリーアス・フリースの1821年の著書に初見される。

"Agaricus"の名称の由来はいくつか提案されており、"ロシアの地区であるSarmaticaのAgarica"からという説、ギリシャ語の「木のきのこの一種」という意味を持つἀγαρικ[3]όνからという説などがある。初期の扱いとしてはマリヌス・アントン・ドンクPersooniaでAgaricon Adans. genusとして扱われている。


参考文献[編集]

  1. ^ Bas C. (1991). A short introduction to the ecology, taxonomy and nomenclature of the genus Agaricus, 21-24. In L.J.L.D. Van Griensven (ed.), Genetics and breeding of Agaricus. Pudoc, Wageningen, The Netherlands.
  2. ^ Capelli A. (1984). Agaricus. L.: Fr. (Psalliota Fr.). Liberia editrice Bella Giovanna, Saronno, Italy
  3. ^ ロシアのиに似る

関連項目[編集]

外部リンク[編集]