デート商法

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デート商法(デートしょうほう)とは、恋愛感情を利用して、契約を締結させる商法[1][2]である。「恋人商法」または「恋愛商法」とも表される[3]

概要[編集]

概ね以下のような手口で行われる[4][5][6][7]

ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)、出会い系サイトカップリングパーティー、合コン(コンパ)、電話、街角のアンケート電子メールオンラインゲーム内のボイスチャットなどでの出会いをきっかけとして、販売員が身分を秘匿して接近してくる[8]。販売員は、相手と何回か会って話やデートをして相手に感情移入させた[9]後、商品をねだって、業者の販売店に誘いこんで購入させる。中には店内の販売員数人で取り囲んだり、脅迫した末に、強引に購入させる手口もある。

また、販売員が異性であることが、心理的にクーリングオフの行使をためらわせる効果があるともいわれている。また、商品が購入したあとも自分が詐欺にあっているとの自覚がなく、友人や家族等に話した時に初めて詐欺と気が付くケースが多いのも特徴の一つである。それを防止するために、「2人だけの秘密」などそれらしい文句を言うことでクーリングオフの期間を経過させる手口もある。

商品は、毛皮宝石絵画不動産[10]など、高価なものがメインである。「自分がデザインしたもの」などといって買わせるケースも多い。不動産以外はクレジットも生かせるように、数十万〜数百万円の高額を設定して販売する[5]。このような業者と契約するとカモリストに掲載され、二次勧誘の対象になる場合が多い。また、特定商取引法に基いてクーリングオフできる場合がある。

2020年以降、SARSコロナウイルス2が日本で流行したため、ネット婚が増加し、デート商法の問題が再び注目された[4]

擬似恋愛商法[編集]

相手の恋愛感情を悪用し、金品を搾取する擬似恋愛商法推しビジネスはトラブルの元となっている[11]。不動産営業に美人女性やイケメン男性を用いることで、疑似デート商法の複数被害者がでている[12]

国民生活センターは啓発のため、被害者目線ギャルゲー風「デート商法疑似体験動画」公開している[13]

法人・団体による「悪質な寄付勧誘」については、霊感商法恋愛感情悪用手法を禁じる高額寄付被害救済・防止法が施行された[14]

疑似恋愛商法・推しビジネスは新興カルト宗教との共通点が指摘されている[11]。ホスト貢ぐために結婚詐欺ロマンス詐欺行っていた頂き女子(現金搾取に重きを置いたパパ活の悪質版[15])事件、貢いでた女性によるホスト刺傷事件なども複数起きている[11][16]。2023年12月に消費者庁が「消費者契約法の要件を満たせば、恋愛感情を利用して結んだ契約は取り消せる」とし、色恋営業は「デート商法」であるとの見解を発表した[17]。夜職男性にハマった女性たちが溜めた数百万以上のツケ(売掛金)を払うのにパパ活や売春したり、夜職女性に搾取された男性らが消費者金融で数百万以上の借金を抱える事態が多発している。更には働く側もマトモな金銭感覚や倫理観を喪失し、非合法でも稼げれば良い・売上が多い者が偉い・高くてレアなハイブラほど良いなど物質至上主義、昼職稼ぎへの蔑視が蔓延しており、好意を持つ他者からの金品搾取を何とも思わない者だけが生き残れる世界となっている。平成途中からマスコミの持ち上げ、SNSでの宣伝もあり、色恋水商売に憧れ、人生を狂わされる若者が多発している。このことからもホスト・キャバクラガルバコンカフェラウンジなど色恋営業(色営)を行う色恋水商売への規制と共に、「恋愛感情を悪用したお金稼ぎ」全体への規制強化が求められている[11][18][19][20]

被害者に対する攻撃・加害者擁護[編集]

被害者は男女ともに認められるが、日本においては、詐欺事件において「騙された方が悪い」と見なす風潮がある。それに加え、本商法の場合、特に「相手の魅力に惑わされた愚か者」との偏見が加わり、被害者が二次的に精神的被害を受けることが問題となっている。デート商法は、自尊心ではなく恋愛感情を利用するのがアポイントメント商法と異なる点である。また、男性が対象になる事が圧倒的に多いアポイントメント商法と較べ、デート商法では女性も対象[1]となっている。


特に女性が詐欺側で、男性が恋愛感情詐欺の被害者となった際には詐欺加害者擁護がSNS上で多く投稿される[21]。ホスト貢ぎ資金のために、主にマッチングアプリで出会った相手男性たちから「若い人は体目当てばかりで男性恐怖症になった。あなたは優しそう」「アパレル会社の立ち上げに失敗し、借金が残った」などと嘘で同情を誘い[22][21][23]、1.5億円以上をロマンス詐欺し、詐欺マニュアル販売もしていた「頂き女子」の事件では、主に女性から加害者擁護・被害者への誹謗中傷がSNSに溢れた。北原みのりは、実刑判決となったことに抗議表明している。こうなる理由としては、「かわいそうだと思ってもらえる順番」こと「かわいそうランキング(弱者性ランキング)」において、中高年男性は若年女性よりも低いことにある[21]

規制強化の推移[編集]

2017年、内閣府消費者委員会の専門調査会は恋愛感情につけ込んで高額商品の購入を迫るなどをし、被害者の負担を軽減する取り消せる規定を消費者契約法に設ける必要があると取りまとめた[24]

