デュレク・ベレット

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Durek Verrett
生誕 Durek David Verrett
(1974-11-17) 1974年11月17日(49歳)
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国カリフォルニア州サクラメント
職業 作家、シャーマン
配偶者
Zaneta Marzalkova
(m. 2005; div. 2009)
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デュレク・ベレット(Derek Verrett 1974年11月17日生まれ)は、アメリカの実業家、作家であり自称シャーマンである。

対面またはオンラインでヒーリングやメディテーションをクライアントに提供しており、セレブではグウィネス・パルトローセルマ・ブレアニーナ・ドブレフジミー・チェンバレンなどがクライアントとして知られる[1]

ノルウェー王女との交際でも有名だが、同国のメディアからは詐欺師として批判されている[2][3][4]。彼の唯一の著書についても「ナンセンス、無価値、下ネタ」[5]、あるいは「狂人のたわごと」[6]と評されている。

バックボーン[編集]

ベレットはサクラメントに近いフォスターシティで生まれ育ち、2014年に出生名のデュレク・デイヴィッド・ベレットからいまのデュレク・ベレットに名前を変えた。ベレットによれば彼は一族で六代目のシャーマンである[7]。また母はノルウェイ人とインド人を祖先に持ち、父はハイチ系だと主張している。2009年のインタビューでは「ハイチのブードゥーとノルウェイの伝統医学にルーツを持っている」と語っている。歴史研究者のマリーン・ケーニグ(Marlene Koenig)によれば、ベレットの父方の祖先は200年前までさかのぼってもルイジアナ、ヴァージニア、ジョージアに縁があり、ハイチとのつながりは全くない。ベレットの父はデイヴィッド・ベンジャミン・ベレット(1929年生まれ、ニューオーリンズ出身)、母はその最初の妻であるシェイラ・G・ファーマー(1943年生まれ、マンハッタン出身)である。母はその後、ヴェルーシュカ・ウルクハート(Veruschka Urquhart)の名をなのっている。ベレットにはアンジェリーナ・ベアトリス(1973年生まれ)という姉がいる

ベレットは、アメリカで自分が主催したパーティーの会場だった廃屋の放火事件により、5年の懲役の有罪判決を受けたと語っている[8]。彼によれば、仮釈放されるまで実際に1年間、服役していたという[9][10][11][12]

ベレットには過去にロサンゼルスに住んでいたチェコ国籍の女性との結婚歴がある。2人は2005年に結婚したが、そのとき彼女は21歳だった。2008年に、ベレットは当時の妻が出入国管理局に不法滞在者として摘発され、収監したのち国外退去処分になったことを明かしている。ベレットは2009年に離婚したが、後に彼は妻から「搾取」されていたと語った[13]。ベレットにはハンク・グリーンバーグという名のマッサージ師のボーイフレンドもいた。2015年には結婚を予定していたが、結局その前に2人は婚約を解消した。グリーンバーグは後にベレットが人の心を操るのがたくみなだけでなく、粗暴で身の危険を感じたと告発している[14]。ベレットは当時マネージャーであったティアナ・グリエゴ(Tiana Griego)と6年間同棲していたが、彼女は次のような証言をしている。「デュレクは私の全人生をコントロールした。まるで彼の目に止まるもの全てに嫉妬しているかのようだった。私にはまじめな恋愛関係を築くことも息子を育てることも許されなかった。結局はデュレクがすべてだった」[15][16][17]

キャリア[編集]

ベレットは一時期モデルとしても活動しており、テレビ番組にも出演歴がある。バニティ・フェア誌は、ベレットがバイセクシュアルであり、かつ多岐にわたる初期のキャリアが「新世代のシャーマンという彼のブランドをセレブたちに売り込むのに役立ち、それで彼はある意味この界隈で名を挙げたのである」と評している[18]

ベレットの公式ウェブサイトでは、彼のシャーマニズムを伝道するスタイルについて「実用的」(no nonsense)と表現している[19]。まったくの素人だけでなくよりスピリチュアル的に段階の進んだ人やその中間にいるすべての人に向けて、スピリチュアル的なものを身に着け理解できるようにすることで、その神秘性をはぎとった、とベレットは主張している。ベレットによれば自分の「真のミッションは古代で実践されていたシャーマニズムをメインストリームに持ち込み、自己と他者を愛し受け入れることで人々が『光を得る』のを手助けすること」なのである[20]

ベレットは「クロアチアのスザンナ・フォン・ラディチ王女」を名乗るアメリカ人女性からスピリチュアルなイニシエーションを受けたと証言している。ただしファクトチェックを行うwebサイト「Vantrú」によれば、この女性は「王女を自称する詐欺師」である[2][21]

ベレットはイスラエルのシャミル医療センターで勤務していたとも語っているが、病院側はそのような事実はないと否定している[22]

