ジュリアス・フランシス

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ジュリアス・フランシス
Julius Francis
基本情報
階級 ヘビー級
国籍 イギリスの旗 イギリス
誕生日 (1964-12-08) 1964年12月8日(59歳)
出身地 イギリスの旗 イギリス
ロンドン サザーク区 ペッカム英語版地区
スタイル オーソドックス
プロボクシング戦績
総試合数 48
勝ち 23
KO勝ち 12
敗け 24
引き分け 1
無効試合 0
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ジュリアス・フランシス英語: Julius Francis、1964年12月8日–)は、英国の元プロボクサーである。1990年代半ばから2000年代にかけて、コモンウェルス英連邦ヘビー級王座や英国ヘビー級王座を獲得するなど活躍した。最充実期の1999年には当時無敗であったペレ・リードダニー・ウィリアムズを破りロンズデール・ベルト英語版を獲得。翌年マイク・タイソンと対戦するも2ラウンドKO負けを喫した。2007年には総合格闘技の試合にも出場した。

経歴[編集]

1964年、ロンドンのペッカム地区に生まれた[1][2]。父親はクレーン車の運転手で、仕事で家を離れることが多かった。母親は病弱で、フランシスと4人の兄弟姉妹の面倒を見ることができなくなった。10歳のときに里親に預けられ、母親は6年後に亡くなった[1]

16歳のころには犯罪に手を染めていた[3]。数々の犯罪、多くは暴力沙汰で6つの刑務所に入所した経験がある[1][2]。そのころに負った大きなナイフの傷跡が腹部に残っている[2]

25歳で格闘技を始め、3年後にプロに転向した。

プロボクサーとして[編集]

1993年、28歳のときにプロボクサーライセンスを取得した。プロ入り後6連勝したが、7戦目でジョン・ルイスに敗れ連勝はストップした。1995年2月、英国ボクシング管理委員会(BBBofC)南部ヘビー級王座を獲得。1997年6月、コモンウェルス英連邦ヘビー級王座を獲得、同年9月にはBBBofC英国ヘビー級王座を獲得した。

1998年はアクセル・シュルツヴィタリ・クリチコに敗れるも、翌1999年は当時無敗であったペレ・リードダニー・ウィリアムズに初黒星をつけるなど3戦3勝と充実した1年であった[2]。この年、ウィリアムズ戦の勝利によってロンズデール・ベルトを獲得した[2]

マイク・タイソン戦[編集]

1999年12月、マイク・タイソンとイギリスでノンタイトル戦を行う契約に合意した。ファイトマネーは35万ポンドで、自身のそれまでの最高額8万5千ドルから大きく跳ね上がった[1]。タイソンがアメリカ国外で試合を行うのは東京でのジェームス・ダグラス戦以来10年ぶりであった。マンチェスターの試合会場には2万人以上の観客が詰めかけた[4]。試合は第1ラウンドからタイソンが圧倒し2回のダウンを奪うと、続く第2ラウンドでも続けざまに3度のダウンを奪い、レフェリーストップでタイソンが勝利した[5]。フランシスが着用していたブーツのソールに、イギリスの大衆紙「ミラー」が広告を出していたことも話題となった[6][7][8]

2001年4月にマイク・ホールデン戦に勝利し、WBOのヘビー級インターコンチネンタル王座を獲得したが同年7月にダニー・ウィリアムズに敗れタイトルを失った。以降の戦績は精彩を欠き、2003年4月のシナン・シャミル・サムトルコ語版英語版戦から14連敗し、2006年5月の試合を最後にプロボクシングのキャリアを終えた。

英国ヘビー級王座獲得・防衛4回、コモンウェルスヘビー級王座獲得・防衛5回の戦績を残した。

ボクシング引退後[編集]

総合格闘技[編集]

2007年9月に総合格闘技「Cage Rage 23: Unbelievable on 22」に出場、ゲイリー・ターナーとの試合で敗れた[9]

その他の活動[編集]

2012年、シェイクスピアの『オセロ』を題材にした舞台「Ring of Envy」に出演した[3][10]。観客の前で演じるのはタイソン戦よりも緊張したと語っている[3]

