最高殊勲夫人

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最高殊勲夫人』(さいこうしゅくんふじん)は、源氏鶏太による日本長編小説。また、本作を原作とする1959年昭和34年)公開の日本映画

あらすじ[編集]

青年実業家である三原兄弟の長男・次男が共同経営する中堅商事会社では、野々宮家の3姉妹のうち長女・次女が秘書として勤務し、やがてそれぞれ長男・次男と結婚した。玉の輿に乗った形の野々宮姉妹は、社内での自分たちの権力を高めるため、別の大手商事会社に勤務している三原兄弟の三男・三郎を兄弟の会社に移籍させ、野々宮姉妹の三女・杏子と結婚させようと思い立ち、杏子を三原兄弟の会社に就職させる。しかし、三郎は自身の勤務先の社長令嬢・富士子と婚約していた。

姉たちの魂胆に乗りたくない杏子は、恋人がいるふりをして事態をやり過ごそうとするあまり、男性との出会いをことさらに求めていく。杏子の恋人探しが会社周辺の噂となり、彼女のもとに若い男が殺到するようになる。こうして同僚秘書の宇野、営業部員の野内、そして富士子の兄・武久(原作では三郎の上司、映画版ではテレビ局員)が彼女に告白する。杏子はでっち上げの「恋人」候補として彼らの人間性を見定めていくが、物足りなさや幻滅を覚え、かえって三郎に惹かれていく。

三原兄弟の長男で社長の一郎は、社内で公然と芸者・ポン吉と不倫しており、杏子は常に口止め料を受け取っていた。罪悪感に耐えられなくなった杏子は三郎に相談し、三郎は単身で温泉旅館の現場を押さえる。三郎は問題を黙殺する代わりに、杏子の長姉で社長夫人の桃子らによる、自分と杏子との縁談を食い止めるよう命じる。その後、三郎は富士子とデートを繰り返すものの、性格が噛み合わず、一方的に婚約を解消する。大手商事会社に居づらくなった三郎は退職する。また、庶民である野々宮家の家計が、2回も豪華な披露宴を開催したことで傾いていたことを知った三郎は、定年を迎えた3姉妹の父・林太郎の再就職の世話を焼く。

宇野と野内が杏子に接近していることを知った桃子が、計画の邪魔だとして怒り、2人を地方支社に左遷する辞令を出させる。左遷辞令が桃子の差し金であることを知り、反発を感じた杏子は、2人のうち、より遠くに転勤する野内と結婚することを決意する。一郎・桃子夫妻の邸宅をたずねた三郎は、兄たちの会社に入るよう誘われるが、入社の条件として宇野・野内の左遷を取り消すよう要求する。桃子はこれまでの横暴を詫び、左遷を取り消す。

杏子が野内と結婚しようとしていることを知った三郎は、それを押しとどめようと「僕と結婚しよう」と告げる。2人は騒動を通じて互いに想い合っていた。杏子は申し出を承諾する。結ばれた杏子と三郎は、桃子について「やはり『最高殊勲夫人』ということになるのだろう」と話し、しぶしぶ彼女のこれまでの行動を受け入れるのだった。

書籍[編集]

最高殊勲夫人
作者 源氏鶏太
日本の旗 日本
言語 日本語
発表形態 雑誌連載
初出情報
初出 週刊明星 1958年8月号 - 1959年2月号
刊本情報
出版元 講談社
出版年月日 1959年
ウィキポータル 文学 ポータル 書物
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雑誌『週刊明星』にて、1958年(昭和33年)8月号から1959年(昭和34年)2月号まで連載された。単行本は同1959年に講談社から刊行され、以来さまざまな版元から刊行されている。

書誌[編集]

  • 講談社ロマン・ブックス 1959年(昭和34年)
  • 『源氏鶏太全集 15 最高殊勲夫人・夫婦合唱』 講談社 1966年(昭和41年)
  • 集英社コンパクト・ブックス 1966年(昭和41年)
  • 角川文庫 1980年 (昭和50年)
  • ちくま文庫 2016年(平成28年)

外部リンク(書籍)[編集]

映画[編集]

最高殊勲夫人
The Most Valuable Madam
監督 増村保造
脚本 白坂依志夫
原作 源氏鶏太
製作 武田一義
出演者 若尾文子
川口浩
宮口精二
船越英二
音楽 塚原晢夫
撮影 村井博
編集 中静達治
製作会社 大映
大映東京撮影所
配給 大映
公開 1959年2月10日
上映時間 95分
製作国 日本の旗 日本
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最高殊勲夫人』(さいこうしゅくんふじん)は、1959年2月10日に公開された日本映画。増村保造監督。カラー、シネマスコープ(2.35:1)、95分[1]。英語題はThe Most Valuable Madam[1]

同じ源氏鶏太原作の映画化『青空娘』の成功により、本作も映画化された。原作のエピソードが多く捨象されており、特に二郎(原作では次郎)の友人で、三郎にたびたび助言を与える登場人物・風間圭吉の存在が省略されている。

増村保造監督は自作解説の中で、「宮口精二さんがやった親父さんを選んでピントを合わせました。それに日本の若い世代の、どんらんな消費欲を徹底的に描いて対比させようと考えた」と演出意図を語っている[2]

キャスト[編集]

順は本作タイトルバックに、役名の一部は国立映画アーカイブ[3]に基づく。

  • 舟橋邦子(三原商事社員) - 市田ひろみ
  • 女給あけみ - 水木麗子
  • 岩崎豊子(三原商事社員) - 三宅川和子
  • 夏木久子(三原商事社員) - 小山慶子
  • ロカビリーの少女 - 小笠原まりこ
  • 大島商事の若い社員 - 三角八郎
  • テレビ主演俳優 - 渡辺鉄彌
  • 大平化学社長 - 高村栄一
  • 結婚式場の進行係 - 山口健
  • 書道の先生 - 杉森麟
  • テレビプロデューサー - 夏木章
  • 井上 - 飛田喜佐夫
  • テレビ俳優B - 湊秀一
  • ぎょろ目の社員 - 小山内淳
  • 眼鏡の社員 - 米澤富士雄
  • テレビ俳優A - 伊達正
  • ロカビリーの司会者 - 高田宗彦
  • テレビ・フロア・マネージャー - 藤巻公義
  • テレビライター - 島田裕司
  • 経理部員A - 渡辺久雄
  • 経理部員B - 井上信彦
  • 経理部員C - 村上文二
  • 大島商事給仕 - 金澤義彦
  • 野々宮楢雄(3姉妹の弟) - 亀山靖彦劇団ひまわり
  • 森矢雄二
  • 大川修
  • 宿の女中 - 三島愛子
  • 原眞理子
  • 田中三津子
  • 半谷光子
  • 水原志摩子
  • あんみつ屋のおばさん - 松村若代
  • 久保田紀子
  • 奈良ひろみ
  • 宮戸美知子
  • 高野英子
  • 有吉恵子
  • 花村泰子
  • 響令子
  • テレビ俳優C - 本山雅子
  • クレジットなし[4]
    • テレビ演出部員 - 中根勇

スタッフ[編集]

順(監督を除く)と職掌は本作タイトルバックおよび国立映画アーカイブ[3]に基づく。

外部リンク(映画)[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 最高殊勲夫人 - 文化庁日本映画情報システム
  2. ^ 『映画監督増村保造の世界(下)』ワイズ出版、2014年12月25日、321頁。 
  3. ^ a b 最高殊勲夫人 - 国立映画アーカイブ
  4. ^ 最高殊勲夫人 - KINENOTE