ウロハゼ

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ウロハゼ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : ハゼ亜目 Gobioidei
: ハゼ科 Gobiidae
亜科 : ハゼ亜科 Gobiinae
: ウロハゼ属 Glossogobius
: ウロハゼ G. olivaceus
学名
Glossogobius olivaceus
(Temminck et Schlegel, 1845)

ウロハゼ(虚鯊、洞鯊)、学名 Glossogobius olivaceus は、スズキ目ハゼ科に分類されるハゼの一種。東アジアの温暖な内湾や汽水域で見られる大型のハゼで、食用にもなる。

標準和名「ウロハゼ」は丹後地方での呼称に因む。日本での他の地方名はグズ(富山)ウログズ、ヌレ(丹後地方)オカメハゼ、カメハゼ、ナツハゼ(浜名湖)クロハゼ(浜名湖・岡山)ドヨウハゼ、カワハゼ(岡山)ゴウソ、マルハゼ、ユルハゼ(高知)など数多い。

特徴[編集]

成魚は全長20cmを超え、日本産のハゼとしては大型種である。口が大きく、下顎が上顎より前に出ていて、舌の先端が二叉する。体は緑褐色で、頬や体側に黒い大きな斑点が並ぶ。また、項部(目の後ろから第一背鰭の前にかけての部位)に黒い小斑点が散在する。

マハゼ Acanthogobius flavimanus とは外見や生態が似通っているが、ウロハゼはマハゼより太く短い体形をしていること、下顎が前に出ること、鱗が大きいこと、腹面に光沢がなく灰色を帯びることなどで区別できる。浜名湖ではウロハゼを「ナツハゼ」、マハゼを「フユハゼ」と呼んでいる。

生態[編集]

日本では新潟県茨城県以南の本州・四国・九州に分布する。南西諸島には分布しないが種子島からの記録がある。日本以外では、台湾を含む東シナ海南シナ海沿岸に分布する。ウロハゼ属 Glossogobius のうち、九州以北に分布するのはウロハゼのみである。

汽水域や内湾の砂底-砂泥底に生息し、群れなどは作らず単独で行動する。岩穴などを好む習性があり、標準和名「ウロハゼ」はここに由来するが、波打ち際近くの砂底でじっと佇んでいることもある。また高知での地方名「ユルハゼ」のユルは水門のことで、水門に集まることに由来する。肉食性で、甲殻類・多毛類・小魚など小動物を捕食する。

産卵期は夏で、小さな岩穴などを巣とする。メスは巣の天井に産卵し、産卵・受精後はオスが巣に残って孵化まで卵を保護する。

利用[編集]

岡山県など瀬戸内海沿岸地方では、ウロハゼを狙った「ハゼつぼ漁」「ハゼ箱漁」という伝統漁法がある。これは素焼きの壺や木箱をウロハゼの生息域に沈め、この中に潜りこんだウロハゼを漁獲するものである。それ以外ではマハゼやシロギスなどを狙った釣りで、外道として釣れることがある。

利用法はマハゼとほぼ同様で、唐揚げ天ぷら、刺身などで食べられる。

分類の歴史[編集]

ウロハゼの学名は1960年代まで混乱があった。また、南西諸島以南のインド太平洋熱帯域に分布する同属種フタゴハゼ Glossogobius sp.の亜種とする説もあった。

これらの説については、1966年発表の明仁親王(後の明仁上皇)の調査によって、ウロハゼとフタゴハゼが別種であることが示された。さらに過去の文献の精査によって、『日本動物誌』による Gobius olivaceus Temminck et Schlegel,1845 に先取権があり、属が変更されたGlossogobius olivaceus (Temminck et Schlegel,1845) を使用するのが妥当という見解も示された。

脚注[編集]

  1. ^ Chen, X.-Y. & Zhao, H.H. 2011. Glossogobius olivaceus. The IUCN Red List of Threatened Species 2011: e.T166144A6182819. https://dx.doi.org/10.2305/IUCN.UK.2011-2.RLTS.T166144A6182819.en. Accessed on 04 February 2024.

参考文献[編集]

関連項目[編集]