平和的祭典北京五輪

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平和的祭典北京五輪」(へいわてきさいてんペキンごりん)は、2008年の『オール讀物』に掲載された海堂尊の短編小説。

概要[編集]

オリンピックイヤーの2008年8月に行われた、『ひかりの剣』の刊行サイン会の打ち上げ中の雑談から着想を得た、作者曰く「オリンピックの本質を風刺した」短編である[1]

デビュー作の『チーム・バチスタの栄光』など、作者には医療を題材とした作品が多いが、これは医療とは無関係の作品である[2]

ストーリー[編集]

2008年。自国でのオリンピック開催を目前にした中国政府はIOCに対して、オリンピック開催中に限っては世界中の交戦を停止してほしい旨を世界に向けて発信するよう要請。IOCのタマランチャ会長は国連のグレン総長に相談した結果、依頼を逆手に取り世界平和のために中国政府に対して、オリンピック開催期間の無期限延長を命令。そのためにオリンピックは3年近く継続され、アメリカの競泳選手が出場辞退の批判から自殺するなど、様々な弊害があらわれる。

グレン総長はオリンピックを閉会させようと自らの命と引き換えにするが、オリンピック閉会によって再び世界中の交戦が再開されることを恐れたタマランチャ会長は、オリンピック継続のために驚くべきことを発表する。

登場人物[編集]

平沼揺介
平泳ぎ日本代表。偏頭痛持ちでそれを和らげるために、手を組み膝に置きそこに頭を垂れるポーズをとるが、周囲はそれを「勝利への追慕」と呼ぶ。第38節北京オリンピック平泳ぎで同年3回目の世界新記録を達成し、15個目の金メダルを手にする。6人の子持ち。
マグワイア
平泳ぎアメリカ代表で揺介のライバル。経済的理由から終わりの見えないオリンピックからの出場を辞退するが、周囲から猛烈な非難を浴びそれに耐えられず自殺する。5人の子持ち。
ドミトリー・ヴァン・グレン 
国際連合事務総長。中国政府の依頼を逆手に取った、北京オリンピック開催中は世界中の交戦を停止するという「グレン・ドクトリン」の提唱者だが、北京オリンピックを閉会させたい複数の組織から命を狙われている。北京オリンピック開催決定以降、沈黙を守るため「サイレント・グレン」と呼ばれる。
タマランチャ
IOC会長。グレン総長の死後、彼のスキャンダルを暴露する。
ナボトフビッチ
ロシア軍極東方面司令部総司令官。スナッペズの精鋭部隊を掌握。ノルガ共和国独立戦争の時には「砂漠のサソリ」と謳われる戦略を用いる。
プーランドット
ロシア大統領。国連絶対主義者。
陽国東主席
中国国家主席。
ブブロナチワ
やり投金メダリスト。通算14個の金メダル保持者。

脚注[編集]

  1. ^ 『ジェネラル・ルージュの伝説~海堂尊ワールドのすべて』
  2. ^ 医療とは無関係の作品には『夢見る黄金地球儀』(東京創元社)がある。

関連項目[編集]