以後はウェンブリーのボックスパーク英語版で警備員の仕事をしており、現役時代を知るファンから声をかけられることもたびたびあった[3]。2022年6月、同施設に乱入した男をパンチ一発でノックアウトした。この際の動画は瞬く間にSNSで広まり、警備員が元プロボクサーのフランシスであったことから話題となった[3][9][11]。ボックスパークのCEOであるロジャー・ウェイドはフランシスを「最も素晴らしい人物の一人」と擁護した[12]タイソン・フューリーも「いい右パンチだ。あれだけ無作法に難癖をつけた男には当然の報いだ」とフランシスを支持した[13][14]。4時間半にわたる警察の取り調べも受け、適法にふるまったと判断された[15]。しかしながら、警備業管轄機関から資格を停止されることとなった[15]

プロボクシング戦績[編集]

23 勝(12 ノックアウト、11 判定)24 敗(8 ノックアウト、16 判定)、1 引分
結果 戦績 対戦相手 内容 ラウンド 日付 場所 備考
勝利 1–0 イギリスの旗 Graham Arnold TKO 5 (6), 0:28 1993年5月23日 イギリスの旗 ロンドン Crofton Leisure Centre
勝利 2–0 イギリスの旗 Joey Paladino KO 4 (4) 1993年6月23日 イギリスの旗 ロンドン Picketts Lock Stadium
勝利 3–0 アメリカ合衆国の旗 Andre Tisdale 判定 4 (4) 1993年7月24日 アメリカ合衆国の旗 ニュージャージー州 アトランティック・シティ Showboat Hotel & Casino
勝利 4–0 アメリカ合衆国の旗 Don Sargent TKO 2 (4) 1993年8月28日 アメリカ合衆国の旗 ノースダコタ州 ビズマーク Civic Center
勝利 5–0 イギリスの旗 John Keeton 判定 4 (4) 1993年12月1日 イギリスの旗 ロンドン York Hall
勝利 6–0 イギリスの旗 Manny Burgo 判定 4 (4) 1994年4月27日 イギリスの旗 ロンドン York Hall
敗戦 6–1 アメリカ合衆国の旗 ジョン・ルイス KO 4 (8), 2:38 1994年5月25日 イギリスの旗 ブリストル Colston Hall
勝利 7–1 アイルランドの旗 Conroy Nelson TKO 4 (8) 1994年11月12日 アイルランドの旗 ダブリン ポイント劇場
勝利 8–1 イギリスの旗 Gary Charlton TKO 1 (6) 1994年11月23日 イギリスの旗 ロンドン Cafe Royal
勝利 9–1 イギリスの旗 Damien Caesar TKO 8 (10) 1995年2月23日 イギリスの旗 ロンドン Elephant & Castle Centre BBBofC 南部ヘビー級王座(空位)獲得
勝利 10–1 イギリスの旗 Keith Fletcher 判定 10 (10) 1995年4月27日 イギリスの旗 ロンドン York Hall BBBofC 南部ヘビー級王座防衛
勝利 11–1 イギリスの旗 Steve Garber 判定 8 (8) 1995年5月25日 イギリスの旗 レディング Rivermead Leisure Centre
敗戦 11–2 イギリスの旗 Scott Welch KO 10 (10), 2:26 1995年7月1日 イギリスの旗 ロンドン Royal Albert Hall BBBofC 南部ヘビー級王座陥落
勝利 12–2 イギリスの旗 Neil Kirkwood TKO 7 (10) 1995年10月24日 イギリスの旗 ロンドン Elephant & Castle Centre
敗戦 12–3 カザフスタンの旗 Nikolay Kulpin 判定 10 (10) 1995年11月30日 ロシアの旗 サラトフ Circus
敗戦 12–4 イギリスの旗 Michael Murray 判定 10 (10) 1996年2月5日 イギリスの旗 ロンドン Crook Log Sports Club
勝利 13–4 イギリスの旗 Damien Caesar KO 1 (10) 1996年4月9日 イギリスの旗 ハートフォードシャー スティーブニッジ Leisure Centre BBBofC 南部ヘビー級王座(空位)獲得
勝利 14–4 イギリスの旗 Darren Fearn 判定 8 (8) 1996年5月7日 イギリスの旗 ロンドン メイフェア地区 Marriott Hotel
勝利 15–4 イギリスの旗 Michael Holden 判定 10 (10) 1996年7月9日 イギリスの旗 ロンドン York Hall
勝利 16–4 ナイジェリアの旗 James Oyebola TKO 5 (10) 1996年9月28日 イギリスの旗 ロンドン BBBofC 南部ヘビー級王座防衛
敗戦 16–5 クロアチアの旗 Željko Mavrović TKO 8 (12) 1997年2月15日 オーストリアの旗 ウィーン Kurhalle Oberlaa EBU 欧州ヘビー級タイトルマッチ
勝利 17–5 ザンビアの旗 Joseph Chingangu 判定 12 (12) 1997年6月30日 イギリスの旗 ロンドン York Hall コモンウェルスヘビー級王座(空位)獲得
