神の軍隊
神の軍隊 | |
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ဘုရားသခင်၏ တပ်မတော် | |
指導者 | ジョニー・トゥーとルーサー・トゥー |
活動期間 | 1997年 | –2006年
活動地域 |
カレン州 ミャンマー=タイ国境 |
主義 |
カレン族への利益 キリスト教過激主義 |
規模 | 500人(最大時)[1] |
関連勢力 | ビルマ学生壮士会(共闘) |
敵対勢力 |
ミャンマー連邦共和国(国家平和発展評議会) |
戦闘と戦争 |
神の軍隊[2][3](かみのぐんたい、ビルマ語: ဘုရားသခင်၏ တပ်မတော်、英語: God's Army)は、ミャンマーのキリスト教カレン系反政府武装勢力である。1997年の創立時点でおよそ10歳であった双子の兄弟、ジョニー・トゥーとルーサー・トゥーを指導者とし、カレン民族同盟(KNU)およびその軍事部門であるカレン民族解放軍(KNLA)から分派した。ミャンマー=タイ国境を拠点とし、1999年在バンコクミャンマー大使館占拠事件をはじめとするゲリラ作戦をおこなった[4][5]。
創立[編集]
神の軍隊は、ミャンマー東部のカレン族居住地域で設立された。カレン民族同盟(KNU)を筆頭とするカレン族系組織は、同組織が創立した時点ですでに、ミャンマー(ビルマ)中央政府と50年以上にわたり武力衝突を繰り返していた。1990年代初頭、ミャンマー軍は同地域に石油のパイプラインルートを確保するため、大規模な作戦を開始した[6][7]。
神の軍隊は1997年、ジョニー・トゥーとルーサー・トゥーの主導により設立された。この時点で、2人はおよそ10歳であったと推測されている。彼らの支持者には、この双子は「精霊信仰の力とキリスト教の力」を併せもつと信じている者もいた[8]。支持者の信じるところによれば、キリスト教を信仰し、民族自治を求めるゆえにカレン族を迫害していたミャンマー当局から村を守った比類なき存在であった[9]。中央政府は村々を破壊し、反抗するカレン族兵士を殺害し、何十人もの女性を強姦し、何千人もの難民をうみだしたが[9]、双子は「神の軍隊(God's Army!)」と叫んでミャンマー軍と対決し、自らの軍勢を勝利に導いたという[10]。神の軍隊の「伝説」は、既存の反政府勢力であるKNUが腐敗しており無力であると考える人びとに受け入れられた[6]。神の軍隊の構成員には自らを「Jesus Warriors」「Jesus Commandos」などと呼ぶものもいた。KNUの Padu Kwe Htoo Win は、この組織を「カセードーの神の軍隊(Kaserdoh God's Army)」と呼んでいる[11]。
活動[編集]
同組織は、ミャンマー=タイ国境山岳部の、密林地帯を拠点とした[10]。禁欲的な生活を旨とするキリスト教系ゲリラであり、性交・飲酒および牛乳・卵・豚肉を飲食することが禁じられていた。1998年時点で500人ほどの戦力を有していたと考えられているが、2000年初頭までに100~200人まで戦闘員は減少していた。多くは難民となっている自らの家族を支えるため組織から離脱したが、ほかに個人的な理由で離脱した者もいた一方で、同地域には21,000人のミャンマー軍兵士が駐屯していた[1]。1999年10月には「ビルマ学生壮士会」を名乗るグループが神の軍隊とともに、バンコクのミャンマー大使館を占拠する事件をおこした(1999年在バンコクミャンマー大使館占拠事件)。人質の安全と引き換えに、タイ政府がグループをミャンマーにある拠点に脱出させたことによって事件は解決したものの、ミャンマー政府は同事件を「純粋なテロ行為である」と非難した[12]。
2000年1月24日、神の軍隊はタイ・ラーチャブリーの病院を占拠する事件をおこした[4]。同組織は300人の患者と病院職員を人質にとり、国境地帯でのタイ軍によるカレン族武装勢力への攻撃停止と[13]、負傷者の治療を訴えた[9]。戦闘員は病院内にブービートラップをしかけ、病院を爆破すると脅迫したものの[9]、タイ当局は翌25日に国際テロ対策部隊を強行突入させ[13]、犯行グループの戦闘員10人すべてを射殺した[10]。
解散[編集]
2001年1月、トゥー兄弟は神の軍隊の構成員14人とともにタイ政府に投降した[14]。2人はタイのミャンマー難民キャンプで生活していたものの、2006年7月にはジョニー・トゥーがミャンマー軍に対する降伏を宣言した[15]。
参考文献[編集]
- ^ a b Mydans, Seth (2000年4月1日). “Burmese Rebel Chief More Boy Than Warrior”. The New York Times. オリジナルの2023年12月8日時点におけるアーカイブ。 2013年11月2日閲覧。
