悲しみにさよなら

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悲しみにさよなら
安全地帯シングル
初出アルバム『安全地帯IV
B面 「ノーコメント」
リリース
規格 7インチレコード
ジャンル
時間
レーベル Kitty Records
作詞 松井五郎
作曲 玉置浩二
チャート最高順位
安全地帯 シングル 年表
熱視線
(1985年)
悲しみにさよなら
(1985年)
碧い瞳のエリス
(1985年)
安全地帯IV 収録曲
EANコード
EAN 4988031009802
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悲しみにさよなら」(かなしみにさよなら)は、日本のロックバンドである安全地帯の楽曲。

1985年6月25日Kitty Recordsから9枚目のシングルとしてリリースされた。前作「熱視線」(1982年)よりおよそ5か月ぶりにリリースされたシングルであり、作詞は松井五郎、作曲は玉置浩二、編曲は安全地帯が担当している。玉置のメロディアスな楽曲と松井のロマンチックな歌詞の融合の完成形となった楽曲であり、松井は本作が人生を変えた1曲であると述べている。

TBS系音楽番組『ザ・ベストテン』(1978年 - 1989年)では6週連続第1位を獲得、またNHK総合音楽番組『第36回NHK紅白歌合戦』において本作で同番組への初出場を果たした。また、1993年キリンビール「秋味」のコマーシャルソングとして使用された。MOOMIN島谷ひとみなどの歌手のほか、中国語圏の歌手によって多数のカバー作品がリリースされている。

音楽性と歌詞[編集]

自伝本『玉置浩二 幸せになるために 生まれてきたんだから』において玉置浩二は、2枚目のアルバム『安全地帯II』(1984年)から始まった玉置によるメロディアスな楽曲と松井五郎によるロマンチックな歌詞を組み合わせたスタイルの完成形が本作であると述べ、「安全地帯が目指していた、ジャンルや年齢も関係ない、誰もが認める普遍的なメロディが、聴く人に受け入れてもらえた証でもある」と述べている[2]。また、作詞を担当した松井もターニングポイントとなった作品であると述べている[3]。この曲の大ヒット以後、松井は「安全地帯の6人目のメンバー」とファンに揶揄される程に、安全地帯と親交を深めていくことになる。

松井は玉置および玉置との不倫交際が報道されていた女優の石原真理子とともに頻繁に海を訪れていたが、報道が過熱していた両者が安心して訪れることが出来るのは真夜中であり、松井は玉置に対して「次は昼間に来よう」と提案するも玉置は曖昧な返事をするのみであった[4]。無人の浜辺では店もすべて閉店しており、両者の境遇を不憫に思った松井は本作の歌詞を書き上げることとなった[5]。松井は7枚目のシングル「恋の予感」(1984年)においても作詞を行ったものの30回程度書き直した末に没となり、結果として井上陽水による歌詞が採用されることとなった[6][7][8][9]。その時に松井は、井上が制作した歌詞について「書かないことの美学、美しさというのがあって。あ、これで良いんだって解答を見せられた感じがすごくあった」と述べていた[6]。この経験から、松井はそれまでの紙の上で言葉を構築するスタイルから、メロディーや声、アレンジが揃った段階で最も適切な言葉を考えるようになり、その方式で上手く表現できたのが前作「熱視線」(1985年)および本作であったと述べている[9]。また、松井は井上の歌詞から学んだ経験がなければ本作のようなシンプルな歌詞は制作できなかったとも述べている[6]。さらに本作が松井自身にとっての転機となった述べた上で、「人生を変えた1曲と言ってもいいと思います」と述べている[10]

音楽情報サイト『CDジャーナル』では、それまでの安全地帯の楽曲がアダルトなムードを持っていたのに対し、本作では上質なポップ・サウンドに変化したと表記しており、過去の痛みを忘れ新たな旅立ちを決意した友人を励ますようなポジティブなメッセージ性があるとした上で「じんわりと熱い」と表記している[11]

リリース、チャート成績[編集]

本作は1985年6月25日Kitty Recordsより9枚目のシングルとして7インチレコードにてリリースされた。1988年12月10日には8センチCDとして再リリースされた[12]1993年にはキリンビール「秋味」のコマーシャルソングとして使用された[13]

1985年のシングル盤はオリコンシングルチャートにおいて最高位第1位、登場週数は18回で売り上げ枚数は44.3万枚となった[1]。本作は同チャートにて合計4週間第1位を獲得したが、安全地帯としての第1位獲得は本作が最後となっている[注釈 1]。また、本作の売り上げ枚数は安全地帯のシングル売上ランキングにおいて第2位となった[14]

