Synspective

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株式会社Synspective
業種 人工衛星開発/DaaSソリューションプロバイダ
設立 2018年2月22日
創業者 新井元行
本社 〒135-0022 江東区三好 3-10-3、
東京都
日本
主要人物
新井元行(代表取締役)
製品 小型SAR衛星StriXシリーズ、衛星データ、衛星データを利用したソリューションサービス
純資産 109億16百万円(資本剰余金含む)
子会社 Synspective SG Pte. Ltd.(シンガポール現地法人)
ウェブサイト https://synspective.com/jp

株式会社Synspective(シンスペクティブ)は小型SAR衛星を開発、運用し、衛星データを提供するとともに、衛星データを活用したソリューションサービスを提供する日本の企業。

内閣府「ImPACT」プログラムの成果を応用した独⾃の⼩型合成開口レーダー(SAR)衛星を開発し、観測したデータを販売している。また、衛星データとマシーンラーニングを活用した企業・政府向けのソリューションを提供している。

歴史[編集]

2018年2月創業。企業名はミッションであるSynthetic Data for Perspectiveに基づく。2019年7月には宇宙スタートアップ企業として世界最速で累計資⾦109億円を調達した。2020年12月、初の実証衛星StriX-α(ストリクス・アルファ)を打上げ、2021年2月、日本の民間企業による小型SAR衛星(100kg級)として初めて画像の取得に成功した。2030年までに30機の衛星群(コンステレーション)を構築することを目指している。

Synspectiveの衛星の特徴[編集]

Synspectiveの衛星は、政府が主導した革新的研究開発推進プログラム「ImPACT」の「オンデマンド即時観測が可能な小型合成開口レーダ衛星システム」開発事業の成果を応用した独自の小型合成開口レーダー(SAR)衛星である。SAR衛星は雲を透過するマイクロ波を使って地形や構造物を観測するため、日中・夜間や天候によらず観測が可能で、雲の下にある地表も観測が可能。雲に覆われることが多いアジアなど、光学衛星では観測が困難な地域で特に活用が見込まれる。重量は100kg級で従来の大型SAR衛星の約1/10である。

コンステレーション構想[編集]

Synspectiveは2020年代前半までに衛星6機、2020年代後半には30機のコンステレーション(衛星群)構築を目指している。低軌道を周回する30機のコンステレーションにより、世界のどの地域で災害が発生しても、2時間以内に観測することが可能になるとする(6機では24時間以内)。

StriX(ストリクス)シリーズ[編集]

2020年12月15日、初の実証機StriX-α(ストリクス・アルファ)をニュージーランドのマヒア半島にある発射場からロケット・ラボ社のエレクトロンロケットにより打ち上げた。2021年2月、日本の民間の小型SAR衛星(100kg級)として初めて画像取得に成功している。 同機は、世界初のスロットアレーアンテナ方式を採用しており、7枚の軽量・薄型アンテナパネルで構成されている。衛星打ち上げ時は折りたたまれて70センチ角の非常にコンパクトなサイズで、小型ロケットのフェアリングにも収まるサイズになる。衛星が周回軌道に載ったあと、自動的に約5メートルのアンテナとして展開する。地上分解能は1〜3mで観測幅は10〜30km、1回の撮影でおよそ2,000kmまで撮影可能で、単偏波(VV)データを取得する。

観測モード[編集]

Strixシリーズでは、ストリップマップ(Stripmap)モードとスライディングスポットライト(Sliding Spotlight)モードの2種類の観測モードのデータを提供するとしている。

ストリップマップモード[編集]

衛星搭載レーダーが送信した電磁パルスにより、楕円形の領域が照射される。ストリップマップモードでは、レーダーアンテナは横方向に向き、パルスの送信方向が衛星の軌道に直交する方向で一定に維持され、照射領域が衛星の飛行とともに地表を移動することで、衛星の軌道に対して平行に、多数の画像を連続して撮像することができる。

スライディングスポットライトモード[編集]

スライディングスポットライトモードでは、パルスの送信方向を衛星の飛行方向と逆向きに振ることで、照射領域がストリップマップモードよりもゆっくりと地表を移動する。これにより、ストリップマップモードよりも高解像度の画像を得る。

ソリューションサービス[編集]

衛星データの提供に加え、Synspectiveは顧客の課題にあわせ、衛星データを他のデータと組み合わせたLand Displacement MonitoringとFlood Damage Assessmentなどのソリューションの提供も行っている。

Land Displacement Monitoring[編集]

Land Displacement Monitoringは衛星データを用いて広域の地盤変動を解析し、その結果を提供するソリューションサービス。地盤沈下や土砂災害のリスクを把握し、災害時に人が立ち入りにくい場所での現地調査や、土地のリスクマネージメントに関わる分野での活用が可能。

Flood Damage Assessment[編集]

Flood Damage Assessmentは災害対応のための浸水被害(浸水域、浸水深、被害道路、被害建物)を評価するソリューションサービス。発災時に、広範な地域の被害状況が一次情報に基づいて把握を可能にし、迅速な対応に資することを目的としたもの。SAR衛星の天候に左右されない地上観測の特性を活かし、広範な地域の浸水被害の有無を迅速に把握することや、道路・建物などの施設への影響範囲を特定が可能。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]