2010年ラダック豪雨

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2010年ラダック豪雨
日付2010年10月6日
場所レーラダック地域内の数多くの村
死者少なくとも255人が死亡、29人が行方不明[1]
物的損害13億3000万インド・ルピー[1]

2010年ラダック豪雨(2010ねんらだっくごうう)は、2010年8月6日にインド最北端のラダック連邦直轄領の広範囲で発生した豪雨災害である。この災害によって、この地域の主要都市であるレーを筆頭とする71の町と村が鉄砲水土砂崩れ等の被害を受け[2][3][4]、報じられるところによると少なくとも外国人観光客6人を含む[5]255人が死亡した[5]。また、一時は200人程度が行方不明となり[6]、建物やインフラが壊滅的な被害を受けたために数千人が住居を失った[7]。全体として、9000人程度がこの災害の直接的影響を受けることとなった。

背景[編集]

レーは、ラダック連邦直轄領最大の都市であり、標高約3,500メートルの高原に位置する。例年の降雨量は非常に少なく、年間100ミリメートル程度である[2][8]。また、この地域は「高地の寒冷砂漠」と評され、豪雨は稀であった[9]。レーにおける8月の平均降雨量は15.4ミリメートルで、月内の24時間雨量の最高記録は1933年8月22日に観測された51.3ミリメートルであった。

良好な自然環境は観光資源になっており[4]、特に8月は、数千人の観光客が西方からやってくる書き入れ時となっている。レーには、年間約60,000人の外国人観光客と150,000人の国内観光客がやってきている[10]

洪水と被害[編集]

豪雨に見舞われた後のレー飛行場の状態。滑走路やその他飛行場の運営に必要な箇所についてはすでに片付けられている。

大雨は、2010年8月6日午前0時 (IST) の真夜中に30分程度降った。この雨は局所的なもので、インダス川と平行な長さ6キロメートル・幅数キロメートルの範囲に集中した。この中にはレーやその他複数の集落が含まれていた[2]。この地域では、わずか30分に75ミリメートル程度と見積もられる雨が降った。これは、この地域の一年間の雨量にも匹敵する量であった。さらに局所的に250ミリメートルにもなる雨も降ったとされる[11]

一方で、この範囲外ではそれほど雨は降らなかった。レー飛行場の観測所では、この夜の総雨量はわずか12.8ミリメートルしか観測しなかった[12]

雨は夜に降ったことから、住民や観光客らは驚きを隠せなかった[13]。レーでは、病院、バスターミナル、ラジオの送信所、電話交換機、携帯電話の電波塔など、多くの建物が破壊された。バーラト・サンチャール・ニガム社英語版の通信網は完全に破壊されたが、インド軍の復旧活動によって復旧した[8]。バス乗り場も壊滅的な被害を受け、1.5キロメートル以上泥で押し流されたバス車体もあった[9]。レー飛行場にも損傷が見られたが、翌日から救援飛行が行えるようにするため、速やかに修復された。町郊外にあるチョグラムサル村は特にひどい被害を受けた[4]

近隣の谷でも壊滅的な被害が発生し、多数の死傷者を出してしまった。この地域は降水帯の真下にあり、多数の小さな村が点在していた。ただし、災害の種類はレーであったような洪水とは異なり、岸壁からの土石流であった[2]。特にひどい被害が出た村として、Sobu, Phyang, Nimu, Nyeh, Basgoがあり、合わせて71村1500棟の家屋が被害を受けたとされる[14]

レー町内に滞在していた1000人の外国人を含む、3000人程度の観光客全員が無事であった、と地元当局は発表した[15]。一方、報じられるところによれば、町外で6人の外国人観光客が死亡した。また、行政文書によると、少なくとも255人の地元住民が死亡し、さらに29人が行方不明になっている。実際の犠牲者は、かなり高くなる可能性が指摘されており、600人以上ではないかとも言われている[2][16]

出典[編集]

  1. ^ a b Archived copy”. 2012年3月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月18日閲覧。
  2. ^ a b c d e Hobley, D.E.J., et al., 2012, Reconstruction of a major storm event from its geomorphic signature: The Ladakh floods, 6 August 2010, Geology, v. 40, p. 483-486, doi:10.1130/G32935.1
  3. ^ Bodeen, Christopher (2010年8月8日). “Asia flooding plunges millions into misery”. Associated Press. オリジナルの2010年9月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20100904101109/https://www.google.com/hostednews/ap/article/ALeqM5jLQ5AssQ1MzPfWcFQRV8ZeJhjctQD9HFBA400 2010年8月8日閲覧。 
  4. ^ a b c Polgreen (2010年8月6日). “Mudslides Kill 125 in Kashmir”. The New York Times. 2015年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月6日閲覧。
  5. ^ a b “137 dead, more than 400 missing in Indian Kashmir floods”. Monsters and Critics. (2010年8月8日). オリジナルの2013年1月4日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/20130104035211/http://news.monstersandcritics.com/southasia/news/article_1576204.php/137-dead-more-than-400-missing-in-Indian-Kashmir-floods 2010年8月8日閲覧。 
  6. ^ Wivell, David (2010年8月10日). “Man trapped for 50 hours after landslides in China”. Bloomberg Businessweek. http://www.businessweek.com/ap/financialnews/D9HGGI180.htm 2010年8月10日閲覧。 
  7. ^ Flash floods kill dozens in India”. BBC (2010年8月6日). 2010年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月6日閲覧。
  8. ^ a b Peerzada (2010年8月6日). “Flash floods kill 114 in India-controlled Kashmir”. Xinhua News Agency. 2010年8月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月6日閲覧。
  9. ^ a b Hussain (2010年8月6日). “Flash floods kill 103 in Indian-held Kashmir”. Associated Press. 2010年8月6日閲覧。
  10. ^ Archived copy”. 2013年7月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月18日閲覧。
  11. ^ Warning from Leh, 15 September 2010. Down To Earth (url:http://www.downtoearth.org.in/node/1872. Accessed 30 January 2011.)
  12. ^ "Cloudburst over Leh", report of the Indian Meteorological Department, (url:http://www.imd.gov.in/doc/cloud-burst-over-leh.pdf Archived 15 March 2012 at the Wayback Machine.). Accessed 30 January 2011.
  13. ^ Ahmad (2010年8月6日). “Death toll from Kashmir flooding rises to 112”. CNN. 2010年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月6日閲覧。
  14. ^ "Sedimentary and Geomorphic Signatures of a Cloud burst and triggered flash floods in the Indus valley of Ladakh Himalaya". SSG S.J. Sangode, D.C. Meshram, S. Rawat, Y. Kulkarni, D.M. Chate. Himalayan Geology 38 (1), 12-29.
  15. ^ All 3,000 tourists in Leh safe”. Hindustan Times (2010年8月6日). 2012年7月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年8月6日閲覧。
  16. ^ Archived copy”. 2016年3月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月22日閲覧。

外部リンク[編集]