コブラ科

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コブラ科
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: 有鱗目 Squamata
亜目 : ヘビ亜目 Serpentes
下目 : 真蛇下目 Alethinophidia
階級なし : 新蛇類 Caenophidia
上科 : コブラ上科 Elapoidea
: コブラ科 Elapidae
学名
Elapidae
Boie, 1827[1]
和名
コブラ科[1]

コブラ科(コブラか、Elapidae)は、爬虫綱有鱗目に分類される特定動物

分布[編集]

アフリカ大陸オーストラリア大陸北アメリカ大陸南アメリカ大陸ユーラシア大陸南部、インドネシアスリランカ日本南西諸島)、パプアニューギニアフィリピン台湾

ウミヘビ類はインド洋太平洋[2]

形態[編集]

全長585センチメートルと、毒蛇としては世界最大種のキングコブラも含む[3]。ウミヘビ類は尾が側偏して、鰭状になる[2]

獲物に毒を注入するため特殊化した歯(毒牙)はあまり大型ではなく、上顎骨の先端に固定される[4]。毒牙は不完全な管状(溝牙)[4]。毒牙の後方に、通常の歯列がある種が多い[4]。一部の種は開口部が前を向き、筋肉で毒腺に圧力をかけることで毒液を噴出させることができる[3]

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本科の構成種が有する毒は神経毒と呼ばれる種類のものである。高い即効性を持ち、獲物となる動物の神経の放電を塞ぐことで、麻痺しびれ呼吸心臓の停止をもたらし、ひいてはに至らしめる。こうして獲物の動きを止めた後に捕食することができる。中にはタイパンのように出血毒を持つものや、ドクハキコブラのように細胞毒を持つものもいる。が咬傷を受けた場合、小動物よりは効き目は遅いが、出血毒を持つクサリヘビ科に噛まれた場合に比べると早いので、速やかに医療機関に連絡し、救急搬送を受ける必要がある。なお、この毒は成分が蛋白質で構成されている事から「そのまま口にしても単に養分として体内に吸収されてしまい害はない」ともされているが、口腔内や上部消化管にキズや出血性の潰瘍を生じていた場合、毒素が体内に取り込まれる場合があり、毒を口で吸い出す際は注意が必要である。

生態[編集]

草原、森林、海洋(ウミヘビ類)等の様々な環境に生息する。一部の種では頭部を持ち上げ、頸部の肋骨を広げることもある[5]。獲物に噛みついたまま放さずに毒を注入し続けることが多いが、タイパン類やマンバ類などのように噛みついて放した後で嗅覚で獲物を追跡したり、ブラウンスネーク類などのように噛みつきによる毒の注入と締め付けを同時に行う種もいる[6]

両生類や爬虫類を食べる種が多いが、鳥類哺乳類などを食べる種もいる[5]。ウミヘビ類は主に魚類を食べ、魚卵を専食する種もいる[5]

繁殖様式は卵生の種が多いが、オーストラリア周辺に分布する種やウミヘビ類などでは胎生の種もいる[5]

分類[編集]

伝統的な分類体系では真蛇下目 Alethinophidia のナミヘビ上科 Colubroidea に含まれていたが[7][8]、分子系統解析に基づく体系では従来のナミヘビ上科が新蛇下目 Caenophidia とされ[7][9]、本科はイエヘビ科などとともにコブラ上科 Elapoidea に分割された[9][10]

分類・和名は田原(2020)による[11]

コブラ亜科 Elapinae[編集]

ウミヘビ亜科(広義)[編集]

ウミヘビ亜科 Hydrophiinae には、東南アジアからオーストラリアに分布する地上棲種と、インド太平洋に分布する海棲種が含まれる。伝統的な分類では後者のみがウミヘビ亜科、またはウミヘビ科とされていた。卵生種と卵胎生種がおり、海棲のウミヘビは卵胎生種から進化したと考えられている[12]。しかしエラブウミヘビ属は例外的に卵生である。卵胎生種はほぼ全種がオーストラリア固有である[12]。この群の特徴として、口を開けた時に口蓋翼状骨に対して立ち上がらない (Palatine dragger) ことが挙げられる[13]。エラブウミヘビ属はエラブウミヘビ亜科 Laticaudinae、地上棲種はタイパン亜科 Oxyuraninae として分けられていたが、分子系統解析の結果からタイパン亜科が側系統群であることが分かり、ウミヘビ亜科に含まれるようになった[7]

