ゴウダソウ

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ゴウダソウ
ゴウダソウの花
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : アオイ類 malvids
: アブラナ目 Brassicales
: アブラナ科 Brassicaceae
: ゴウダソウ属 Lunaria
: ゴウダソウ L. annua
学名
Lunaria annua L.
シノニム
和名
ゴウダソウ、ルナリア、ギンセンソウ、ギンカソウ
英名
Annual honesty, Honesty
ゴウダソウの果実

ゴウダソウ(合田草、学名Lunaria annua)は、アブラナ科ゴウダソウ属植物。別名はルナリア[出典 1]ギンセンソウ[出典 2]ギンカソウ[9][10]

カール・フォン・リンネの著書『植物の種』(1753年)に記載された植物の一つでもある[11]

特徴[編集]

越年生の植物である[9]一年生植物[3][5]ないし二年生植物[出典 3]にして、宿根草でもある[2]。全体に荒い毛が生える[3][7]

は直立で、高さは30-100センチメートル[3][注釈 1]になる。日本では東京都以南の暖地で30センチメートル程度、東北地方で60 - 90センチメートルになる[7]

は卵型で歯牙縁となり[3][9]、下部の葉は長い柄を持つ[9]。上部の葉は無柄で[出典 4]、両面に白い伏毛が生える[6]互生葉序をとる[6]

は4月から6月にかけて咲き、総状花序となる[3]。通常、色は紅紫色である[出典 5]が、白色[出典 6]青色になる個体もある[2]。花弁は4枚で[5][9]1.5-2.5センチメートルである[3]。夜間に芳香がある[3](がく)は通常色を帯びる[5]

果実は2 - 7センチメートルで楕円形から円形をしている[3][8]。扁平な果実であり[6][9]、熟すと果皮が剥がれ、薄いうちわ形の隔壁だけが残る[6]。未熟な果実の果皮に脈はなく、中にある5 - 7個の種子が透けて見える[6]

種名[編集]

属名のLunariaラテン語を意味するlunaに由来し、果実の形状を月に例えたものである[2][8]。また、種小名のannuaは一年生であることを意味する[2][3]。栽培品種としては、ルナリアと呼ばれることが多い[2][4]

和名のゴウダソウ(合田草)は、1901年(明治34年)に[2]フランスから日本に本種の種子を持ち込んだ東京美術学校(現・東京芸術大学教授合田清に由来する[6][8]。別名のギンセンソウ(銀扇草)・ギンカソウ(銀貨草)は、どちらも果実の形状にちなんでいる[9]。ギンセンソウは果実が薄く銀色に輝いて見える様子を銀のに見立てたことから[8]、ギンカソウは銀貨を連想させることからの命名である[10]。ギンセンソウの名やギンカソウの名の方が一般に浸透している、とする文献もある[10]

なお、「金のなる木」と俗称されることもある[12]

分布[編集]

原産地はヨーロッパ[出典 7]イタリアからバルカン半島に自生する[3]荒地低木の多い土地、垣根沿いなどで見られる[3]。日照時間が長く、温暖で雨量の少なく乾燥した土壌(地中海性気候)を好む[4]1570年にイギリスに入り、honestyの英名を与えられている[2]。栽培種が野生化し、北アメリカにも分布する[8]。日本でも栽培種の一部が逸出し、帰化植物として[9]道端などに生育する[10]

利用[編集]

観賞用植物として栽培され[3]花壇への植栽[8]切り花に利用される[8][4]。本種は19世紀から[13]果実をドライフラワーとして利用され[出典 8]、独特の形状から愛好の対象となっている[10]。果実の付いた枝から果皮と種子を取って半透明の隔壁だけを残し、白く晒したものを「晒しルナリア」と呼び、生け花花材やドライフラワーとして用いられる[14]。これは「こばんそう」とも呼ばれる[14][注釈 2]

ドライフラワーは装飾に用いられる[5]。斑入りの葉の品種観葉植物に利用される[4]1960年代の日本ではドライフラワーはあまり利用されず生花が中心であったが、アメリカ合衆国では生花とドライフラワーが共に流通し、ドライフラワー専門店もあった[5]

栽培[編集]

