妖怪画談

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

妖怪画談』(ようかいがだん)は、岩波書店岩波新書)から出版された水木しげるによる妖怪の解説書および画集。1992年に初のオールカラー新書としてベストセラーとなり[1]、1996年までにシリーズ4作が出版。1994年にはアニメ版も発売された。本項ではシリーズ全般についても触れる。

概要[編集]

『妖怪画談』は水木しげるの妖怪画が初めてオールカラーで収録された書籍であり、岩波新書としても初めての試みで画期的なものであった[1][2]。ベストセラーとなった本書はトーハン発表の「1992年年間ベストセラー」新書・ノンフィクション部門で7位を記録する[3]。岩波新書編集部によれば「目に見えない世界への年齢を超えた潜在的な関心が、新書初のオールカラーとうまくマッチした」と分析している[1]。また、本書はそれまでの岩波新書のイメージを大きく覆し、新たな読者を獲得する役割を果たしたと評されている[4]

各シリーズの内容としては、『妖怪画談』(正・続)では日本各地の妖怪から黄泉の国などの異界、民俗信仰の神々など水木の関心の広がりをうかがわせ[2]、解説は自身の体験談を交えたものが多い。また、続編では河童、中国の妖怪、朝鮮のあの世、鬼太郎画報など内容は多岐に渡る。『幽霊画談』は主に古今東西の幽霊譚や火の玉、霊に属する妖怪などが描かれている。水木はあとがきの中で、妖怪も神々も精霊も幽霊もみな同じ霊であるという持論から生まれた本だと述べている。『妖精画談』はヨーロッパの伝説にまつわるものや民俗信仰の妖精が描かれ、日本の妖怪との比較を交えた解説がされている。本書は特にキャサリン・ブリッグズと井村君江の著書を参考にしており、交流のあった井村のあとがきも掲載されている。その後、2002年には『妖怪画談』(正・続)を増補・再編集したA5判ハードカバーの『愛蔵版 妖怪画談』が出版された。

水木は本シリーズについて、入隊前から岩波文庫の『ゲーテとの対話』を愛読していたことから、青春の読書でお世話になった岩波書店からの出版を誇らしいと回想している[5]。また、水木の妻・布枝によると本書が出版されたころから、水木は「妖怪研究者」として色々な文化人から交流を求められるようになったという[6]

シリーズ一覧[編集]

アニメ版[編集]

1話完結形式で妖怪の物語を映像化したオリジナルビデオアニメーション。水木しげる自身も出演している。1994年に日本コロムビアからビデオ版、LD版が同時発売。現在はDVD版が発売されている。

スタッフ・キャスト[編集]

商品一覧[編集]

  • VHS
    • 水木しげるのビデオ版 妖怪画談/鬼太郎誕生編、1994年3月、COVC-4336
    • 水木しげるのビデオ版 妖怪画談/妖怪大戦争編、1994年3月、COVC-4337
  • LD
    • 水木しげるのLD版 妖怪画談、1994年3月、COLC-3100
  • DVD
    • 水木しげるのDVD版 妖怪画談、1998年6月、COBC-4015
    • 水木しげる 妖怪画談、2005年3月、COBC-4393
    • 水木しげる 妖怪画談、2010年11月、COBC-5851

脚注[編集]

  1. ^ a b c 足立 2010, pp. 33–34.
  2. ^ a b 志村 2002, p. 36-37.
  3. ^ トーハン調べ 1992年 年間ベストセラー
  4. ^ 宮内 健. “新書いま・むかし 盛衰を繰り返し、乱立時代を迎えて”. WEBマガジン「風」. 2016年5月22日閲覧。
  5. ^ 幸福論 2007, pp. 166–167.
  6. ^ 布枝 2008, p. 220.

参考文献[編集]

  • 志村有弘『水木しげるの魅力』勉誠出版、2002年7月。ISBN 4-585-09075-4 
  • 水木しげる『水木サンの幸福論』角川文庫、2007年4月。ISBN 978-4-04-192919-3 
  • 足立倫行『妖怪と歩く ドキュメント・水木しげる』新潮文庫、2010年4月。ISBN 978-4-10-102216-1 
  • 武良布枝『ゲゲゲの女房』実業之日本社、2008年3月。ISBN 978-4-408-10727-1 
  • 『妖怪まんだら 水木しげるの世界』世界文化社、2010年7月。ISBN 978-4-418-10121-4