TBS系音楽番組『ザ・ベストテン』(1978年 - 1989年)では、1985年7月18日放送分において第5位で初登場し、8月22日放送分にて第1位を獲得、前作「熱視線」では1位を獲得したもののスタジオ出演が出来なかったため番組恒例のくす玉を割ることが出来ず、本作で初めてくす玉を割ることとなった[15]。以後9月26日放送分まで6週間に亘って連続第1位を獲得、結果として10月10日までランクインし続け13週連続ランクインとなった[15]。また、『ザ・ベストテン』のほかに日本テレビ系音楽番組『ザ・トップテン』(1981年 - 1986年)においてもチャートインし、番組に出演した際はアルバム『安全地帯IV』(1985年)制作の真っ最中であったため、レコーディングを行なっていた伊東市にあるキティ・レコードの伊豆スタジオをはじめ、伊豆シャボテン公園下田海中水族館MOA美術館など、伊豆半島からの中継による出演が多くなった。

『ザ・ベストテン』および『ザ・トップテン』においてともに年間第1位を獲得し、応援ゲストとして前者には安全地帯の楽曲「デリカシー」が主題歌として使用されたTBS系テレビドラマ『親にはナイショで…』(1986年)出演者である女優の星由里子、アマチュア時代の安全地帯を物心ともに支援した後に『優佳良織工芸館』館長となる木内和博が出演、後者には星勝とツアースタッフが登場した。また、安全地帯は1985年12月31日放送の『第36回NHK紅白歌合戦』において、本作で初出場を果たした[16]

本作はデビュー40周年記念ベスト・アルバム『THE BEST ALBUM 40th ANNIVERSARY 〜あの頃へ〜』(2022年)の収録曲を決定するファン投票において第4位を獲得した[17]

カバー[編集]

日本語バージョン[編集]

歌手名 収録作品 編曲 備考 出典
vividblaze 2007年 アルバム『PERIDOT』
加藤いづみ 2008年 カバー・アルバム『favorite [18]
上新功祐 2015年 アルバム『ウタモノ2』
黒澤萌 2002年 シングル「悲しみにさよなら」
香西かおり 2017年 アルバム『香西かおり 玉置浩二を唄う』 久米大作 [19][20]
越山元貴 2013年 アルバム『I'm A 北海道MAN』 斉藤哲也
島谷ひとみ 2007年 アルバム『男歌〜cover song collection〜 中野雄太 [21]
たなかりか 2016年 アルバム『ジャパニーズ・ソングブック2』 鈴木正人 (LITTLE CREATURES)
つるの剛士 2015年 アルバム『つるのうた3 中村圭作 [22]
童子-T 2007年 シングル「悲しみにさよなら feat.Full Of Harmony 本作をサンプリング [23]
北翔海莉宝塚歌劇団 2015年 アルバム『北翔海莉 CDコレクション』
Ms.OOJA 2015年 カバー・アルバム『THE HITS ~No.1 SONG COVERS~ TAZZ [24]
MOOMIN feat.RYO the SKYWALKER 2006年 アルバム『Adapt』 [25]
森川美穂 2019年 カバー・アルバム『another Face - tribute to Goro Matsui + Koji Tamaki -』 河野充生
ユン・サンヒョン 2012年 シングル「悲しみにさよなら 中西亮輔

英語バージョン[編集]

歌手名 曲名 収録作品 備考
A.S.A.P. 1992年 「Goodbye To Sadness」 アルバム『Vacation Hot Lovin'』

中国語バージョン[編集]

歌手名 曲名 収録作品 備考
ウッド・ギター(木吉他) 1994年 「沒有人比妳懂我的心」 アルバム『夢田』 北京語バージョン
ジェリー・シュー(徐瑋) 1986年 「深情的印痕」 アルバム『好久以前』 北京語バージョン
テレサ・カルピオ(杜麗莎) 1986年 「再見悲哀」 アルバム『Teresa Carpio』 広東語バージョン
蔡國權中国語版 1985年 「誰最愛你」 アルバム『風中暖流』 広東語バージョン
デン・キジン(田希仁) 1990年 「偽裝」 アルバム『此情此世』 北京語バージョン
陳松伶英語版 1987年 「愛的傷口」 アルバム『Chan Chung Ling』 広東語バージョン
李克勤英語版 2013年 「誰最愛你」 アルバム『復克』 広東語バージョン
ピーター・ホー(何潤東) 1998年 「陪我去看藍藍的海」 アルバム『想你的愛』 北京語バージョン
露雲娜中国語版 2017年 「誰最愛你」 アルバム『酒紅色的心』 広東語バージョン

シングル収録曲[編集]

全作詞: 松井五郎、全作曲: 玉置浩二、全編曲: 安全地帯
#タイトル作詞作曲・編曲時間
1.悲しみにさよなら松井五郎玉置浩二
2.ノーコメント松井五郎玉置浩二
合計時間:

認定[編集]

リリース日一覧[編集]

No. リリース日 レーベル 規格 カタログ番号 最高順位 備考
1 1985年6月25日 Kitty Records 7インチ 7DS 0100 1位
2 1988年12月10日 8センチCD H10K-30038 -
3 2015年2月25日 ユニバーサルミュージック ハイレゾFLAC - - デジタル・ダウンロード、「ワインレッドの心」との両A面