日本には明治初期に渡来し[15]、観賞用に寒冷地[9]、特に北海道から東北地方にかけて栽培される[9]耐寒性には優れる一方[7]、夏季の高温多湿に弱く、この季節の定植・移植は避けるべきである[4]

播種は春または秋に行い[2][7]、発芽から8 - 12週間経過した株が5程度の低温にさらされる、すなわち春化が開花の条件となる[16]。そのため、春化を行わないと春に播種しても開花しない[2]。春化を感知するのは一般に植物の芽の頂端部の分裂組織であるが、本種の場合は分裂中の柔組織でもよい[16]。また、発芽から4 - 6週間の若い個体を低温にさらしても反応はない[16]。栽培に際しては、害虫アカダニ[15]アオムシヨトウガに注意が必要である[7]

ハーディネスゾーンは8から10[13]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 50-120センチメートルと記述している文献もある[6]
  2. ^ ただし、標準和名としてのコバンソウは、別のイネ科の植物の名前である。

出典[編集]

  1. ^ a b c d The Plant List 2021年9月28日閲覧。 による。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m 塚本(1963):77ページ
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q 林・古里 監修(1986):207ページ
  4. ^ a b c d e f g h i 小黒(2002):784ページ
  5. ^ a b c d e f g h i 宮沢(1963):451ページ
  6. ^ a b c d e f g h i j k l 長田(1979):144ページ
  7. ^ a b c d e f g h i 本田ほか 監修(1984):89ページ
  8. ^ a b c d e f g h i j 大場(1997):189ページ
  9. ^ a b c d e f g h i j k l m n 清水ほか(2001):106ページ
  10. ^ a b c d e f g 植村ほか(2015):173ページ
  11. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 653. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358674 
  12. ^ 森の歴史/金のなる木”. 森の図書室 きこりんの森. 住友林業グループ. 2016年7月25日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年7月26日閲覧。
  13. ^ a b Botanica (1999), pp. 543–544
  14. ^ a b 工藤 (1986), pp. 130–131
  15. ^ a b 原色園芸植物図鑑III (1988), p. 67
  16. ^ a b c 塚本 監修(1984):214ページ

出典(リンク)[編集]

参考文献[編集]

  • 植村修二・勝山輝男・清水矩宏・水田光雄・森田弘彦・廣田伸七・池原直樹『増補改訂 日本帰化植物写真図鑑 第2巻』全国農村教育協会、2015年10月10日、595p. ISBN 978-4-88137-185-5
  • 大場秀章(1997)"ゴウダソウ"『朝日百科 植物の世界 6 種子植物 双子葉類6』(朝日新聞社、1997年10月1日、320p. ISBN 4-02-380010-4).p.189.
  • 工藤 和彦『作例と解説 いけばな花材ハンドブック 特殊花材1 漂泊・着色素材』八坂書房、1986年。ISBN 4-89694-568-9 
  • 小黒晃(2002)"ルナリア"農文協 編『花卉園芸大百科 11 1・2年草』(農山漁村文化協会、2002年3月25日、801p. ISBN 4-540-01211-8).p.784.
  • 長田武正『日本帰化植物図鑑 第6版』北隆館、1979年11月10日、254p.
  • 清水矩宏・森田弘彦・廣田伸七『日本帰化植物写真図鑑』全国農村教育協会、2001年7月26日、554p.
  • 塚本洋太郎『原色園芸植物図鑑〔I〕 <<一・二年草編>>』保育社の原色図鑑33、保育社、1963年7月10日、176p.
  • 塚本洋太郎 監修『原色花卉園芸大事典』養賢堂、1984年12月10日、176p.
  • 林弥栄・古里和夫 監修『原色世界植物大圖鑑』北隆館、1986年4月20日、902p.
  • 本田政次・林弥栄・古里和夫 監修『原色園芸植物大圖鑑』北隆館、1984年5月20日、862p.
  • 原色園芸植物図鑑 III. コンパクト版. 9. 本田 正次,林 弥栄,古里 和夫 監修. 北隆館. (1988) 
  • 宮沢文吾『観賞植物図説 第2版』養賢堂、1963年1月5日、912p.
  • Botanica (3 ed.). KÖNEMANN. (1999). ISBN 3829030681 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]