プリンス・オブ・ウェールズ (空母)

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プリンス・オブ・ウェールズ
基本情報
建造所 ロサイス造船所英語版
運用者  イギリス海軍
艦種 航空母艦
級名 クイーン・エリザベス級航空母艦
前級 インヴィンシブル級航空母艦
艦歴
発注 2008年5月20日
起工 2011年5月26日
進水 2017年12月21日
就役 2019年12月10日
要目
基準排水量 45,000トン
満載排水量 67,669トン
全長 284m
水線幅 39m
吃水 9.9m
最大速力 26 ノット
航続距離 10,000海里 (19,000 km)
乗員 約1600人 うち操艦要員:679名[1]
兵装
搭載機
  • F-35BV/STOL機
  • ヘリコプター
    (合計して平時約40機、戦時には最大48機)
  • テンプレートを表示

    プリンス・オブ・ウェールズ英語: Prince of Wales;R09)は、イギリス海軍航空母艦クイーン・エリザベス級航空母艦の2番艦であり[2][3]、同じ艦名として戦列艦プリンス・オブ・ウェールズ」から数えて8代目になる。

    設計[編集]

    本艦は、姉妹艦「クイーン・エリザベス」と並び、イギリス海軍史上最大の軍艦になる予定である。36機のF-35B統合打撃戦闘機と12機のヘリコプターを搭載する能力を備える。

    船体は4つのセクションがポーツマス、ロサイス、バーロー・イン・ファーネス、クライドでBAEシステムズVT グループによって建造される。最終組み立てを行うロサイスの1号乾ドックでは、「クイーン・エリザベス」と「プリンス・オブ・ウェールズ」のために改修工事が行われた[4]

    艦歴[編集]

    建造[編集]

    プリンス・オブ・ウェールズ、工事中 Rosyth Dockyard(2014年12月)
    プリンス・オブ・ウェールズ、工事中(2017年8月)

    2007年7月25日、デズ・ブラウン英語版国防大臣は、38億ポンドで2隻を発注した。このニュースは政治家、労働組合に歓迎された[5]。両艦ともポーツマス海軍基地を拠点とする予定である[6]。この時点の計画では空母はスキージャンプ飛行甲板を備え、艦載ヘリコプターのほかF-35のV/STOL型であるF-35Bであった。

    2008年12月11日、ジョン・ハットン国防大臣は、2隻の就航が当初予定の2014年と2016年よりも1年か2年遅れると発表した[3]

    2010年10月25日、戦略防衛・安全保障見直し2010英語版に伴い、イギリス海軍はクイーン・エリザベス級航空母艦2隻の同時現役運用を断念すると発表した。運用される航空母艦を1隻にすることで、高騰するF-35のコスト76億ポンドを削減でき、「プリンス・オブ・ウェールズ」を、2018年に退役する揚陸ヘリ空母オーシャン」の代替艦ともすることで、さらに6億ポンドの削減になると見積もられている。同時に本艦の搭載機がSTOVL機のF-35BからCTOL型のF-35Cに変更された。これに合わせて発艦方法がスキージャンプ方式から電磁式航空機発艦システム(EMALS,電磁式カタパルト)に変更され、対応する改修が行われた後2019年にCTOL空母として就役することになっていた[7]。2010年11月25日には、英『ガーディアン』電子版が、「プリンス・オブ・ウェールズ」がインド海軍に売却される可能性があると報じた。

    2012年5月10日、F-35Cの実戦配備もまた2023年まで遅れる見込みのため、イギリス政府は本艦艦載機を再度F-35Bへ変更すると発表した。またフィリップ・ハモンド国防大臣は、STOVL型のF-35Bに変更されることにより、CTOL機向けの電磁式カタパルトやアレスティング・ワイヤーを装備しないことを示唆している[8]

    2015年の戦略防衛・安全保障見直し2015英語版では2隻ともが人員を充足されイギリス海軍に就役し、常時最低1隻を運用可能とする方針が示された。

    2017年9月8日に進水式が行われ、12月21日に建造ドッグより出渠した[9]


