第53回東京盃

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第53回東京盃(だい53かい とうきょうはい)は、2019年10月2日大井競馬場で施行された地方競馬重賞競走ダートグレード競走 外回り1200m, JpnII)である。

コパノキッキングが優勝。優勝騎手の藤田菜七子が初の重賞勝利を果たし、JRA所属の女性騎手として史上初の重賞勝利[1]、並びに日本の女性騎手として初めてダートグレード競走勝利[2]を記録した。

レース施行前の状況[編集]

各馬の状況[編集]

日本中央競馬会 (JRA)所属[編集]

所属 馬名 前走 実績 出典
月日 開催 レース名 着順 レース名 着順
栗東 グランドボヌール 8.14 佐賀 JpnIII サマーチャンピオン 1着 GIII 中京記念 5着 [3]
コパノキッキング 8.12 盛岡 JpnIII クラスターカップ 3着 GI フェブラリーステークス 5着 [4]
サクセスエナジー 9.12 浦和 JpnIII テレ玉杯オーバルスプリント 5着 JpnII さきたま杯 1着 [5]
ニホンピロタイド 4.13 阪神 1600万下 陽春ステークス 1着 GIII きさらぎ賞 10着 [6]
ヒザクリゲ 8.14 佐賀 JpnIII サマーチャンピオン 2着 [7]

JRA所属の競走馬は5頭が出走した。

断然の注目を集めたのは、藤田菜七子を鞍上に配するコパノキッキングが同騎手に初の重賞勝利をもたらせるか否かであった。2018年のカペラステークス柴田大知で、続く2019年根岸ステークスオイシン・マーフィーで制したコパノキッキングは、GI・フェブラリーステークスで藤田とコンビを組み5着となった。前走のクラスターカップは岩田康誠武豊とベテラン勢の前に3着[8]に敗れたが、秋の大目標JBCスプリントの前哨戦も引き続き藤田とのコンビが継続となった。

藤田 - コパノキッキングコンビが注目を集めるなかで他のJRA勢はやや小粒となり、さきたま杯かきつばた記念黒船賞で重賞3勝を記録しているサクセスエナジー、前走サマーチャンピオンで未勝利戦以来のダート替わりで重賞初制覇を挙げたグランドボヌールを含めた3頭が重賞馬。残る2頭はオープンに昇級したばかりのニホンピロタイドと、オープン昇級2戦目、前走サマーチャンピオンで2着となったヒザクリゲが出走した。

地方競馬所属[編集]

所属 馬名 前走 実績 出典
月日 開催 格・条件 レース名 着順 格・条件 レース名 着順
浦和 ブルドッグボス 9.12 浦和 JpnIII テレ玉杯オーバルスプリント 6着 JpnIII クラスターカップ 1着 [9]
大井 イノデライト 9.5 川崎 B1下特 第52回伊勢原観光道灌まつり開催記念 1着
エイシンユニコーン 9.18 大井 B2 (一般戦) 14着 B2 紅梅賞 1着
ゴーディー 9.19 大井 OP マイルグランプリトライアル 14着 SIII サンタアニタトロフィー 1着
ショコラブラン 8.12 盛岡 JpnIII クラスターカップ 6着 JpnIII 北海道スプリントカップ 2着
ポッドギル 6.25 大井 SII 優駿スプリント 4着 SII ユングフラウ賞 1着
マイネルルークス 9.19 大井 B1下特 爽秋賞 14着 B1B2 SEGAスターホース 1着
マッチレスヒーロー 4.10 大井 JpnIII 東京スプリント 6着 OP コーラルステークス 2着
クルセイズスピリツ 8.28 大井 SIII アフター5スター賞 8着 SII 優駿スプリント 1着
船橋 キャンドルグラス 8.28 大井 SIII アフター5スター賞 2着 SIII フジノウェーブ記念 2着

地方競馬所属の競走馬は全頭南関東組で、地元大井勢が8頭の他浦和船橋から各1頭出走した。

NARグランプリ年度代表馬のキタサンミカヅキ不在の中、地方勢の総大将格は10頭の中で実績最右翼の浦和のブルドッグボス。2017年のクラスターカップを制している他、JRA所属時代にオープンを3勝しており、JBCスプリントでも3着に好走している。7歳となった今年は夏場に道営に移籍し北海道・東北を転戦[10]。浦和に戻ってきた前走のテレ玉杯オーバルスプリントは6着と、実に1年半もの間勝利から遠ざかっていた。

