慶祚

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慶祚
天暦7年 - 寛仁3年12月22日
953年 - 1020年1月19日
尊称 三井大阿闍梨、龍雲坊先徳
没地 近江国滋賀郡 三井寺
（現：滋賀県大津市）
宗派 天台寺門宗
寺院 延暦寺、大雲寺、園城寺、微妙寺
師 余慶
弟子 助慶、源泉、行円？
著作 「法華竜女成仏権実義難」
「西方要観」？
「阿弥陀観私記」？
廟 慶祚阿闍梨入定窟
（滋賀県大津市小関町2-23）
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慶祚（けいそ、天暦7年（953年）- 寛仁3年12月22日（1020年1月19日））は、平安時代中期の天台宗の僧。俗姓は中原氏[1]。阿闍梨。智者として知られ[2]、三井寺を興隆させた[3]。後世、三井大阿闍梨[4]、龍雲坊先徳[5]と呼ばれる。

経歴[編集]

天暦元年（947年）[6]、天暦7年（953年）[7]あるいは天暦9年（955年）[2]に生まれる。『元亨釈書』と三井寺の「伝法灌頂血脈譜」には父は大外記中原師元（1109-1175）とあるが、誤伝と考えられる[1]。

園城寺の余慶について天台教学を学ぶ[2]。他に、禅耀と千観に学び、顕密に博達した[1]。正暦2年（991年）、灌頂[8]。

正暦4年（993年）、比叡山から円珍の門徒が追放され、慶祚は比叡山から大雲寺へ移った。大雲寺では学解が隆盛した[9]。

正暦5年（994年）、園城寺南院に微妙寺を建立した[10]。

『元亨釈書』によれば、長徳（995-999）の初めに大雲寺から三井寺へ移ったという[11]。しかしながら、慶祚は長徳5年に大雲寺で「法華竜女成仏権実疑難」を執筆している[12]。一方で『三井往生伝』によれば寛仁元年（1017年）に三井寺へ移ったとある[9]。しかしながら、『小右記』長和4年（1015年）閏6月8日には、「勅命に云はく（中略）三井寺に罷り、慶祚に相逢ひ（後略）」とあり、すでに三井寺にいたことになる。

慶祚は三井寺で龍雲坊を造営し[5]、「碩学堅義」という法会を創始した[9]。慶祚来たことで、三井寺には学者が四方からやってきて、三井寺は盛んになったという[13]。

長徳3年（997年）3月19日、皇后宮藤原遵子の戒師を務める[14]。

長保元年（999年）正月[12]、「法華竜女成仏権実疑難」を著す。北宋の沙門源清が太平興国2年（977年）に著し、長徳3年に日本に輸入された「法華竜女成仏権実義」を「愚蒙」であると非難するものであり[15][16]、山門寺門の智者へのこれらの輸入書を論破せよという詔を受けて執筆されたものである[2]。

同年11月1日、病悩する昌子内親王の加持祈祷を行う。12月5日、昌子内親王の葬儀で、光明真言を読む[17]。

長保3年（1001年）2月、源成信と藤原重家が三井寺にて出家した。『今鏡』『古事談』『発心集』では、慶祚がこれに立ち会ったとしており、住谷伊代子もこれを事実とみている[18]。『今鏡』『発心集』によれば、慶祚は二人は「名高」い身なのだから、出家は「便無」いことであると剃髪を拒否したが、二人は自分で髪を剃ってしまい、慶祚も許したという。

長保4年（1002年）、覚運と院源の竜宮は変わるのか変わらないのかという論争の正邪を決した。このことで、有力者から師と目された[2]。

寛弘4年（1007年）3月19日、師・余慶の諡号の賀に出席した[19]。

長和4年（1015年）閏6月9日、久しく隠居の身ながら、勅によって三条天皇から、眼病平癒祈念の尊星王図絵を開眼供養せよと頼まれた[20]。

寛仁元年（1017年）の円珍忌に法華十講を行った[21]。

寛仁3年（1019年）9月、行願寺の多宝塔上層の大塔が他の塔は12戸であるのに、この塔には8戸しかないことが問題となった。慶祚は経文は戸の数を記さず、未だ定説もないので、これを先例としても謗られないだろうと意見した[22]。

