ボイリング・ポイント/沸騰

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ボイリング・ポイント/沸騰
Boiling Point
監督 フィリップ・バランティーニ
脚本
  • フィリップ・バランティーニ
  • ジェームズ・カミングズ
製作
  • ヘスター・ルオフ
  • バート・ラスポリ
製作総指揮
出演者
音楽
  • アーロン・メイ
  • デヴィッド・リドリー
撮影 マシュー・ルイス
編集 アレックス・ファウンテン
製作会社
  • Ascendant Films
  • Burton Fox Films
配給
公開
上映時間 95分[2]
製作国 イギリスの旗 イギリス
言語 英語
興行収入
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ボイリング・ポイント/沸騰』(ボイリングポイントふっとう、Boiling Point)は、2021年イギリスドラマ映画。フィリップ・バランティーニ監督の長編2作目の作品で[2]、出演はスティーヴン・グレアムヴィネット・ロビンソンなど。 クリスマス前の金曜日、客でにぎわうロンドンの高級レストランを舞台に、次々とトラブルに見舞われるオーナーシェフと従業員たちの沸騰寸前の人間模様を90分ワンカットで描いたアンサンブル・ドラマ[2]。バランティーニ監督が2019年に発表した同名の短編映画を自ら長編映画化した作品である[4]

2021年8月23日チェコ第55回カルロヴィ・ヴァリ国際映画祭英語版で初上映された[1]

ストーリー[編集]

アンディはロンドンでも人気の高級レストランのオーナー・シェフだが、この数ヶ月は絶不調だった。妻子と別居して家を出たがアパートを借りる算段もろくに出来ずに、店の事務所で寝起きし、寝不足で頭が回らず愛する息子との面会もすっぽかした。一年で一番忙しいクリスマス前の金曜日に、遅刻して出勤すると、仕込み中の店には保健所の査察が入っていた。ずっと維持して来た最高評価の5点から、3点に下げられてショックを受けるスタッフたち。原因の大半は、アンディが義務の書類の記入を怠ったためだった。

元シェフで有名タレントのスカイが来店すると、当日に聞かされ、準備が出来ないと苛立つアンディ。アンディは、スカイの店から独立したシェフで、二人の間にはわだかまりがあるのだ。愛人のグルメ評論家を連れて嫌味に批評するスカイ。

常に持ち歩く白い水筒に酒を入れ、飲み続けるアンディ。スーシェフ(副料理長)の有能なカーリーの働きで店は回っているが、彼女には引き抜きの話が来ており、残留の条件として昇給を願い出ていた。しかし、その話を支配人と詰める事も怠るアンディ。

スカイはタレントとして顔は売れているが、実は破産しかけており、アンディの独立時に融資した20万ドルの返還を要求して来た。それが無理なら、アンディの店の経営に加えろと主張するスカイ。そんな時、客の一人が発作を起こして救急車で運ばれた。忙しい中で、アンディがアレルギーの指示を見逃したのだ。

アンディが責任を取る事は、店の評判に関わり、経営に参加するつもりのスカイにとっても不利となる。責任を全て、無実のスーシェフに被せろとアドバイスするスカイ。それを知ったスーシェフのカーリーは、怒り心頭で他店への移籍を決意した。

疲れ切り、事務所で麻薬を吸って、妻に電話するアンディ。電話越しでも、アンディの飲酒と麻薬に気づく妻。謝って、リハビリ施設に通うと約束し、酒と麻薬を屑籠に捨てるアンディ。だが、厨房に戻ろうとしたアンディは通路に倒れ、動かなくなった。

キャスト[編集]

※括弧内は日本語吹替[5][6][7]

  • アンディ・ジョーンズ: スティーヴン・グレアム森川智之) - オーナーシェフ。
  • アリステア・スカイ: ジェイソン・フレミング堀内賢雄) - アンディの元同僚のライバルシェフ。
  • カーリー: ヴィネット・ロビンソン笹島かほる) - 副料理長。アンディの頼れる相棒。
  • フリーマン: レイ・パンサキ英語版峰晃弘) - 肉料理担当のシェフ。
  • ベス: アリス・フィーザム(なかせひな) - フロア担当のマネージャー。共同出資者の娘。
  • カミール: イズカ・ホイル英語版平山笑美) - フランス出身の新しいサラダ担当シェフ。
  • ビリー: タズ・スカイラー天﨑滉平) - バーテンダー。
  • サラ・サウスワース: ルルド・フェイバース英語版兼田めぐみ) - 有名グルメ評論家。
  • エミリー: ハンナ・ウォルターズ英語版浅井晴美) - パティシエ。
  • ジェイミー: スティーブン・マクミラン(福原かつみ) - 見習いパティシエ。
  • トニー: マラカイ・カービー英語版川端快彰) - 牡蠣担当のシェフ。
  • ディーン: ゲイリー・ラモント(高橋ちんねん) - ゲイのウェイター。
  • アンドレア: ローリン・アジューフォ(大谷理美) - アフリカ系のウェイトレス。
  • ロビン: エイン・ローズ・デイリー英語版(北村さちこ) - 白人ウェイトレス。
  • フランク: ロビン・オニール(庄司 然) - 恋人にプロポーズする予定の若い男性。
  • メアリー: ローズ・エスコダ(高宮彩織) - フランクの恋人。ナッツ・アレルギー。
  • ジェイク: ダニエル・ラカイ(中務貴幸) - アフリカ系の移民。皿洗いとゴミ捨て担当。遅刻の常習犯。
  • ソフィア: ガラ・ボテロ(和優希) - 移民。皿洗い担当。妊娠中。
  • ラヴジョイ: トーマス・クームズ(西垣俊作) - 保健所の役人。店の衛生環境に苦言。
  • ケヴィン: ロブ・パーカー(菊池康弘) - 人種差別主義者の客。
  • マーク: フィリップ・ヒル=ピアソン(荻原秀樹) - SNSのインフルエンサー。
  • マイケル: ジェイ・ジョンソン(奥山晃一) - SNSのインフルエンサー。
  • ティム: キーラン・アークハート(磯部勇希) - SNSのインフルエンサー。
  • ホリー: ハンナ・トレイレン(天沢カンナ) - ジェイクのセフレ。
  • フィリー: アヤンナ・コールマン=ポテンパ(希山明里) - アメリカ人の客。
  • ローラ: キメーシャ・キャンベル(長谷川りく) - 救急隊員。
  • キャスリン: ジーナ・ライセン(秋田奈帆子) - 救急隊員。
  • オリー: アレックス・ヒース(塩入雄介)
  • ウィリー: 演者不明(森田竜雅)

