間々田孝夫

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間々田 孝夫ままだ たかお
人物情報
生誕 (1952-02-01) 1952年2月1日(72歳)
富山県
国籍 日本の旗 日本
学問
研究分野 消費社会研究
消費文化論
研究機関 立教大学
金沢大学
博士課程指導教員 富永健一
主な受賞歴 経済社会学会「高田保馬」賞
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間々田 孝夫(ままだ たかお、1952年2月1日 - )は、日本の社会学者立教大学名誉教授。1952年富山県に生まれ、1960年東京に転居。1970年都立西高から、東京大学文学部社会学科・大学院社会学研究科へ進む。1981年金沢大学専任講師・助教授、立教大学助教授・教授を歴任。専門は、消費社会論、消費文化論、経済社会学生活意識研究、社会階層論など[1][2]

主たる研究分野は、消費社会、消費文化。日本の社会学界では、この分野の代表的研究者と目されている[3][4]。理論研究では、これまで過度に「記号消費」に集中していた消費社会研究を相対化し、多元的な消費文化の並立を強調する「消費三相理論」を構築した[5][6]。また悲観主義的な消費社会観を排し、これからの消費社会の理念となりうる「第三の消費文化」の発展を主張している[7][8]。他方では、長い社会調査の経験を活かし、門下生を含む中堅研究者のグループ「グローバル消費文化研究会」(通称GLOCON)の代表者として大規模な統計的社会調査を続け、研究成果を蓄積している[9]。2020年、経済社会学会高田保馬賞受賞[10]

経歴[編集]

立教大学在職時は社会学研究科博士後期課程主任、現代文化学科長、社会学部長(兼社会学研究科委員長)などを歴任[11]

学説[編集]

1980年代以降注目を浴びた消費社会の研究は、「記号的消費」の概念一色に塗りつぶされ、消費文化=記号としての消費が席巻する文化との認識が常識化した。それに対して間々田は、実証主義行動分析の立場に基づき[12]、記号的消費を批判的にとらえようとする意思を示してきた[13]。その後、消費社会に見られる「脱物質主義」の傾向を指摘し[14][15]、また記号的消費は消費の一部に過ぎず、他の様々な消費のありようを考慮することなしに消費の動態を把捉することは不可能であるとの立場をとった[16][17]。そしてこのような「多元的消費観」の立場[18]を具体化した「消費三相理論」において、合理化と量的拡大を進める「第一の消費文化」、見せびらかしの消費(誇示的消費)や差異化を自己目的化した消費を求める「第二の消費文化」、消費に精神の充足と社会的配慮を求める「第三の消費文化」の三つの消費文化という三つの類型を設定した[19]。現実の消費社会は、この三つの消費文化とさらには消費文化自体を否定的にとらえる「ゼロの消費文化」の間の複雑な相互関連によって、成り立つものとした[20]

このうち「第三の消費文化」は、現代消費社会に見られる、実質的な楽しみや満足を求める傾向(文化的消費と呼ばれる)、環境や発展途上国への負荷を避けようとするさまざまな傾向(社会的消費と呼ばれる)という2原則を総合するものであり、文化的消費と社会的消費は十分両立すると主張されている。第三の消費文化は現在最も活発に追求されているもので、21世紀の消費社会の理念となりうるものと位置付けられている[21]

以上の学説は、消費社会論=記号的消費論ととらえられてきたこの分野の常識をくつがえすものであり、陳腐化し沈滞した消費社会研究に新たな視点と分析枠組を与えたものと考えられる[22]

学会活動[編集]

社会活動[編集]

  • 郵政省郵便貯金に関する調査研究会会員(初期は研究員。1976年 - 1994年)
  • 郵政省簡易保険・郵便年金に関する調査研究会会員(1982年 - 1995年)
  • 中小企業事業団需要動向調査食生活編総合検討会委員(1998年 - 2002年)
  • 家庭裁判所調査官試験委員会臨時委員(2001年 - 2006年)
  • 簡易保険文化財団理事(2001年 - 2006年)
  • 郵政総合職採用試験専門委員(2003年 - 2006年)
  • 簡易裁判所判事選考委員会委員(2003年 - 2017年)[23]

著書[編集]

単著[編集]

