水没泳法

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水没泳法(すいぼつえいほう)とは、日本人の競泳選手であった高橋繁浩と恩師の鶴峯治が二人三脚で完成させた平泳ぎの泳法の一つであり、その呼称である。現在、平泳ぎの主流となりつつある頭部が水没するフラット泳法と呼ばれる泳ぎの原型はこの水没泳法であると言える。また、最新のフラット泳法と旧式のフラット泳法の比較がなされることがあるが、旧式のフラット泳法とは、1970年代まで主流だったフォーマルブレストのことであり、ここでいう水没泳法とは異なるものである。

解説[編集]

重力に逆らわず水中でストリームライン[要曖昧さ回避](グライド姿勢)を取ることで水の抵抗を減らそうと考案されたもので、1ストロークごとに、水面下に頭部が完全に沈み、ストローク数の少ない大きな泳ぎになるという特徴がある。水没泳法には極めて高度な技術が要求された。

一時期、潜水泳法を禁止した国際水泳連盟(現:世界水泳連盟)によるルールの解釈で泳法違反にあたるとされていたが[1]、欧米でウェーブ泳法が開発されたことにより、1987年に国際ルールも改正・緩和されて、水没も認められるようになった経緯がある[2]

しかし、その後は、ウェーブ泳法が平泳ぎの主流になった。頭部が水没するという類似性はあるものの、重力に逆らい水上に上体を大きく出すこと(これがウェーブ泳法特有の「うねり」と言われる動作)で水の抵抗を減らそうと考案されたウェーブ泳法と水没泳法は極めて対照的である[3][4]

脚注[編集]

  1. ^ 高橋繁浩はそのために国際大会で泳法違反による失格を受けた例がある。NHK 1988年 朝日新聞 1988年 毎日新聞 1988年 スイミング・マガジン 1988年
  2. ^ 14歳岩崎恭子、競泳最年少の金 朝日新聞 1992年7月28日掲載。
  3. ^ 合屋十四秋, 鶴峰治, 高橋繁浩「2方向同時撮影による平泳ぎトップスイマーのタイミング動作の解明」『デサントスポーツ科学』第12巻、石本記念デサントスポーツ科学振興財団、1991年6月、83-92頁、CRID 1050564288393011072hdl:10424/2741ISSN 0285-5739 
  4. ^ コーチ、競泳マニア必読連載 歴代トップスイマー比較考察 第2回:男子平泳ぎ 北島康介(日本/2000~10年代)×M・バローマン(米国/1980~90年代) スイミング・マガジン編集部 野口智博 2017年11月23日。