ゲームのアクセシビリティ

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ゲームのアクセシビリティとは、年齢や障碍を持っているにかかわらず、あらゆる人々がゲームを行えるようにしていることである[1][2][3]

テーブルゲーム、ボードゲーム[編集]

視覚障碍者用のチェスボード、枠に段差が設けられ駒が枠に収まるよう凹凸や差し込み口がある。駒には突起があって、自分と相手の駒と種類を識別することができる。
視覚障害者用のチェスボード

チェス囲碁将棋などの伝統的なテーブルゲームでは古くから視覚障害者のプレーヤーも存在しており、指先で位置を特定しやすくするための用具が考案されている[4]

視覚障害者の将棋指しは江戸時代に記録が残っており、石田流を考案した石田検校天野宗歩と対局した石本検校などの実力者も現れている。

日本視覚障害者団体連合では全国視覚障害者将棋大会を主催している。

目隠し将棋目隠しチェスは、優れた実力を見せるために行われているように高い空間認識能力が要求されることや、第三者の補助が無ければ不可能なものが多いなど、ビデオゲームより対応が遅れているという指摘がなされている[5][6]。また玩具メーカーの担当者からは「健常者に比べて人口が少なく、製品の企画や開発が簡単ではない」という意見がある[7]

視覚障害者用の碁石として、「目(アイ)が見えなくても前に進め(ゴー)」との思いが込められたアイゴがある[7]。碁石に突起やマスにかみ合う溝が設けられている[8]

視覚障碍者用チェスドイツ語版は、2018年アジアパラ競技大会の競技となっている[7]

ビデオゲーム[編集]

ビデオゲームでの問題は、3つのカテゴリに分類できる[9]

  1. 感覚機能によるもの。色覚異常により、色の違いが認識しにくいなど。音声が聞き取れないなど。
  2. 身体障害によるもの。スイッチコントローラー英語版や視線で操作するアイトラッカーなどに対応できないか、それらで扱える操作量を超えるなど。
  3. 認知障害によるもの。学習障害での読み書き計算能力の制限により、ゲームの文字を認識・理解・処理できないなど。

対応するため、オーディオゲーム英語版などが開発・研究されてきた。

マイクロソフトは、2018年9月にXboxアダプティブコントローラー英語版による操作性の改善を行った。

ソニーは『The Last of Us Part II』などのアクセシビリティを考慮したタイトルを数多く発表した[10]

対戦型格闘ゲームの『ストリートファイター』シリーズはアクセシビリティを考慮していなかったが、キャラクターが向かい合うというシンプルな構図と、出した技により音が異なるという設計のため視覚障害者にもプレイしやすく、大会でも利用されていた[11]。『ストリートファイター6』ではバリアフリーのeスポーツ大会の企画運営する企業の協力により、サウンドアクセシビリティ機能が追加された[12]

ぷよぷよ』は色を判別できないとプレイが困難であると指摘されていたことから、2020年に発売された『SEGA AGES ぷよぷよ通』では背景色の明度を下げる機能や、色ではなく形状で識別できるモードが追加された[13]。2018年に発売された『ぷよぷよeスポーツ』では、『SEGA AGES ぷよぷよ通』の反響を受けアップデートにより色覚特性に合わせた4種類(3色覚、1型2色覚、2型2色覚、3型2色覚)のフィルターや、形状のパターンを複数から選択できる機能を追加した[13]

対応の内容[編集]

手話の導入、字幕の表示、読み上げ機能、ゲームスピードの調整、色調の補正などが挙げられる[10]

  • 画面に表示される情報を代わりに音声(録音音声、合成音声、効果音)で出力する[11]
  • 色で識別するオブジェクトを形状で識別できるようにする[13]

対応の表彰[編集]