作品の評価[編集]

映画批評家によるレビュー[編集]

Rotten Tomatoesによれば、71件の評論のうち高評価は99%にあたる70件で、平均点は10点満点中7.9点、批評家の一致した見解は「最初から最後まで手に汗握る展開の『ボイリング・ポイント/沸騰』は、大胆な形式のアプローチでスリリングな綱渡りの物語を支えている。」となっている[8]Metacriticによれば、13件の評論のうち、高評価は9件、賛否混在は4件、低評価はなく、平均点は100点満点中73点となっている[9]

受賞歴[編集]

部門 対象者 結果
第75回英国アカデミー賞[10] 主演男優賞 スティーヴン・グレアム ノミネート
キャスティング賞英語版 キャロリン・マクラウド
英国作品賞
新人賞英語版 ジェームズ・カミングス(脚本)
ヘスター・ルオフ(製作)
第24回英国インディペンデント映画賞英語版[11] 作品賞英語版 ノミネート
監督賞英語版 フィリップ・バランティーニ
主演男優賞英語版 スティーヴン・グレアム
助演男優賞英語版 レイ・パンサキ英語版
助演女優賞英語版 ヴィネット・ロビンソン 受賞
ブレイクスルー演技賞英語版 ローリン・アジューフォ ノミネート
キャスティング賞英語版 キャロリン・マクラウド 受賞
撮影賞英語版 マシュー・ルイス
美術賞英語版 エイミー・ミーク ノミネート
音響賞英語版 ジェームズ・ドレイク
ロブ・エントウィッスル
キフ・マクマナス
受賞
ブレイクスルー製作者賞英語版 ヘスター・ルオフ ノミネート

テレビシリーズ[編集]

映画の続編としてBBCで全5話のテレビシリーズが製作されることが報道された。映画のエンディングから半年後を舞台に、副料理長だったカーリーが自身のレストランで料理長を務めるまでを描く。映画とは異なってワンカットではないが「映画の本質であり魂であった純粋な自然主義を補完するような非常に長いショットとカメラテクニック」を特徴とするとしている[12]

出典[編集]

  1. ^ a b Lodge, Guy (2021年8月27日). “‘Boiling Point’ Review: Gordon Ramsay Has Nothing on the Kitchen Nightmares in This Heated One-Shot Drama” (英語). Variety. https://variety.com/2021/film/reviews/boiling-point-review-1235049897/ 2022年9月6日閲覧。 
  2. ^ a b c 映画 ボイリング・ポイント/沸騰 (2021)について”. allcinema. 2022年9月6日閲覧。
  3. ^ a b Boiling Point” (英語). Box Office Mojo. 2022年9月6日閲覧。
  4. ^ ボイリング・ポイント/沸騰”. WOWOW. 2023年6月26日閲覧。
  5. ^ ボイリング・ポイント/沸騰 ブルーレイ”. ハピネットピクチャーズ. 2022年9月24日閲覧。
  6. ^ ボイリング・ポイント/沸騰 [Blu-Ray]”. amazon.co.jp. 2022年10月12日閲覧。
  7. ^ 日本語吹き替え制作&豪華声優キャスト決定!”. セテラ・インターナショナル. 2022年11月10日閲覧。
  8. ^ "Boiling Point". Rotten Tomatoes (英語). 2022年9月6日閲覧
  9. ^ "Boiling Point" (英語). Metacritic. 2022年9月6日閲覧。
  10. ^ 2021年 第75回 英国アカデミー賞”. allcinema. 2022年9月6日閲覧。
  11. ^ British Independent Film Awards 2021: the winners in full” (英語). British Film Institute (2021年12月6日). 2022年9月6日閲覧。
  12. ^ Goldbart, Max (2022年10月21日). “‘Boiling Point’ BBC TV Series Greenlit With Stephen Graham Reprising Role & Philip Barantini Directing” (英語). Deadline.com. https://deadline.com/2022/10/stephen-graham-philip-barantini-boiling-point-bbc-1235151708/ 2023年6月26日閲覧。 

外部リンク[編集]