勝利 18–5 イギリスの旗 Garry Delaney TKO 6 (12), 2:31 1997年9月27日 イギリスの旗 ベルファスト Ulster Hall BBBofC 英国ヘビー級王座(空位)獲得
コモンウェルスヘビー級王座防衛
敗戦 18–6 ドイツの旗 アクセル・シュルツ UD 12 (12) 1998年2月28日 ドイツの旗 ドルトムント Arena Westfalenhalle
敗戦 18–7 ウクライナの旗 ヴィタリ・クリチコ TKO 2 (12) 1998年4月18日 ドイツの旗 アーヘン Eurogress
勝利 19–7 イギリスの旗 ペレ・リード TKO 3 (12), 2:28 1999年1月30日 イギリスの旗 ロンドン York Hall 英国ヘビー級王座防衛
コモンウェルスヘビー級王座防衛
勝利 20–7 イギリスの旗 ダニー・ウィリアムズ 判定 12 (12) 1999年4月3日 イギリスの旗 ロンドン ロイヤル・アルバート・ホール 英国ヘビー級王座防衛
コモンウェルスヘビー級王座防衛
勝利 21–7 イギリスの旗 Scott Welch 判定 12 (12) 1999年6月26日 イギリスの旗 ロンドン Millwall New London Arena 英国ヘビー級王座防衛
コモンウェルスヘビー級王座防衛
敗戦 21–8 アメリカ合衆国の旗 マイク・タイソン KO 2 (10) 2000年1月29日 イギリスの旗 マンチェスター M.E.N. Arena
敗戦 21–9 イギリスの旗 Mike Holden 判定 12 (12) 2000年3月13日 イギリスの旗 ロンドン York Hall BBBofC 英国ヘビー級王座陥落
勝利 22–9 イギリスの旗 Mike Holden 判定 12 (12) 2001年4月30日 イギリスの旗 ロンドン York Hall WBO インターコンチネンタルヘビー級王座(空位)獲得
敗戦 22–10 イギリスの旗 ダニー・ウィリアムズ TKO 4 (12) 2001年7月28日 イギリスの旗 ロンドン Wembley Conference Centre BBBofC 英国ヘビー級王座およびコモンウェルスヘビー級王座タイトルマッチ
引分 22–10–1 イギリスの旗 Luke Simpkin 判定 6 (6) 2002年5月10日 イギリスの旗 ロンドン Britannia Hotel
勝利 23–10–1 デンマークの旗 Steffen Nielsen KO 6 (8) 2002年9月13日 デンマークの旗 ラナース Randers Hallen
敗戦 23–11–1 トルコの旗 Sinan Samil Sam TKO 7 (12) 2003年4月26日 ドイツの旗 シュヴェリーン Sport and Congress Center EBU 欧州ヘビー級タイトルマッチ
敗戦 23–12–1 デンマークの旗 Steffen Nielsen UD 10 (10) 2003年6月13日 デンマークの旗 オールボー Aalborg Hallen EBU 欧州ヘビー級タイトルマッチ
敗戦 23–13–1 ウクライナの旗 Volodymyr Vyrchys UD 12 (12) 2003年9月6日 ウクライナの旗 キーウ キエフ・スポーツ宮殿
敗戦 23–14–1 ドイツの旗 Luan Krasniqi UD 8 (8) 2003年10月18日 ドイツの旗 ハンブルク O2ワールド・ハンブルク
敗戦 23–15–1 ウズベキスタンの旗 オレグ・マスカエフ TKO 2 (10) 2003年11月27日 ロシアの旗 チェーホフ オリンピック・スタジアム
敗戦 23–16–1 イギリスの旗 マット・スケルトン 判定 10 (10) 2004年2月7日 イギリスの旗 ロンドン York Hall BBBofC 英国ヘビー級タイトルマッチ
敗戦 23–17–1 イギリスの旗 オードリー・ハリソン UD 12 (12) 2004年5月8日 イギリスの旗 ブリストル Whitchurch Leisure Centre WBFヘビー級タイトルマッチ
敗戦 23–18–1 ドイツの旗 Alexander Dimitrenko UD 8 (8) 2004年7月31日 ドイツの旗 シュトゥットガルト Hanns-Martin-Schleyer-Halle
敗戦 23–19–1 ウクライナの旗 Taras Bydenko UD 10 (10) 2004年9月21日 ドイツの旗 ハンブルク Wandsbek Universum Gym
敗戦 23–20–1 イスラエルの旗 Roman Greenberg 判定 10 (10) 2004年12月10日 イギリスの旗 シェフィールド Hillsborough Leisure Centre
敗戦 23–21–1 イギリスの旗 Micky Steeds 判定 8 (8) 2005年4月24日 イギリスの旗 ロンドン レスター・スクウェア Equinox Nightclub
敗戦 23–22–1 アイルランドの旗 Colin Kenna 判定 4 (4) 2005年6月26日 イギリスの旗 サウサンプトン Southampton Guildhall
敗戦 23–23–1 イギリスの旗 Scott Gammer 判定 8 (8) 2005年9月30日 ウェールズの旗 カーマーゼン Showground
敗戦 23–24–1 イギリスの旗 Scott Lansdowne 判定 4 (4) 2006年5月21日 イギリスの旗 ロンドン York Hall

