ヴィオラ協奏曲 (ウォルトン)

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イギリスの作曲家ウィリアム・ウォルトンによるヴィオラ協奏曲は、1929年に作曲された。アバコンウェイ卿夫人クリスタベル・マクラレンに献呈されているが、作品そのものは20世紀前半を代表する名ヴィオラ奏者、ライオネル・ターティスのために作曲された。だがターティスによって斥けられたため、初演の独奏者はパウル・ヒンデミットが務めた。ヒンデミットはその後も本作を擁護し続けた。

ウォルトンの最初の協奏曲であり、本作の作曲に当たって、尊敬するプロコフィエフヴァイオリン協奏曲第1番を手本としている。ウォルトンの協奏曲には、ほかにヴァイオリン協奏曲チェロ協奏曲ピアノ協奏曲である「協奏交響曲」がある。

ヴィオラ協奏曲は、ロマン派時代には今日レパートリーとなりうる作品がほとんど書かれておらず、20世紀になって復興したといえるジャンルである。ウォルトンの協奏曲はヒンデミットの協奏作品(『室内音楽第5番』、『白鳥を焼く男』など)、バルトークヴィオラ協奏曲とともにその先駆をなす作品であり、非常に重要なレパートリーともなっている。

録音では、ユーリ・バシュメット今井信子ウィリアム・プリムローズといったヴィオラ奏者によるものが有名であるが、ナイジェル・ケネディマキシム・ヴェンゲーロフユーディ・メニューインなど、ヴァイオリン奏者による録音も数多く行われている。

楽器編成[編集]

1961年にオーケストレーションが改訂され、その後はこの改訂版が演奏される。元は三管編成(トランペット3本を含む)であったが、この改訂でオーケストラの重厚すぎる部分が改められ、また編成にハープが加えられるなどの変更がなされている。以下は改訂版の編成である。

独奏ヴィオラ、フルート2(ピッコロ1持ち替え)、オーボエ2(コーラングレ1持ち替え)、クラリネット2(バス・クラリネット1持ち替え)、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニハープ弦五部(マークのある箇所のみ全員で演奏し、その他は第1ヴァイオリン4、第2ヴァイオリン3、ヴィオラ3、チェロ2、コントラバス2で演奏する)

楽曲構成[編集]

本作品は、以下のように標準的な3楽章構成をとる。

  1. Andante comodo
  2. Vivo, con molto preciso
  3. Allegro moderato