ミゾカクシ属

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ミゾカクシ属
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: キク目 Asterales
: キキョウ科 Campanulaceae
: ミゾカクシ属 Lobelia L.
  • 360-400種(本文参照)

ミゾカクシ属(みぞかくしぞく、溝隠属)あるいはロベリア属(学名:Lobelia)とは、キキョウ科の植物群の一部である。非常に多様な種を含む。花形は他のキキョウ科とは大いに異なり、左右相称の花をつける。

特徴[編集]

ミゾカクシ属の植物の花は、一般のキキョウ科が放射相称でツボ型、釣り鐘型の花をつけるのに対して、左右相称の唇花をつけるため、見かけでは全く異なって見える。別の科とする説もある。

花弁は下側3枚は基部で互いにつながり、先端が分かれ、全体として下側に巻いて唇弁を作る。上二弁は細くて左右に分かれ、唇弁の上側に伸びる。雄しべは雌しべの周りにしっかり巻くように並ぶ。それらは唇弁の上に伸びて、先端はやや下を向く。このような花の構造はクサトベラ科のものにも似ており、両者を類縁とする説もある。

ほぼ全世界に約200種が分布し、暖帯や熱帯に多い。形態は非常に多様で、日本のものでもサワギキョウLobelia sessilifolia)は直立する多年草で1mに達するが、ミゾカクシL. chinensis)は地を這うか細い草である。さらに小笠原諸島には低木状になるオオハマギキョウスウェーデン語版L. boninensis)がある。熱帯には大型になる種も多い(参照: #ジャイアントロベリア)。

ルリミゾカクシL. erinus)、L. richardsoniiL. validaなどが観賞用に栽培される他、ミゾカクシやサワギキョウなどは薬用植物として利用されている。

ジャイアントロベリア[編集]

アフリカには大型化する本属の草木[注 1]が複数種見られ、英語で俗にジャイアントロベリアgiant lobelia)と呼ばれる。その例は以下の通りである。

  • Lobelia gregoriana Baker f. (sv (シノニム: L. deckenii subsp. keniensis Mabb.[11]L. keniensis R.E.Fr. & T.C.E.Fr. (en) - ケニア山に生育する[12]。この草本が生育する環境は氷点下となることもあるが、数百枚の苞葉が積み重なって塔状となり、奥の子房を守る[13]
  • Lobelia lukwangulensis Edwards[14] (sv[注 3] - タンザニアのウルグル山地の標高1900-2450メートル地帯に生育する[5]
  • Lobelia mildbraedii Engl. (sv - ウガンダ、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、タンザニア、マラウイ、ルワンダの標高2000-3000メートル地帯に生育する[5]
  • Lobelia morogoroensis E.B.Knox & Pócs (sv[15]
  • Lobelia rhynchopetalum Hemsl. (en[16] - エチオピアシミエン山地英語版(関連項目: シミエン国立公園)に生育しており、ジャイアントロベリアの中では最も高く生長する種で、茎は木の幹のようになるが、あくまでも草である[17]
  • Lobelia stricklandiae Gilliland (sv - 中央アフリカ南部の標高約1500メートル地帯に生育する[5]
  • Lobelia stuhlmannii Schweinf. ex Stuhlmann (sv(シノニム: L. lanuriensis De Wild.[注 4])- ウガンダ西部、コンゴ民主共和国、ルワンダの標高2900-3900メートル地帯に生育する[5]
  • Lobelia telekii Schweinf. ロベリア・テレキイ英語版 - エルゴン山、ケニア山、アバーデア山地の標高2950-4550メートル地帯に生育する[5]
  • Lobelia wollastonii Baker f. (sv - ウガンダ・コンゴ民主共和国国境のルウェンゾリ山地やウガンダ・コンゴ民主共和国・ルワンダ国境のヴィルンガ山地、標高3350-4250メートル地帯に生育する[5]
  • Lobelia xongorolana Edwards[18] (sv[注 5] - アンゴラの標高1500-1800メートル地帯に生育する[5]

主な種[編集]

和名や学名カナ表記の横の注は、その呼称が見られる出典を表す。

ギャラリー[編集]

ジャイアントロベリア:

それ以外のもの:

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ ジャイアントロベリアを木[1]、その群生を「ロベリア林」とも表現するが[2]、「幹」は中空で[3]、実際は「茎」である[4]
  2. ^ Coe (1989), p. 265では種小名が "gibberoa" とされているが、原記載では giberroa である[8]
  3. ^ Coe (1989:265) では種小名が "lukwangutensis" とされている。
  4. ^ Coe (1989), p. 265 では種小名が "lanunensis" とされている。
  5. ^ Coe (1989), p. 265 では種小名が "xongoralana" とされている。