出典[編集]

  1. ^ a b c d Smith, Timothy W. (2000年1月27日). “BOXING; Francis Gets His 10 Rounds of Fame” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2000/01/27/sports/boxing-francis-gets-his-10-rounds-of-fame.html 2022年8月31日閲覧。 
  2. ^ a b c d e BBC News | SPORT | Julius takes on Iron Mike”. BBC (14 December, 1999). 2022年8月31日閲覧。
  3. ^ a b c d e Gamp, Oli (2022年6月14日). “The rollercoaster career of boxer turned security guard Julius Francis”. Mail Online. 2022年9月1日閲覧。
  4. ^ On This Day: Mike Tyson demolishes British champion Julius Francis - Boxing News” (英語). Boxing News. 2022年9月1日閲覧。
  5. ^ BBC News | SPORT | Tyson wastes little time”. BBC. 2022年9月1日閲覧。
  6. ^ The photo that shows the terror of fighting Mike Tyson” (英語). NZ Herald. 2022年9月1日閲覧。
  7. ^ 161385360554578 (2020年5月7日). “What it's like to be punched by Mike Tyson and share the ring with a legend” (英語). talkSPORT. 2022年9月1日閲覧。
  8. ^ Tyson floors Francis”. ESPN.co.uk. 2022年9月1日閲覧。
  9. ^ a b Schofield, Will (2022年6月15日). “Boxpark bouncer Julius Francis once fought on same card as Katie Price's ex” (英語). Daily Star. 2022年9月1日閲覧。
  10. ^ Ring of Envy, Othello-Inspired Play Set in the Ring With Boxing Champ Julius Francis, Begins Oct. 24 in London”. playbill.com (2012年10月24日). 2022年9月1日閲覧。
  11. ^ Glasspiegel, Ryan (2022年6月14日). “Boxing champ-turned-security guard Julius Francis demolishes rabble-rouser with punch”. New York Post. 2022年9月1日閲覧。
  12. ^ Davies, Harry (2022年6月16日). “Tyson Fury leaps to Julius Francis defence after Mike Tyson rival KO'd rowdy man” (英語). Mirror. 2022年9月1日閲覧。
  13. ^ Tyson Fury defends Julius Francis after viral video of punch to ‘violent’ customer” (英語). The Independent (2022年6月17日). 2022年9月1日閲覧。
  14. ^ Tyson Fury defends Julius Francis over BoxPark KO as he hails ‘great right hand’” (英語). The Sun (2022年6月15日). 2022年9月1日閲覧。
  15. ^ a b Jay, Phil (2022年6月23日). “Julius Francis eyes Mike Tyson rematch after losing security license” (英語). WBN - World Boxing News. 2022年9月1日閲覧。

外部リンク[編集]