小池暢子

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小池 暢子(こいけ のぶこ、1937年-)は日本の銅版画家である。

来歴[編集]

1937年に高知市で生まれた[1]。父は医師であった[2]。1941年に士別市に引っ越した[1][3]。上京して女子美術大学に進学し、一時期は安保闘争のデモ活動に参加していた[2]。1961年に女子美術大学を卒業した[1]。その後、壁画を作成する会社で働くようになり、1964年6月頃から東京オリンピックの準備として国立競技場の壁画制作作業の現場監督として働いた[2]。1960年代頃までは油絵を描いており、油絵の個展も行っていた[2][3]

1972年、35歳の時に東京では制作に没頭できないと考え、渡仏してパリで活動するようになった[3]。ローマなどにも滞在した[1]。ヨーロッパ在住中は「アラプペ」と呼ばれる一版多色刷りの銅版画を多数制作した[1]。1986年にパリより日本に帰国し、その後、士別市内にギャラリー「絵音(えね)の館」を開館した[1]。この頃から3年に1回、日本版画協会の移動展を士別で開くようになった[1]

1980年代末に、士別の隣である剣淵町の商工会青年部に招かれ、講演を行った[4]。この時に小池は講演で、「日本人はもっと文化や人間の心を大切にすべきだ。そうでないと、世界中から嫌われてしまう」というむねを強調した[5]。これをきっかけに、小池や福武書店で小池の絵本を担当していた編集者の松居友の協力を受けて絵本に関連する原画展や講演会が開かれるようになり、1991年には旧町役場の庁舎を改装転用し[6]剣淵町絵本の館の開館につながった[7]

2017年には、文化庁からの補助金を受けて実施した、芸術家を対象とするアーティスト・イン・レジデンスプロジェクトである「しべつアーティスト・イン・レジデンス」の実行委員長をつとめた[1]

評価[編集]

「丘の中腹にある家々、牧歌的な眺め、狭い通り」などを「空想的なパターン」で描くのが得意であると評されていた[8]。また、個人的なヴィジョンを色彩豊かに描く作風が評価されていた[9]

ニューヨーク近代美術館、カリフォルニア州立図書館、士別市立博物館国立国際美術館などに作品が収蔵されている[3][10]

著作[編集]

小池暢子絵・景山あき子文『いちばんはじめのクリスマス』福武書店、1986[11]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d e f g h 小池暢子さん(80)*招へい事業の実行委員長 銅版画家*若手が士別に滞在し創作活動*芸術通し地域を豊かに”. 北海道新聞旭川支社 (2017年11月5日). 2023年5月21日閲覧。
  2. ^ a b c d 「東京2020への伝言:/10止 守ってこそレガシー 青春の壁画、野ざらし」『毎日新聞』、2017年1月10日、東京朝刊p. 27。
  3. ^ a b c d 士別市立博物館『小池暢子銅版画展:開館一周年記念特別展解説書』士別市立博物館、1982年、n.p.頁。 
  4. ^ 「剣淵町――「マツダ効果」に期待、からす・絵本で町おこしも」『日本経済新聞』、1990年2月24日、1面。
  5. ^ 「メルヘンで町おこし 世界の絵本の古里--北海道剣淵町」『毎日新聞』、1991年8月10日、東京朝刊、、4面。
  6. ^ 小笠原 文「絵本を媒体とした子育て支援に関する一考察:3 剣淵絵本の館 §3.1 沿革」『子ども・子育て支援研究センター年報』第6号、広島文化学園大学、2016年12月28日、8頁、CRID 1390859293124087040doi:10.60171/00005377ISSN 2186-4144 掲載誌の別題「A Child, Child Care Support Research Center Annual Report』。
  7. ^ 「北国に育つ絵本の里――「けんぶち絵本の里を創ろう会」会長高橋毅氏」『日本経済新聞』、1991年10月24日、朝刊p. 36。
  8. ^ Blakemore, Frances (1980). Who's who in modern Japanese prints (4th ed ed.). New York: Weatherhill. p. 85. ISBN 978-0-8348-0101-1 
  9. ^ “Arts and Learning”. Polish Perspectives 32 (1 (Winter)): 60-63, p. 62. (1989). 
  10. ^ 小池暢子 1937 -”. 独立行政法人国立美術館・所蔵作品検索. 2023年5月21日閲覧。
  11. ^ いちばんはじめのクリスマス”. ndlonline.ndl.go.jp. 国立国会図書館. 2023年5月21日閲覧。