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(こと)、事(じ)。

概要[編集]

以下は新漢語林(2008年)から引用した字義。

  1. こと。ものごと。ことがら。しごと、つとめ。できごと。まつりごと
  2. こととする(こととす)。専念する。努め行う。
  3. つかえる(つかふ)。
  4. 用いる。使う。使役する。
  5. とどまる。

大辞泉では主に二つの用法がある。

  1. 抽象的なもの(思考意識の対象や、現象行為性質など)。
  2. 形式名詞(他の語句が表す行為や事態の体言化)。

語源[編集]

日本語の「こと」は、言(こと)と同語源である[1]

字源[編集]

「事」はもと「吏」と同一の字で[2]の時代に分化した[3]。形の起源としては、史官を象徴するある種の道具を手に持ったさまを象るとされるが、具体的な由来は明らかではない[4][5]

仏教[編集]

事(じ)はに対する言葉。

は個別的具体的な事象・現象を意味し、は普遍的な絶待・平等の真理・理法を指す。このような概念はインド仏教では顕著ではなく、また漢訳仏典にも現れない中国仏教に独特のものである。
ことに華厳では、は融通無碍の関係にあると説き、四法界三重観門などの教理を作り上げて、普遍的なと個別的具体的なとか一体にして不可分であることを強調した。

  • 密教では、を摂持の義と解して、一切の事相がおのおのその体を摂持するから、これをとして、理の体を地水火風空識の六大とする。

出典[編集]

  1. ^ デジタル大辞泉-こと【事】
  2. ^ 于省吾 (1979). “釈古文字中付画因声指事字的一例”. 甲骨文字釈林. 北京: 中華書局. pp. 446–7 
  3. ^ 陳侃理 (2014). “里耶秦方与“書同文字””. 文物 2014 (9): 77–8. 
  4. ^ 林志強等 (2017). 《文源》評注. 北京: 中国社会科学出版社. p. 279. ISBN 978-7-5203-0419-1 
  5. ^ 葛亮 (2021). “古字新識(二十三)――説“中”“外””. 書与画 2021 (11): 49.