同年12月初旬頃、病を得る。12月4日に見舞った藤原公任には「危急の人」には見えなかったものの、「今日を過ぎることも難しいだろう」と慶祚は語った。翌朝、藤原教通が、慶祚が極楽に行く夢を見た[23]。果たして12月22日に遷化した[7]。滋賀県大津市の長等公園内にある微妙寺の旧地には慶祚阿闍梨入定窟が残されている[24]。

長西『浄土憑依懇経論章疏目録』によれば「西方要観」または「阿弥陀観私記」の著作がある（写本により異なる）[25][26]。弟子に助慶[27][28]、源泉[2]がいる。大雲寺の「当寺名哲之系図」では、弟子として永円、源泉、心誉、任円、智円、忠命、慶縁、定基、良秀、行円、恒久、寿増、芳盛が挙げられるが、助慶は挙げられていない[29]。

人物と評価[編集]

  • もし中毒死すれば、最期に念仏が唱え難いと考え、キノコを食べなかった[30]。
  • 頼瑜（1226-1304)『薄草子口決』によれば、慶祚は毎日、阿弥陀行法をしていた。最期には体が思うようにならなかったため、弟子の行円にしてもらった。行円が持仏堂に入ると、そこには地蔵菩薩があった。行円は不審に思い、阿弥陀法を修した後、慶祚に尋ねた。慶祚は地蔵と阿弥陀は一体であるといったという[31]。
  • 増賀や源信との交流の伝承がある[32]。
  • 比叡山にて慶祚と寛印が論議することになった際、源信は弟子の寛印に「あちらには慶祚がいる。おそらく話を潤色するから、油断するな」と語った[33]。
  • 大江匡房は「天下の一物」の一人に挙げている[34]。
  • 住谷伊代子は「慶祚は、徳が高く純粋な道心の持ち主であるとともに、体制加担者的な面もあった」としている[35]。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 住谷(1998), p. 43.
  2. ^ a b c d e f 能島(2006), p. 57-58, 『三井往生伝』
  3. ^ 『朝日日本人物事典』, 『デジタル版 日本人名大辞典+Plus』
  4. ^ 能島(2006), p. 55,57,63-65, 『大雲寺縁起』.
  5. ^ a b 能島(2006), p. 55.
  6. ^ 三井寺の「伝法灌頂血脈譜」, 三井寺「紫式部と三井寺」展パンフレット中画像
    『朝日日本人物事典』
  7. ^ a b 『小右記』寛仁3年12月24日
  8. ^ 『デジタル版 日本人名大辞典+Plus』講談社
  9. ^ a b c 能島(2006), p. 58.
  10. ^ 「びわ湖大津歴史百科」
  11. ^ 住谷(1998), p. 39.
  12. ^ a b 源清ら(1694), Image 20
  13. ^ 『元亨釈書』(住谷(1998) p.43)
  14. ^ 『小右記』長徳3年3月20日
  15. ^ 源清ら(1694), 『三井往生伝』.
  16. ^ 能島(2006), p. 57-58.
  17. ^ 『小右記』
  18. ^ 住谷(1998) & p38-39,43.
  19. ^ 『御堂関白記』
  20. ^ 『小右記』長和4年閏6月8, 10日
    武石彰夫訳『今昔物語集　本朝世俗篇　（下）　全現代語訳』脚注。講談社, 2016, p. 582. ISBN 978-4-06-292373-6
  21. ^ 『小右記』、『御堂関白記』寛仁元年10月29日
    天台寺門宗「歴史・年表」
  22. ^ 『小右記』寛仁3年9月12-13日
  23. ^ 『小右記』寛仁3年12月5日
  24. ^ 三井寺
  25. ^ 能島(2006), p. 53,63.
  26. ^ 小山(1990), p. 229.
  27. ^ 『続本朝往生伝』「沙門助慶」
  28. ^ 能島(2006), p. 59.
  29. ^ 水口幹記 2017, p. 16.
  30. ^ 『小右記』長元2年9月18日
  31. ^ 能島(2006), p. 65.
  32. ^ 住谷(1998), p. 44-45.
  33. ^ 住谷(1998), p. 44-45, 『元亨釈書』.
  34. ^ 『続本朝往生伝』「一条天皇」
  35. ^ 住谷(1998), p. 47.

参考文献[編集]

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