ノルウェーサーモン

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ノルウェーサーモンは、タイセイヨウサケ(別名アトランティックサーモン)のうち、ノルウェー養殖されたものを特にそう呼称する[1]

ノルウェーでのサーモンの養殖は、1959年にデンマークの淡水養殖場からの紹介でトラウト(ニジマス)の養殖を始めたことから始まり、その後トラウトが海水でも順応することから海面での養殖が開始され、1970年にはヒトラ島 (Hitra (island)にアトランティックサーモンの養殖場が作られた[1]。1985年に初めて生食での消費が開始され、2017年の国連食糧農業機関(FAO)の報告によれば、世界で養殖されているサーモンのうちノルウェー産のものが全体の約半分を占めている[1]。またノルウェーでは2006年1月に発効した養殖法(Aquaculture Act)などにより養殖業はライセンス制度として管理されており、最大限飼育できる養殖魚の生物量などが決められている[2]

日本への輸出は1980年代にノルウェーの水産省により「プロジェクト・ジャパン」が立ち上げられ[注釈 1]、寄生虫の心配がなく生食ができるサーモンの販売を促進、ニチレイが協定を結び寿司店向けにノルウェーサーモンの販売を開始し、回転寿司用として普及していった[4][5][6][7]

クリミア半島での問題があり2014年8月にロシアはノルウェーからの水産物輸入を停止したが、他国に転換することでノルウェーサーモンの輸出金額はコロナの影響で2020年に一時的に減少した以外は増大し続けている[8]

2022年時点で、ノルウェーでは約150万トンのサーモンが養殖生産されており、ノルウェーの通商産業水産省所管の「ノルウェー水産物審議会」(NSC)によれば、2021年の日本へのサーモン輸出量は約5万トンとなっている[9]。2023年1-7月期のアジア市場では、日本や韓国を抜いて中国が最大の輸出先となった[10]

食用について[編集]

サーモンたんぱく質オメガ3脂肪酸を豊富に含むオイリーフィッシュ[11] に分類される一般的な食用魚である[12]養殖鮭と天然鮭の主要生産国であるノルウェーでは養殖と天然鮭は食品の品質と安全性の点でわずかに異なる。養殖鮭は環境汚染物質の含有量が少なく、天然鮭は脂肪酸オメガ3の含有量が多い[12]

生のサケの肉には、アニサキス症を引き起こす海洋寄生虫であるアニサキス線虫が含まれている可能性がある。冷蔵が利用可能になる前は日本でも生の鮭を消費していなかった。サーモンとは1980年代後半に無寄生のノルウェー産サーモンが登場し、刺身寿司の製造に使用されるようになったのはごく最近のことである[13]

料理の例[編集]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 1986年にプロジェクトが開始された当初は、カペリン(カラフトシシャモ)の輸出をメインとしていた[3]

出典[編集]

  1. ^ a b c 巨大なノルウェーサーモンの養殖施設を調べてみた”. umito.. マルハニチロ (2019年7月25日). 2023年10月21日閲覧。
  2. ^ 金子貴臣 (2020年2月). “ノルウェーにおける最先端養殖技術 —現在と将来—”. 水産振興ONLINE. 一般社団法人 東京水産振興会. 2023年10月21日閲覧。
  3. ^ サーモン寿司はノルウェー発祥 日本を席巻するワケ”. NIKKEI STYLE. 日本経済新聞 (2017年4月7日). 2023年10月26日閲覧。
  4. ^ 長浜淳之介 (2022年5月31日). “「サーモン」輸入にウクライナ侵攻の影響 それでもスシローやくら寿司が大きく慌てていない理由”. ITmedia ビジネスオンライン. 2023年10月24日閲覧。
  5. ^ Norway's Introduction of Salmon Sushi to Japan”. 2013年3月30日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月26日閲覧。
  6. ^ How The Desperate Norwegian Salmon Industry Created A Sushi Staple”. npr (2015年9月18日). 2023年10月26日閲覧。
  7. ^ ビョーン・エイリク・オルセン. “サーモン寿司 30 周年に際してのご挨拶”. 大日本水産会. 2023年10月26日閲覧。
  8. ^ 片野歩 (2023年10月11日). “露の水産物禁輸でノルウェーのサーモンはどこ行った?”. Wedge ONLINE. 2023年10月24日閲覧。
  9. ^ 川本大吾 (2022年11月21日). “回転寿司で断トツ人気の「サーモン」は、かつて築地のプロから門前払いだった 知られざる「ノルウェーサーモン誕生秘話」”. デイリー新潮. 2023年10月26日閲覧。
  10. ^ ノルウェー水産局「中国がアジア最大のサーモン輸出先国に」”. Record China (2023年8月13日). 2023年10月24日閲覧。
  11. ^ What's an oily fish?”. 英国食品基準庁 (2004年6月24日). 2012年8月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年5月26日閲覧。
  12. ^ a b How healthy is farmed salmon?”. SciencenNordic (2017年12月22日). 2021年5月26日閲覧。
  13. ^ Jiang, Jess (2015年9月18日). “How The Desperate Norwegian Salmon Industry Created A Sushi Staple”. National Public Radio. オリジナルの2019年4月24日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20190424211018/https://www.npr.org/2015/09/18/441530790/how-the-desperate-norwegian-salmon-industry-created-a-sushi-staple 2021年5月26日閲覧。