出典[編集]

  1. ^ 河合雅雄霊長類の行動特性と人類進化」『河合雅雄著作集. 4 (アフリカからの発想)』総合研究開発機構、1996年、104頁。ISBN 9781646423439https://books.google.com/books?id=L7I5bNJ6vx0C&q=ジャイアントロベリア+%22枯れた木%22 
  2. ^ 河合 (1996), p. 152.
  3. ^ 河合 (1996), p. 164.
  4. ^ 河合 (1996), p. 198.
  5. ^ a b c d e f g h i j Coe (1989), p. 265.
  6. ^ Angel, Heather (1998). How to Photograph Flowers. Mechanicsburg, PA: Stackpole Books. p. 91. ISBN 0-8117-2455-7. https://books.google.co.jp/books?id=Vrl13goK-VcC&dq=giant+lobelia+deckenii&hl=ja&source=gbs_navlinks_s 
  7. ^ Mercer, Graham (2007). Tanzania (Third Edition ed.). New Holland Publishers. p. 54. ISBN 1845377478. https://books.google.co.jp/books?id=npGVagkzHhoC&pg=PA54&q=giant+lobelia+deckenii 
  8. ^ “L. Giberroa, Hemsl.. Flora of Tropical Africa 3: 465–6. (1877). https://biodiversitylibrary.org/page/348666. 
  9. ^ "hehe" in Benson, T.G. (1964). Kikuyu-English dictionary. Oxford: Clarendon Press. p. 146. NCID BA19787203 
  10. ^ Leakey, L. S. B. (1977). The Southern Kikuyu before 1903. III. New York: Academic Press. p. 1324. ISBN 0-12-439903-7. https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=I5lyAAAAMAAJ&dq=munyururu&focus=searchwithinvolume&q=Lobelia  NCID BA10346810
  11. ^ a b 冨山 (2003), p. 159.
  12. ^ Hedberg, Olov (1964). Features of Afroalpine Plant Ecology: avec un résumé en française. Uppsala: Almqvist & Wiksells. p. 59. NCID BA50320710. https://books.google.co.jp/books?hl=ja&id=SoTwAAAAMAAJ&&q=giant+keniensis 
  13. ^ 湯浅浩史世界の不思議な植物: 厳しい環境で生きる』誠文堂新光社、2008年、20頁。ISBN 978-4-416-20801-4https://books.google.co.jp/books?id=b300DQAAQBAJ&dq=%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A2&hl=ja&source=gbs_navlinks_s 
  14. ^ William Henry Edwards or シデナム・エドワーズ
  15. ^ Knox (1993), p. 42.
  16. ^ Simon, Noël (1993). The Guinness Guide to Nature in Danger. London: Guinness Publishing. p. 224. ISBN 0-85112-708-8. https://books.google.co.jp/books?id=CTvwAAAAMAAJ&q=rhynchopetalum+giant&dq=rhynchopetalum+giant&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwjKnKH7lY_cAhWLM94KHZMSDWQQ6AEIQzAD 
  17. ^ 湯浅浩史世界の葉と根の不思議: 環境に適した進化のかたち』誠文堂新光社、2012年、16頁。ISBN 978-4-416-21211-0https://books.google.co.jp/books?id=AH00DQAAQBAJ&dq=%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%82%A4%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%88%E3%83%AD%E3%83%99%E3%83%AA%E3%82%A2&hl=ja&source=gbs_navlinks_s 
  18. ^ William Henry Edwards or シデナム・エドワーズ
  19. ^ a b c d e f g h i j k ブリッケル (2003).
  20. ^ a b c d e f g h i j 米倉 & 梶田 (2003–2021)
  21. ^ 林弥栄、古里和夫 監修『原色世界植物大圖鑑』北隆館、1986年、252頁。 
  22. ^ William Henry Edwards or シデナム・エドワーズ
  23. ^ 佐野泰、塚本洋太郎 著「ローベリア〈属〉」、相賀徹夫 編『園芸植物大事典 5』小学館、1989年、638–640頁。ISBN 4-09-305105-4 
  24. ^ 冨山 (2003), p. 157.
  25. ^ 無題ドキュメント (水野一晴のホームページ). 2018年7月7日閲覧。

参照文献[編集]

英語:

  • The Plant List (2013). Version 1.1. Published on the Internet; http://www.theplantlist.org/ (accessed 7th July).(正名とシノニムの関係はこれに拠った。)

日本語:

関連項目[編集]