  • 『行動理論の再構成――心理主義と客観主義を超えて』(福村出版、1991年)[2]
  • 『消費社会論』(有斐閣、2000年)[2][24]
  • 『消費社会のゆくえ――記号消費と脱物質主義』(有斐閣、2005年)[2][24]
  • 『第三の消費文化論――モダンでもポストモダンでもなく』(ミネルヴァ書房、2007年)[2][24]
  • 『21世紀の消費――無謀、絶望、そして希望』(ミネルヴァ書房、2016年)[2][23][24]

編著[編集]

  • 『現代日本の階層意識』(1995年SSM全国調査報告書第6巻)(文部省科学研究費特別推進研究成果報告書、1998年)
  • 『消費社会の新潮流――ソーシャルな視点 リスクへの対応』(立教大学出版会、2015年)[2]

共著[編集]

共編著[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 『経済社会を考える』共著 放送大学教育振興会 2019年 著者紹介欄参照
  2. ^ a b c d e f g h i j マイポータル”. researchmap. 間々田 孝夫 (Takao Mamada). 2024年4月8日閲覧。
  3. ^ 橋本努著『ロスト欲望社会-消費社会の倫理と文化はどこへ向かうのか』勁草書房 2021.6. pp.8-11, p.255
  4. ^ 小林大祐「書評 間々田孝夫 編『消費社会の新潮流――ソーシャルな視点,リスクへの対応』」『経済社会学会年報』第38巻、経済社会学会、2016年、281-283頁、CRID 1390006065655381120doi:10.15081/soes.38.0_281ISSN 0918-31162024年4月23日閲覧 
  5. ^ 青木幸弘 2017, p. 123-134.
  6. ^ 間々田 2016, pp. 293–359.
  7. ^ 今田高俊「間々田孝夫著『第三の消費文化論――モダンでもポストモダンでもなく』」『社会学評論』第60巻第2号、日本社会学会、2009年、299-300頁、CRID 1390282679271346816doi:10.4057/jsr.60.299ISSN 0021-54142024年4月23日閲覧 
  8. ^ 間々田 2016, pp. 461–501.
  9. ^ 間々田 2015, pp. 165–167.
  10. ^ 経済社会学会ニューズレター69号 2021年 p.9
  11. ^ a b 応用社会学研究 2018, p. 295.
  12. ^ 間々田 1991, pp. 59–100.
  13. ^ 間々田 2000, pp. 157–190.
  14. ^ 間々田 2005, pp. 150–266.
  15. ^ 間々田 2007, pp. 209–276.
  16. ^ 間々田 2007, pp. 209–219.
  17. ^ 間々田 et al. 2021, pp. 103–134.
  18. ^ 間々田 2016, pp. 461–477.
  19. ^ 青木幸弘 2017, p. 208-209.
  20. ^ 間々田 2016, pp. 299–317.
  21. ^ 間々田 2016, pp. 478–496.
  22. ^ 青木幸弘 2017、坂井素思「生活経済学研究」生活経済学会 No.45(2017.3)
  23. ^ a b c 応用社会学研究 2018, p. 296.
  24. ^ a b c d e f 間々田 孝夫”. Webcat Plus. 2024年4月10日閲覧。

参考文献[編集]

  • 間々田孝夫『行動理論の再構成』福村出版、1991年10月。ISBN 4571410255 
  • 間々田孝夫『消費社会論』有斐閣〈有斐閣コンパクト〉、2000年9月。ISBN 4641076316 
  • 間々田孝夫『消費社会のゆくえ』有斐閣、2005年12月。ISBN 464117315X 
  • 間々田孝夫『第三の消費文化論』ミネルヴァ書房〈叢書・現代社会のフロンティア; 11〉、2007年12月。ISBN 9784623049899 
  • 間々田孝夫 編『消費社会の新潮流』立教大学出版会、2015年3月。ISBN 9784901988278 
  • 間々田孝夫『21世紀の消費』ミネルヴァ書房、2016年2月。ISBN 9784623075393 
  • 「間々田孝夫先生略年譜」(PDF)『応用社会学研究』60号、立教大学社会学部、2018年3月23日、295-302頁、doi:10.14992/00016309 
  • 間々田孝夫、藤岡真之、水原俊博、寺島拓幸『新・消費社会論』有斐閣、2021年4月。ISBN 9784641174610 
  • 青木幸弘「書評 21 世紀の消費」『消費者行動研究』第23巻第2号、日本消費者行動研究学会、2017年、2_123-2_134、CRID 1390569382247572352doi:10.11194/acs.23.2_123ISSN 1346-98512024年4月23日閲覧 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]