    2019年9月19日に試験航海に出航。12月10日にポーツマス海軍基地にて就役した。式典にはチャールズ皇太子カミラ妃が出席した。

    損傷[編集]

    2022年8月27日、「プリンス・オブ・ウェールズ」はアメリカ東海岸での演習航海「ウエストラント22(Westlant 22)」に向かうためにポーツマスを出航したが、出航直後に右舷推進部の結合部や舵に損傷が見つかった。演習航海は中止され、代わって「クイーン・エリザベス」が9月8日に出航した。なお、「ウエストラント22」で予定された、「プリンス・オブ・ウェールズ」のF-35Bの運用能力認定も延期された[10]。この損傷を英国放送協会(BBC)は「アメリカへ演習に出発した直後に故障し、足を引きずりながら岸に戻ってきた」と揶揄した[11]。「プリンス・オブ・ウェールズ」はロサイスロサイス造船所英語版に入渠し修理を行ったが、「クイーン・エリザベス」の部品取りにされているとの情報もあり、ベン・ウォーレス国防大臣が一時的な応急処置と釈明する事態となった。約9か月の修理と能力強化を経て、「プリンス・オブ・ウェールズ」は2023年7月21日に出渠し、7月28日には公式TwitterCH-47が飛行甲板に着艦する画像を投稿。7月31日には映画『トップガン マーヴェリック』に登場する台詞をパロディした文書を投稿して、飛行甲板の運用を再開したことをアピールした[12]。「プリンス・オブ・ウェールズ」はポーツマス海軍基地で、飛行甲板整備を行う予定である[11]

    ギャラリー[編集]

    脚注[編集]

    出典[編集]

    1. ^ built by the nation for the nation aircraft carrier alliance[リンク切れ]
    2. ^ Parliamentary Debates (Hansard) (イギリス英語). House of Commons. 25 July 2007.
    3. ^ a b Carriers to enter service late” (英語). BBC News. BBC (2008年12月11日). 2023年9月18日閲覧。
    4. ^ Harding, Thomas (2007年7月26日). “£4bn carriers 'will be jewel in Navy's crown'” (英語). The Daily Telegraph. Telegraph Media Group Ltd. 2009年2月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年7月27日閲覧。
    5. ^ MoD confirms £3.8bn carrier order” (英語). BBC News. BBC (2008年7月25日). 2023年9月18日閲覧。
    6. ^ Portsmouth Naval Base Past, Present and Future” (英語). Portsmouth Naval Base facts on MOD. 2006年9月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年12月11日閲覧。
    7. ^ 「海外艦艇ニュース 英海軍がクイーン・エリザベス級空母を1隻断念」『世界の艦船』第719集(2010年2月号)海人社
    8. ^ 英国:F-35戦闘機の機種変更 開発3年遅れで”. 毎日jp. 毎日新聞社 (2012年5月12日). 2012年7月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年7月12日閲覧。
    9. ^ イギリスの空母プリンス・オブ・ウェールズ、出渠して岸壁へ”. おたくま経済新聞 (2017年12月25日). 2023年9月18日閲覧。
    10. ^ 「海外艦艇ニュース 英空母プリンス・オブ・ウェールズが故障」『世界の艦船』第985集(2022年12月号) 海人社 P.165
    11. ^ a b 乗りものニュース編集部 (2023年7月27日). “英国海軍の空母「プリンス・オブ・ウェールズ」9か月の修理を終え復活! 今度こそ大丈夫!?”. 乗りものニュース. https://trafficnews.jp/post/127125 2023年7月30日閲覧。 
    12. ^ 乗りものニュース編集部 (2023年8月3日). “空母「プリンス・オブ・ウェールズ」“飛行士の皆さん”と『トップガン』パロディで飛行甲板の復活をアピール”. 乗りものニュース. https://trafficnews.jp/post/127268 2023年9月16日閲覧。 

    外部リンク[編集]