唐音統籤

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唐音統籤』(とうおんとうせん)は、明代胡震亨編纂(1033巻)。幅広く豊富に網羅しており、唐代から五代に至るまでの三百余年間を総覧する詩歌の総集である。

全書は十干をもって紀と為し、「甲籤」~「壬籤」は各種詩体を集録、「甲籤」は帝王の詩集を集録、乙・丙・丁・戊の4籤は、唐の4期の詩歌を集録、「戊籤」は補足・余録、つまり五代の詩歌を集録、「己籤」は閨媛詩歌を集録、「庚籤」は僧侶・道士の詩歌を集録、「辛籤」は楽府・諧謔・歌謡・讖諺[注 1]を集録、「壬籤」は神仙鬼怪[注 2]の詩を集録、「癸籤」は詩話や評論である。唐詩詩学研究に不可欠の基本資料である。

胡震亨の没後、子孫・後人は『唐音統籤』全書の刊行普及を努めて図ったが、巻帙の繁多によって、清の終局の世まで願い通りにゆかず、ただ『唐音癸籤』33巻だけが最初に刻刊され、かつ内容が精緻であるため、今に至るまで単一で世間に行われ得ている。康煕年間に刊行印刷された『全唐詩』は、内府所蔵の本書と季振宜中国語版の『全唐詩稿』を種本として編集された[1]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 「諧謔」は詩歌の形式による即興のユーモア、「讖諺」は詩歌の形式による予言箴言格言の類。
  2. ^ 「鬼怪」は、幽霊や妖怪の類。

出典[編集]

  1. ^ 兪大綱中国語版の『紀唐音統籤』は、「1937年、兪大綱は故宮図書館に行って『唐音統籤』を閲読し、季振宜の『全唐詩』にも目を通した。その時すぐに、『四庫全書総目』提要と御定『全唐詩』の凡例・康煕御製『全唐詩序』の中に掲げてある『全唐詩』あるいは『全唐詩集』とは、みな季振宜の『全唐詩』を指し、現在、通行のいわゆるその御定『全唐詩』が、胡震亨の『唐音統籤』と季振宜の『全唐詩』に依拠して成立したものあると分かった。」と言っている。