これに続くのが、重賞であと一歩というレースが続く船橋のキャンドルグラス。前走アフター5スター賞でキタサンミカヅキの2着に好走した際の赤岡修次とのコンビ継続もあって、単勝オッズではブルドッグボスや中央馬ニホンピロタイドを上回る地方馬1番人気(全体5番人気)に支持された。北海道スプリントカップでニシケンモノノフから4馬身離された2着になった経験を持つショコラブランや優駿スプリントに勝利したクルセイズスピリツ、アングロアラブの血を引く2012年と2017年のサンタアニタトロフィーを2勝している11歳の大ベテラン馬ゴーディーらも集まった。

出走馬と枠順[編集]

枠番 馬番 競走馬名 斤量 騎手 調教師 単勝
所属 馬名 所属 氏名 所属 氏名 オッズ 人気
1 1 JRA ニホンピロタイド 4 56 JRA 幸英明 JRA 大橋勇樹 16.3 6
2 2 JRA コパノキッキング 4 56 JRA 藤田菜七子 JRA 村山明 1.5 1
3 大井 ポッドギル 3 52 大井 笹川翼 大井 鈴木啓之 335 11
3 4 大井 ショコラブラン 牡7 56 金沢 吉原寛人 大井 藤田輝信 45.6 8
5 大井 イノデライト 牡6 56 船橋 張田昴 大井 佐宗応和 489 12
4 6 大井 マッチレスヒーロー 牡8 56 大井 的場文男 大井 橋本和馬 304 9
7 船橋 キャンドルグラス 牡8 56 高知 赤岡修次 船橋 川島正一 14.1 5
5 8 大井 エイシンユニコーン 牡5 56 大井 東原悠善 大井 久保田信之 775 13
9 JRA ヒザクリゲ 牝4 54 JRA 横山典弘 JRA 牧浦充徳 5.3 2
6 10 大井 マイネルルークス 牡9 56 大井 松崎正泰 大井 久保田信之 833 14
11 JRA サクセスエナジー 牡5 57 JRA 松山弘平 JRA 北出成人 11.2 4
7 12 浦和 ブルドッグボス 牡7 56 大井 御神本訓史 浦和 小久保智 38.6 7
13 JRA グランドボヌール 牡5 56 JRA 和田竜二 JRA 鈴木孝志 7.3 3
8 14 大井 クルセイズスピリツ 牡4 56 川崎 山崎誠士 大井 荒井朋弘 326 10
15 大井 ゴーディー 牡11 56 大井 安藤洋一 大井 赤嶺本浩 891 15

レース結果[編集]

レース内容[編集]

スタート直後から、ポッドギルやキャンドルグラス、クルセイズスピリツ、コパノキッキングがハナを主張、しかしポッドギルとキャンドルグラスが控えて、クルセイズスピリツとコパノキッキングがハナ争いし、第3コーナーを回る時にはコパノキッキングがハナを奪取した。後方ではグランドボヌールが7番手、ブルドッグボスが8番手に位置した。各馬最終コーナー入り口には追い出しはじめ、先頭のコパノキッキングの後方2馬身離れた2番手にサクセスエナジー、ショコラブランは3番手、ブルドッグボスは7番手から最後の直線に入った。後方の馬が追い込みを開始したものの、先頭のコパノキッキングが差を広げて決勝線では後方に4馬身広げて1着となった。その0.8秒離れたのちに後方から追いこんだブルドッグボスが2着に入った。

レース結果[編集]

着順 枠番 馬番 所属 競走馬名 タイム 着差 人気 オッズ
1着 2 2 JRA栗東 コパノキッキング 1:10.7 1 1.5
2着 7 12 浦和 ブルドッグボス 1:11.5 4 7 38.6
3着 6 11 JRA栗東 サクセスエナジー 1:11.6 3/4 4 11.2
4着 3 4 大井 ショコラブラン 1:11.8 1.1/4 8 45.6
5着 4 7 船橋 キャンドルグラス 1:11.9 クビ 5 14.1
6着 1 1 JRA栗東 ニホンピロタイド 1:12.5 3 6 16.3
7着 4 6 大井 マッチレスヒーロー 1:12.6 クビ 9 304
8着 5 9 JRA栗東 ヒザクリゲ 1:13.3 3.1/2 2 5.3
9着 8 14 大井 クルセイズスピリツ 1:13.4 3/4 10 326
10着 7 13 JRA栗東 グランドボヌール 1:13.5 クビ 3 7.3
11着 8 15 大井 ゴーディー 1:13.5 クビ 15 891
12着 2 3 大井 ポッドギル 1:13.6 クビ 11 335
13着 3 5 大井 イノデライト 1:13.7 1/2 12 489
14着 5 8 大井 エイシンユニコーン 1:14.7 5 13 775
15着 6 10 大井 マイネルルークス 1:15.5 4 14 833