- ^ 「カレン族のタイ病院占拠 ミャンマー軍政との対立 国際社会にPR狙う?」『毎日新聞』、2000年1月15日、東京朝刊。
- ^ 佐々木, 研「ミャンマー・カイン州の武装勢力による現行和平プロセスへの反応」『東洋文化研究所紀要』第179巻、2021年3月26日、77-103頁。
- ^ a b Richburg, Keith B. (2000年1月24日). “Child Terrorists Hold Hundreds Hostage in Thailand”. The Washington Post. オリジナルの2023年10月14日時点におけるアーカイブ。
- ^ “God's Army -- Myanmar | Terrorist Groups | TRAC” (英語). www.trackingterrorism.org. 2018年2月23日閲覧。
- ^ a b “Two little boys”. The Guardian (London). (2000年7月27日). オリジナルの2023年10月13日時点におけるアーカイブ。 2012年1月16日閲覧. "The cameras found the students in the camp of the twins, who were nine years old at the time"
- ^ “Terrorist Organization Profile: God's Army”. National Consortium for the Study of Terrorism and Responses to Terrorism. 2013年12月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月16日閲覧。 “Johnny and Luther Htoo, twin brothers who were only nine years old when they formed the God's Army.”
- ^ Richard S. Ehrlick (2006年7月27日). “Bizarre 'God's Army' Led By Young Boys Surrenders”. Global Politician. 2013年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年3月15日閲覧。
- ^ a b c d Aglionby, John (2000年1月25日). “God's Army holds hundreds hostage” (英語). the Guardian. 2023年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月2日閲覧。
- ^ a b c “The Twin Terrors”. Time. (2000年2月7日). オリジナルの2023年3月16日時点におけるアーカイブ。 2013年11月2日閲覧。
- ^ “God’s Army: The Reason for the Burmese Embassy Siege”. 2023年10月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年5月2日閲覧。
- ^ “BBC News | Asia-Pacific | Embassy gunmen flee”. news.bbc.co.uk. 2023年4月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年2月23日閲覧。
- ^ a b 「突入、9犯人射殺 人質無事 政府、強硬策選ぶ タイの病院占拠」『朝日新聞』、2000年1月25日、夕刊。
- ^ “Burmese Rebel Twins and 14 Followers Surrender in Thailand”. The New York Times. (2001年1月17日). オリジナルの2023年10月13日時点におけるアーカイブ。 2013年11月2日閲覧。
- ^ “Myanmar Teen Rebel Leader Surrenders”. Las Vegas Sun (2006年7月25日). 2008年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年9月14日閲覧。
外部リンク[編集]
- MYANMAR: "GOD'S ARMY" - YouTube - ミャンマー: 「神の軍隊」- APアーカイブ
- MYANMAR: "GOD'S ARMY" (2) - YouTube - ミャンマー: 「神の軍隊」(2) - APアーカイブ
- THAILAND: GODS ARMY TWINS SURRENDER - YouTube - タイ: 神の軍隊の双子が降伏 - APアーカイブ