The Game Awards
Video Game Accessibility Awards
ゲームのアクセシビリティを推進するアメリカの非営利団体AbleGamers英語版が2020年から開催している[14]
評価の内容は、必要な情報を得るための代替手段及びインターフェース、テキストの明瞭さ、入力数の軽減、AIによる支援、マウスやコントローラーの精度調整、他のプレイヤーによる支援、操作のリマップ機能、練習用のコンテンツ、カットシーンや苦手な要素を含むコンテンツのスキップ、プレイヤーが独自のルールを設定できるなどが評価される[15]

出典[編集]

  1. ^ SIE アクセシビリティ”. SIE.COM. 2023年3月22日閲覧。
  2. ^ PlayStation 5とPlayStation 4のアクセシビリティ機能”. PlayStation. 2023年3月22日閲覧。
  3. ^ stevewhims. “ゲームをアクセシビリティ対応にする - UWP applications”. learn.microsoft.com. マイクロソフト. 2023年3月22日閲覧。
  4. ^ 日本放送協会. “目が不自由でも楽しめる囲碁「アイゴ」普及へ 柿島光晴さんの思いとは? | NHK”. NHK首都圏ナビ. 2023年7月2日閲覧。
  5. ^ Heron, Michael James (2018年6月1日). “Meeple Centred Design: A Heuristic Toolkit for Evaluating the Accessibility of Tabletop Games” (英語). The Computer Games Journal. pp. 97–114. doi:10.1007/s40869-018-0057-8. 2023年3月22日閲覧。
  6. ^ Heron, Michael James (2018年6月1日). “Eighteen Months of Meeple Like Us: An Exploration into the State of Board Game Accessibility” (英語). The Computer Games Journal. pp. 75–95. doi:10.1007/s40869-018-0056-9. 2023年3月22日閲覧。
  7. ^ a b c 「健常者とも互角に対戦」目が不自由でも楽しめるチェスや囲碁 アジアパラ大会の競技に…でも日本では選択肢乏しく盲学校ではオセロばかり”. 47NEWS. 2024年5月8日閲覧。
  8. ^ 日本放送協会. “目が不自由でも楽しめる囲碁「アイゴ」普及へ 柿島光晴さんの思いとは?”. NHK首都圏ナビ. 2024年5月8日閲覧。
  9. ^ Yuan, Bei (2011年3月1日). “Game accessibility: a survey” (英語). Universal Access in the Information Society. pp. 81–100. doi:10.1007/s10209-010-0189-5. 2023年3月22日閲覧。
  10. ^ a b 「字幕」の進化、手話の導入、コントローラーの課題解消……変化するビデオゲームとアクセシビリティの現在”. Real Sound|リアルサウンド テック. 2023年3月22日閲覧。
  11. ^ a b 全盲のeスポーツプレイヤー苦難乗り越え繋いだ夢 「やりたいことを1つに絞れなかった先に道があった」”. ほ・とせなNEWS. 2023年3月22日閲覧。
  12. ^ author (2023年11月17日). “視覚情報に頼らない格闘ゲーム交流会「心眼PARTY 2023 powered by JEXER」参加レポート”. ePARA. 2024年1月4日閲覧。
  13. ^ a b c 「ぷよぷよ」細山田Pも飛び入り参加! 「SEGA AGES ぷよぷよ通」インタビュー 壮大な「ぷよぷよ」の歴史がいま語られる。あのアーケードの傑作がさらに手軽に遊びやすく!”. GAME Watch. インプレス (2020年1月15日). 2020年2月11日閲覧。
  14. ^ 2020 Video Game Accessibility Awards Announced” (英語). GameSpot. 2023年3月22日閲覧。
  15. ^ doope!. “優れたアクセシビリティ機能を備えたビデオゲームを選出する第2回“Video Game Accessibility Awards”の受賞作品がアナウンス、「Halo Infinite」が2部門を受賞 « doope! 国内外のゲーム情報サイト”. 2023年3月22日閲覧。

関連項目[編集]

  • Can I Play That?英語版 - 2018年に設立されたゲームのアクセシビリティに関するサイト。日本語にすると「私はあれをプレイできますか?」の意。