2018年6月8日に消費者契約法改正案が成立し、「消費者は事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、社会生活上の経験が乏しいことから、当該消費者契約の締結について勧誘を行う者に対して恋愛感情その他の好意の感情を抱き、かつ、当該勧誘を行う者も当該消費者に対して同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、これに乗じ、当該消費者契約を締結しなければ当該勧誘を行う者との関係が破綻することになる旨を告げることより困惑し、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは」(法第4条第3項第4号)とデート商法について消費者は消費者契約を取り消すことができると規定され(取消権の期限は法7条により、追認[25]をすることができる時から1年以内又は該消費者契約の締結の時から5年以内)、2019年6月15日に施行された。

脚注[編集]

  1. ^ a b 恋人の“ふり”に要注意!~デート商法から若者を守る 法改正で契約取消し可能に!|政府インターネットテレビ”. 政府インターネットテレビ. 2023年5月7日閲覧。
  2. ^ 日本放送協会. “理解度チェック | 家庭総合”. 高校講座. 2023年5月7日閲覧。
  3. ^ チェックリストでデート商法を見抜け!見分け方と5つの対処法を弁護士が解説”. 法律の悩みを解決するメディア|リーガルモールbyベリーベスト法律事務所. 2023年5月7日閲覧。
  4. ^ a b その出会い「デート商法」?…コロナ禍で広がるネット婚活、潜む危険”. 読売新聞オンライン (2021年5月20日). 2023年5月7日閲覧。
  5. ^ a b 【ご意見募集中】マッチングアプリきっかけに、100万円支払わされた…”. 西日本新聞me. 2023年5月7日閲覧。
  6. ^ 「デート商法」に注意 恋愛ゲーム風動画で呼び掛け”. テレ朝news. 2023年5月7日閲覧。
  7. ^ 毎日放送, MBS. “『女性50人と同時交際』詐欺容疑で逮捕→不起訴...”検察官”の主張「将来を共にしようと思っている相手であっても3万円すら負担するのは嫌だと?」 | 特集”. MBSニュース. 2023年5月7日閲覧。
  8. ^ その恋愛感情がアブナイ! 好きにさせてダマす「デート商法」を動画体験”. J-CAST 会社ウォッチ (2019年3月24日). 2023年5月7日閲覧。
  9. ^ 毎日放送, MBS. “『女性50人と同時交際』詐欺容疑で逮捕→不起訴...”検察官”の主張「将来を共にしようと思っている相手であっても3万円すら負担するのは嫌だと?」 | 特集”. MBSニュース. 2023年5月7日閲覧。
  10. ^ 日本テレビ. “マンション買わされ…“デート商法”急増”. 日テレNEWS. 2023年5月7日閲覧。
  11. ^ a b c d ジャニーズ解体、ホスト規制、AKB商法…推しビジネスの「終わりの始まり」 誤解を誘発する疑似恋愛はトラブルのもと”. PRESIDENT Online(プレジデントオンライン) (2023年11月18日). 2024年5月10日閲覧。
  12. ^ エリート社員がハマった最悪の不動産投資”. 東洋経済オンライン (2018年10月28日). 2024年5月10日閲覧。
  13. ^ 国民生活センターがギャルゲー風「デート商法疑似体験動画」公開 ときめき国民生活センター始まったな”. ねとらぼ (2019年3月7日). 2024年5月10日閲覧。
  14. ^ 霊感商法・疑似恋愛など「困惑」行為はNG…悪質な寄付勧誘を禁止する「救済法」が施行”. 読売新聞オンライン (2023年1月5日). 2024年5月10日閲覧。
  15. ^ パパから交際相手へ発展、パパ活女子を魅了「好きP」と呼ばれる“おじ”の納得の共通点とは(FRIDAY)”. Yahoo!ニュース. 2024年5月10日閲覧。
  16. ^ 「大金を貢がせた方にも問題あり」歌舞伎町ホスト刺傷事件で沸き上がった「色恋営業への規制論」に賛否”. ライブドアニュース. 2024年5月10日閲覧。
  17. ^ ホストクラブ問題、消費者庁「色恋営業の契約取り消せる」と周知で波紋…「夜職全体が終わる」と困惑の声”. 日刊サイゾー (2023年12月4日). 2024年5月10日閲覧。
  18. ^ ホストクラブ激増の新宿・歌舞伎町 〝色恋営業〟に変化でトラブル増加”. 東スポWEB (2023年12月14日). 2024年5月10日閲覧。
  19. ^ TIMES編集部, ABEMA (2023年8月10日). “「立ちんぼして、シャンパン」路上売春で金を稼ぎ“メンコン”男性に貢ぐ14歳も 悪質営業が横行するトー横のリアル | 国内 | ABEMA TIMES | アベマタイムズ”. ABEMA TIMES. 2024年5月10日閲覧。
  20. ^ 「若者たちはなぜ悪さに魅せられたのか―渋谷センター街にたむろする若者たちのエスノグラフィー」p37, 荒井悠介, 2023
  21. ^ a b c “頂き女子”りりちゃんを援護する声。なぜ被害に遭った“おぢ”が非難されるのか(週刊SPA!)”. Yahoo!ニュース. 2024年5月10日閲覧。
  22. ^ 頂き女子りりちゃん、54歳派遣社員から5200万円だまし取る…「ホストクラブの金ほしくて」”. 読売新聞オンライン (2023年10月22日). 2024年5月10日閲覧。
  23. ^ 頂き女子りりちゃんに「完全にとりこ」被害男性が告白 疑いながらも大金…「好きという感情が優先」:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2024年5月10日閲覧。
  24. ^ デート商法、解約可能に 消費者庁が法改正へ - 日本経済新聞”. www.nikkei.com. 2023年5月7日閲覧。
  25. ^ 誤認をしたことに気付いた時や困惑を脱した時等、取消しの原因となっていた状況が消滅した時。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]