収録アルバム[編集]

「悲しみにさよなら」
「ノーコメント」

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ なお、ボーカルの玉置浩二は、亀梨和也とユニット「堀田家BAND」名義で発売した「サヨナラ☆ありがとう」(2013年)で、28年後にシングルチャート第1位を獲得している。この間、安全地帯としては「碧い瞳のエリス」(1985年)、「プルシアンブルーの肖像」(1986年)、「じれったい」(1987年)の第2位が最高位となり、玉置のソロ作品でのヒット曲「田園」(1996年)も第2位が最高位となっている。

出典[編集]

  1. ^ a b オリコンチャートブック アーティスト編 1988, p. 34.
  2. ^ 『ALL TIME BEST』収録楽曲解説”. ユニバーサルミュージックジャパン公式サイト. ユニバーサルミュージック. 2018年7月10日閲覧。
  3. ^ 「作家で聴く音楽」第六回 松井五郎”. JASRAC公式サイト. 日本音楽著作権協会. 2020年5月5日閲覧。
  4. ^ 松井五郎 1987, p. 102- 「Blueの構図」より
  5. ^ 松井五郎 1987, pp. 102–105- 「Blueの構図」より
  6. ^ a b c 志田歩 2006, p. 73- 「第4章 スターダム」より
  7. ^ 秦野邦彦 (2018年5月9日). “森恵×松井五郎「1985」対談|作詞家はシンガーソングライターに何をすべきなのか”. 音楽ナタリー. ナターシャ. p. 3. 2023年1月21日閲覧。
  8. ^ 松井五郎の作詞家としての人生を変えた「悲しみにさよなら」(安全地帯)”. ニッポン放送 NEWS ONLINE. ニッポン放送 (2021年4月20日). 2023年1月21日閲覧。
  9. ^ a b 森朋之 (2022年10月9日). “「悲しみにさよなら」「勇気100%」……作詞家 松井五郎が明かす、名曲誕生の裏側 時代との向き合い方についても聞く”. リアルサウンド. blueprint. 2023年1月21日閲覧。
  10. ^ 松井五郎の作詞家としての人生を変えた「悲しみにさよなら」(安全地帯)”. ニッポン放送 NEWS ONLINE. ニッポン放送 (2021年4月20日). 2023年1月21日閲覧。
  11. ^ 安全地帯 / コンプリート・ベスト [2CD]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2023年3月25日閲覧。
  12. ^ 安全地帯 / 悲しみにさよなら [廃盤]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2022年6月9日閲覧。
  13. ^ 玉置浩二&安全地帯、オールタイム・ベストをリリース”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2017年2月28日). 2022年6月9日閲覧。
  14. ^ 安全地帯のシングル売上TOP20作品”. オリコンニュース. オリコン. 2023年2月4日閲覧。
  15. ^ a b 別冊ザテレビジョン 2004, p. 134- 「おニャン子クラブ登場! アイドル新時代 1985年」より
  16. ^ 第36回NHK紅白歌合戦”. NHK紅白歌合戦ヒストリー. NHK. 2022年6月9日閲覧。
  17. ^ 安全地帯デビュー40周年、玉置浩二ソロデビュー35周年 リクエスト投票 結果発表”. otonano. ソニー・ミュージックマーケティングユナイテッド. 2023年2月24日閲覧。
  18. ^ 加藤いづみ、念願のカバーアルバムが誕生”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2007年11月22日). 2023年1月4日閲覧。
  19. ^ 香西かおり「玉置浩二さんと一緒につくった作品たちは私の一生の宝物」、玉置浩二からのコメントも”. Billboard JAPAN.com. 阪神コンテンツリンク (2017年11月21日). 2023年2月5日閲覧。
  20. ^ 香西かおりニューアルバムは1枚まるごと玉置浩二”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2017年11月22日). 2023年2月5日閲覧。
  21. ^ [島谷ひとみ] モバゲーオーディションで「男歌」披露”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2007年11月6日). 2023年1月4日閲覧。
  22. ^ つるの剛士「つるのうた3」に安全地帯、今井美樹、Kiroro、May J.カバーも”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2015年4月22日). 2023年1月4日閲覧。
  23. ^ 童子-T、安全地帯「悲しみにさよなら」をカヴァー!”. CDジャーナル. 音楽出版社 (2008年4月11日). 2023年1月4日閲覧。
  24. ^ Ms.OOJA、No.1ヒット集めたカバーアルバム第4弾”. 音楽ナタリー. ナターシャ (2015年6月26日). 2023年1月4日閲覧。
  25. ^ MOOMINが安全地帯、井上陽水、サザン他のカヴァー・アルバム『ADAPT』発表”. TOWER RECORDS ONLINE. タワーレコード (2006年4月14日). 2023年1月4日閲覧。
  26. ^ 第27回 日本レコード大賞”. 日本作曲家協会公式サイト. 日本作曲家協会. 2022年6月9日閲覧。

参考文献[編集]

外部リンク[編集]