配当[編集]

単勝 2 150円
複勝 2 110円
7 390円
12 260円
枠連 2 - 7 420円
馬連 2 - 12 1,750円
ワイド 2 - 12 110円
2 - 11 390円
11 - 12 260円
枠単 2 → 7 540円
馬単 2 → 12 2,110円
3連複 2 - 11 - 12 2,870円
3連単 2 → 12 → 11 10,950円

エピソード[編集]

コパノキッキング[編集]

重賞は、2018年カペラステークス、2019年根岸ステークスに続いて3勝目。

藤田菜七子[編集]

  • 重賞24度目の挑戦で、重賞初制覇。またJRA女性騎手として史上初の交流重賞制覇を果たした[1]。藤田は「大井の直線がこんなに長く感じたのは初めて。すごくホッとした気持ちと、とてもうれしい気持ちです」と振り返り、逃げたことについては「最後の最後まで迷ったが、今日のメンバーなら逃げてもいいと考えていた。未勝利、500万下の時も逃げて勝っているので、こういう馬だと決めつけないようにしていた」とした[11]。今後の展望として「たくさんの馬に乗せてもらい、勝てたはずのレースもあるので、もちろん満足していません。まだまだなので、向上心を持って乗っていきたい」とした[11]
  • 2016年4月10日福島競馬場で初勝利をした後のウィナーズサークルでの涙以来、2度目の涙を3年ぶりにウィナーズサークルにて流した。「ファンの方々から本当にたくさんの“おめでとう”をかけてもらって。それが凄くうれしくて…」と語った[1]

小林祥晃(Dr.コパ)[編集]

  • 「今日は馬も菜七子も風水的に運も良かった。だから、いつもは指示するけど『好きに乗れ』と言った。今日は100点満点です。本当に強かった。次はJBC、行っちゃおうかな」と発言した[11]

記録[編集]

  • 売上金額は10億3744万7200円となり、2018年の7億6988万9000円を更新する東京盃の売得金レコードとなった[12]
  • 開催当日の売上金額も23億5048万670円となり、1990年の22億3532万4300円を超えてレコードとなった[12]
  • 大井競馬場の入場者数は2018年比123.6%の9144人を記録した[12]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c “【大井・東京盃】菜七子、涙の重賞初V!24度目で決めた”. スポーツニッポン. https://www.sponichi.co.jp/gamble/news/2019/10/03/kiji/20191002s00004049335000c.html 2019年11月5日閲覧。 
  2. ^ “藤田菜七子騎手が重賞初V”. 西日本新聞. https://www.nishinippon.co.jp/item/o/547983/ 2019年11月5日閲覧。 
  3. ^ グランドボヌール | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2019年11月4日閲覧。
  4. ^ コパノキッキング | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2019年11月4日閲覧。
  5. ^ サクセスエナジー | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2019年11月4日閲覧。
  6. ^ ニホンピロタイド | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2019年11月4日閲覧。
  7. ^ ヒザクリゲ | 競走馬データ”. netkeiba.com. 2019年11月4日閲覧。
  8. ^ レース後コメントでは両者ともこの結果を皮肉った発言を残している。【クラスターC】岩田康「菜七子ちゃんが勝つ予定だったんですけどすいません」ヤマニンアンプリメが交流重賞連勝 【クラスターC】武豊「おじさん2人が空気読まずにすいません(笑)」ヒロシゲゴールドは菜七子に先着して2着 競馬のおはなし、2019年8月12日、2019年11月23日閲覧
  9. ^ 出走馬詳細”. nankankeiba.com. 2019年11月13日閲覧。
  10. ^ 2018年に小久保厩舎の所属馬で発生した禁止薬物検出問題を受け、小久保の調教師免許が2019年4月から2020年3月まで南関東限定に制限されていることから、クラスターカップ出走のためには他厩舎に転厩する必要があったためである。同馬は2020年2月の第37回フェブラリーステークス出走の際にも、栗東加用正厩舎に転出している。【フェブラリーS】地方の雄ブルドッグが中央食う!“1レース限定移籍”で一発に自信 - Sponichi Annex 2020年2月19日
  11. ^ a b c “【東京盃】藤田菜七子、泣いた 笑った「とてもうれしい気持ち」JRA女性騎手初の重賞制覇”. スポーツ報知. (2019年10月3日). https://hochi.news/articles/20191002-OHT1T50273.html 2019年11月5日閲覧。 
  12. ^ a b c 【大井・東京盃】10億円超えで売得金レコード大幅更新! 藤田菜七子騎手が重賞初勝利 | 競馬ニュース”. netkeiba.com. 2019年11月5日閲覧。

外部リンク[編集]