ウミヘビ亜科(狭義)
70種ほどからなるグループで、水棲生活に適応している。

人間との関係[編集]

日本では2020年の時点で科単位で特定動物に指定されており、2019年6月には愛玩目的での飼育が禁止された(2020年6月に施行)[14]

日本国外では食用としても認知されており、特に心臓は珍味とされ、特に捌いてすぐの心臓が旨いという。だが少なくとも日本国内ではゲテモノ食材という評価が一般的である。

脚注[編集]

  1. ^ a b 日本爬虫両棲類学会 (2024) 日本産爬虫両生類標準和名リスト(2024年3月11日版). http://herpetology.jp/wamei/ (2024年5月31日アクセス).
  2. ^ a b 高橋寛 「陸から海への適応 ウミヘビ」『動物たちの地球 両生類・爬虫類 10 コブラ・マムシほか』第5巻 106号、朝日新聞社、1993年、298-300頁。
  3. ^ a b 森哲 「特異な威嚇行動と防御行動 コブラ、サンゴヘビ」『動物たちの地球 両生類・爬虫類 10 コブラ・マムシほか』第5巻 106号、朝日新聞社、1993年、292-295頁。
  4. ^ a b c 鳥羽道久 「全世界に分布する毒ヘビ類は、獲物を鎮圧するために毒と注毒機構を発達させてきた。」『動物たちの地球 両生類・爬虫類 10 コブラ・マムシほか』第5巻 106号、朝日新聞社、1993年、290-291頁。
  5. ^ a b c d Herndon G. Dowling 「ヘビ類」鳥羽道久訳『動物大百科 12 両生・爬虫類』深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編、平凡社、1986年、126-143頁。
  6. ^ 鳥羽道久 「最も強力な毒を持つ タイパン亜科」『動物たちの地球 両生類・爬虫類 10 コブラ・マムシほか』第5巻 106号、朝日新聞社、1993年、296-297頁。
  7. ^ a b c 疋田努「2007年以降の日本産爬虫類の分類の変遷について」『爬虫両棲類学会報』第2013巻第2号、日本爬虫両棲類学会、2013年、141-155頁。 
  8. ^ 松井正文「爬虫綱分類表」、松井正文 編『バイオディバーシティ・シリーズ 7 脊椎動物の多様性と系統』岩槻邦男・馬渡峻輔 監修、裳華房、2006年、343–345頁。
  9. ^ a b Nicolas Vidal; Anne-Sophie Delmas; Patrick David; Corinne Cruaud; Arnaud Couloux; S. Blair Hedges, “The phylogeny and classification of caenophidian snakes inferred from seven nuclear protein-coding genes,” Comptes Rendus. Biologies, Volume 330, No. 2, Académie des sciences, 2007, Pages 182–187.
  10. ^ 中井穂瑞領「本書で紹介するヘビの分類」『ヘビ大図鑑 ナミヘビ上科、他編:分類ほか改良品種と生態・飼育・繁殖を解説』川添宣広 写真・編、海老沼剛 和名監修、誠文堂新光社、2021年、14–15頁。 
  11. ^ 田原義太慶『毒ヘビ全書』グラフィック社、2020年2月25日、313-321頁。ISBN 978-4-7661-3313-4 
  12. ^ a b c d e J. Scott Keogh, Richard Shine, Steve Donnellan (1998). “Phylogenetic Relationships of Terrestrial Australo-Papuan Elapid Snakes (Subfamily Hydrophiinae) Based on Cytochrome b and 16S rRNA Sequences”. MOLECULAR PHYLOGENETICS AND EVOLUTION 10 (1): 67–81. doi:10.1006/mpev.1997.0471. 
  13. ^ J. Scott Keogh (1998). “Molecular phylogeny of elapid snakes and a consideration of their biogeographic history”. Biological Journal of the Linnean Society 63 (2): 177–203. doi:10.1111/j.1095-8312.1998.tb01513.x. 
  14. ^ 特定動物リスト (動物の愛護と適切な管理)環境省・2020年10月4日に利用)

関連項目[編集]

参考文献[編集]

  • 『小学館の学習百科図鑑36 両生・はちゅう類』、小学館、1982年、117-120頁。
  • 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社、1984年、145頁。
  • クリス・マティソン 『ヘビ大図鑑』、森光社、2000年、178-183頁。
  • 『爬虫類・両生類800図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、130-133頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 両生類はちゅう類』、小学館、2004年、129-133頁。