間接訴権

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間接訴権(かんせつそけん、: Action indirecte)は、フランス法に由来する権利の概念で、直接訴権(Action directe)の対概念[1][2]。代位訴権(Action oblique)ともいう[1]

機能[編集]

間接訴権(代位訴権)はフランス民法及びその流れをくむ民法にみられる制度で、ドイツ民法やスイス民法にはない概念である[1][3]

債権の保全が必要な場合、ドイツ法などでは民事訴訟法に差押え・取立ての制度が設けられ、実体法上にこのような制度を置かなくても十分対応できた[3]。しかし、フランス法では強制執行や保全執行の制度が不備であり、これを補完するために債務者が持つ権利を代わって行使する間接訴権(代位訴権)の制度が設けられた[1]。日本の民法の債権者代位権の制度もフランスの間接訴権(代位訴権)に由来するが、日本の強制執行制度はドイツ法を継受しており債権者代位権を認める実益は少ないとされる[1]。しかし、日本でも強制執行のためには債務名義が必要で保存行為のように債権の保全に急を要する場合があり、形成権のように強制執行の対象となり得ないような権利もあることから特にこのような場合に債権者代位権が機能する意味があるとされる[4]

フランスではかつて間接訴権の行使について裁判上行使しなければならないか非常に争いがあったが、フランスの通説・判例は間接訴権の行使は裁判上でなくても行使できるとしている[2]。なお、日本の民法に定められている債権者代位権は訴訟法上の権利ではなくあくまでも実体法上の権利である[5]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e 林良平、石田喜久夫、高木多喜男 『現代法律学全集 8 債権総論 改訂版』青林書院新社、1982年、144頁
  2. ^ a b 前田達明 『口述債権総論 第3版』成文堂、1993年、251頁
  3. ^ a b 前田達明 『口述債権総論 第3版』成文堂、1993年、252頁
  4. ^ 林良平、石田喜久夫、高木多喜男 『現代法律学全集 8 債権総論 改訂版』青林書院新社、1982年、144-145頁
  5. ^ 林良平、石田喜久夫、高木多喜男 『現代法律学全集 8 債権総論 改訂版』青林書院新社、1982年、145頁