ニベ科

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ニベ科
ニベ科の1種 Sciaena umbra
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
: ニベ科 Sciaenidae
英名
Drum (Croaker)

ニベ科Sciaenidae)は、スズキ目に属する魚類の分類群の一つ。66属で構成され、ニベシログチなど沿岸に生息する海水魚を中心におよそ270種が含まれる。

概要[編集]

オオニベ属の1種(Argyrosomus regius)。大西洋東部から地中海にかけて分布する大型種で、体長は2mを超える

ニベ科には270種が含まれ、79科を擁するスズキ亜目の中でハタ科テンジクダイ科に次いで3番目に大きいとなっている[1]太平洋インド洋大西洋など世界中の海に住むが、分布範囲は大陸周辺の沿岸域に限られ、インド洋中央部や太平洋の島嶼地域には生息しない。沿岸から大陸棚にかけての砂泥地帯で生活する種類が多く、水深200m以深の深海に出現する場合もある[2]。海産種の一部は汽水域にも進出し、南北アメリカ大陸の大西洋岸からは28種の純粋な淡水魚が知られる。

ほとんどの仲間は体長数十cmにまで成長し、ニベシログチのように食用魚として重要な種類も多く含まれる。オオニベArgyrosomus japonicus)など、2mに達する大型種も知られている[2]

ニベ科の魚類は「イシモチ」あるいは「グチ」と総称されることがある。前者はテンジクダイ科の魚類が同じ名で呼ばれるのと同じく、本科魚類が他の科の魚類に比してかなり大き目の耳石をもつこと、後者は浮き袋を反響させ発音することがその由来となっている。

形態[編集]

ニベ科魚類はやや左右に平べったく側扁した体型をもち、一部に小さな口ヒゲを有する種類もある。背鰭の基底は長く、前半の棘条部(6-13本)と後半部(1棘20-35軟条)との間には深い切れ込みがある。臀鰭は1-2本の棘条と6-13本の軟条で構成され、棘条は通常か細く2本目の方が大きいことが多い。側線は尾鰭の後端まで伸びる。尾鰭の形態は中央部がややくぼむものから、丸みを帯びるものまでさまざま。口蓋骨鋤骨を欠く。浮き袋には特徴的な多数の分岐構造がみられる。椎骨は24-30個。

分類[編集]

Boesemania microlepis。東南アジアに分布する水産重要種
サンゴニベ属の1種(Equetus punctatus)。伸長した背鰭の棘条部が特徴の種類。カリブ海など大西洋の熱帯域に生息する
Sciaena umbra。地中海・大西洋東部に分布し、汽水域からサンゴ礁、大陸棚まで幅広い生息域をもつ

ニベ科は66属270種で構成され、10亜科に細分する見解もある[1]

種数はFishbaseによる[3]

利用[編集]

1866年慶応2年)に撮影された徳川慶勝43歳時の肖像写真(徳川林政史研究所所蔵)[4]。石首魚石入蝋色塗刀拵・脇差拵を携行している[4][5][6]

ニベ科の魚は食用のほか、その発達した耳石が工芸に使用された例がある。幕末尾張藩主徳川慶勝が所用し、現在は徳川美術館が所蔵する石首魚石入蝋色塗刀拵・脇差拵(いしもちいしいりろいろぬりかたなごしらえ・わきざしごしらえ、それぞれ1857年安政4年)6月と1854年(安政元年)3月の作)は、脇差の漆塗にイシモチ(ニベ科)の耳石を散りばめて黒地に白の斑模様を表している[4][5][6]

出典・脚注[編集]

  1. ^ a b 『Fishes of the World Fourth Edition』 pp.372-373
  2. ^ a b 『日本の海水魚』 p.370
  3. ^ Sciaenidae in fishbase”. 2014年9月11日閲覧。
  4. ^ a b c 徳川美術館(2013)p. 9
  5. ^ a b 石首魚石入蠟色塗刀拵・脇差拵 - 徳川美術館、2019年1月9日閲覧。
  6. ^ a b 石首魚石入蝋色塗刀拵・脇差拵 - Google Arts & Culture、2019年1月9日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]