セファランチン

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セファランチンの構造式

セファランチン (cepharanthine) は、ツヅラフジ科の植物タマザキツヅラフジ(学名: Stephania cephalantha)から抽出したアルカロイドないし、それを含む医薬品である。アルカロイドとしては、化学式 C37H38N2O6分子量 606.7、CAS登録番号 481-49-2。製剤は白血球減少、脱毛等に用いられる。

タマザキ(玉咲)ツヅラフジは中国台湾に自生する植物で、民間薬として用いられていた。これを台北帝国大学早田文蔵Stephania cepharantha Hayata の学名で1914年に発表、1934年東京帝国大学近藤平三郎が有効成分を抽出し、学名にちなみ命名された。

当初は結核治療薬として用いられたが、一時期ハンセン病患者に対して用いられている。しかし投与時の注射による激痛は患者に重い負担を強い、また副作用から症状の悪化を招き死に至ることも少なくなかった[1]

今日では下記のような適用が定められている。また、生体膜の安定化や抗アレルギー作用、免疫機構へのさまざまな関与が知られる。製剤としては、日本の製薬メーカー化研生薬がもっぱら製造販売している。散剤、錠剤、注射剤の剤形がある。

適応症[編集]

男性型脱毛症への適応[編集]

日本皮膚科学会は2010年4月、男性型脱毛症への対処法としての5段階評価でセファランチンに対して「C2(根拠がないので勧められない)」と評価した。セファランチンを主成分とする育毛剤を製造する製薬メーカー化研生薬は「医薬部外品なので論文データが不足しているのは事実だが、動物実験で効果が示されている」と反論している[3]

脚注[編集]

  1. ^ ハンセン病医学・医療の歴史と実態 (PDF) 財団法人 日弁連法務研究財団[リンク切れ]
  2. ^ 森和久, 今泉均, 坂野晶司, 小林謙二, 金子正光, 五十嵐保, 大塚賢司「眼球運動障害を伴った重症マムシ咬傷の1例」『日本救急医学会雑誌』第5巻第7号、1994年、699-705頁、doi:10.3893/jjaam.5.699 
  3. ^ 朝日新聞2010年4月14日付け

外部サイト[編集]