2019年、ベレットの著書『Spirit Hacking 』がノルウェイで刊行される予定だったが、大手出版社のカペレン・ダムが内容に関する懸念から出版予定の一週間前に出版をとりやめ、後にもっと小規模な出版社から刊行されることになった。本書でベレットは、化学療法ががん患者に使われるのは、医者が患者を助けたいのではなく金儲けができるからだと主張している。また不特定多数とのカジュアルなセックスは地下の精霊をひきよせ、女性の膣の中に痕跡を残してしまうのだが、ベレットはそれを「きれいにする」エクササイズを有償で提供している[23]。さらにベレットは原子を回転させることにより、文字通り年齢を下げられると主張してもいる[24]。ノルウェーの大手紙タクプラデットは、この本について「狂人のたわごと」と評価し、ヴェルデンス・ガング紙は「ナンセンス、無価値、下ネタ」[6]だらけであり、オリジナリティもなく「(ニューエイジのような)オルタナティブ・カルチャーの最もシニカルな側面を焼き直している」だけと評している[5]

Spirit Hacking』のなかでベレットは自分が27歳としてよみがえったと主張している。またアメリカ同時多発テロも事件が起こる二年前から予知していたが、全ての人が「運命を受け入れ」なければならず、そこに介入するのは自分の役割ではないため介入はしなかった[7]

ベレットは自分がレプティリアンであると語り、さらにこう述べている。「私はレプティリアンとアンドロメダのハイブリッド種で、旧世界からきた古代の精霊のエネルギーを自らに宿している/私たちの種族については多くの嘘がはびこっている/私たちは存在のクラスター〔群れ〕であり、それが何を意味するかといえば、私たちは人々の解放に資する構造をつくりだすためにここにいる/レプティリアンはこのシステムを完全に刷新するためにここにいる」[25]。さまざまな分野の過激派を研究するジョン・ファーセス(John Færseth)によれば、ベレットのレプティリアン観は、デイビッド・アイクが提唱したレプティリアンによる陰謀説がベースになっている[26][27]

ベレットは、第5世代移動通信システム(5G)に関するテクノロジーは、「この星を奴隷化しようとする存在」による陰謀という考えも語っている[25]

ノルウェー王女との交際[編集]

ベレットはノルウェー王女のマッタ・ルイーセと交際しており、2022年には婚約を発表した[28]。2人の交際は一挙手一投足がメディアを通じて観察され、多くのノルウェー人がベレットを「いかさま師」と呼んでその交際に反対している[29]。ベレットもルイーセ王女も、2人の交際が歓迎されていないことは承知しており、そのことに様々なニュースメディアでオープンな反応をみせている[30][31]。ベレットはまだ自分が幼いころに母親がノルウェー王女との婚姻を予知していたと主張している[12]

ノルウェー国内ではベレットは強い批判にさらされており[6][32][21]、ノルウェーのメディアや識者からは「詐欺師」として扱われている[3][2][4]。マッタ・ルイーセとベレットは共同で2019年に「プリンセスとシャーマン」と題したセミナーを開催し、多方面から批判を浴びた[33][34][35][36]

2023年9月13日、マッタ・ルイーセと2024年8月31日に結婚することを連名で発表した [37]

著名な出版物[編集]

  • Spirit Hacking: Shamanic Keys to Reclaim Your Personal Power, Transform Yourself, and Light Up the World (Ed. St. Martin's Essentials, 2019).[38] ISBN 1250217105

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Jessica Bennett (2020年7月3日). “The Shaman of Instagram”. nytimes.com. https://www.nytimes.com/2020/07/03/style/self-care/durek-verrett-instagram-shaman.html 2022年6月12日閲覧。 
  2. ^ a b c Vantrú: The sham of the shaman”. vantru.is. 2022年6月11日閲覧。
  3. ^ a b Durek Verrett er en svindler”. Finansavisen (2019年10月25日). 2022年6月11日閲覧。
  4. ^ a b Nordbø, Dagfinn. “Sjarlatan Durek”. Utrop. https://www.utrop.no/plenum/ytringer/193207/ 2022年6月7日閲覧. "han er en svindler, en sjarlatan og en kvakksalver" 
  5. ^ a b “Sprøyt, svada og griseprat”. VG. https://www.vg.no/rampelys/bok/i/6jMXGz/bokanmeldelse-sjamanens-reise-av-sjaman-durek-snakk-med-en-svulst 2022年6月7日閲覧。 
  6. ^ a b c Krøger, Cathrine (2019年10月15日). “Gal manns tale”. Dagbladet.no. 2022年6月8日閲覧。
  7. ^ a b “Smålig skepsis mot den synske sjamanen som overlever døden og forutser terror”. Nettavisen. https://www.nettavisen.no/okonomi/smalig-skepsis-mot-den-synske-sjamanen-som-overlever-doden-og-forutser-terror/s/12-95-3423685020 2022年6月7日閲覧。 
  8. ^ “Prinzessin Märtha Louise: Durek Verrett spricht über seine Zeit im Gefängnis [Princess Märtha Louise: Durek Verrett talks about his time in prison]”. https://www.24royal.de/norwegen/durek-verrett-prinzessin-maertha-louise-gefaengnis-haft-jugend-strafe-royal-news-oslo-91477642.html 2022年6月9日閲覧。 
  9. ^ “Einzelhaft & Zwangsjacke: Ihr Durek berichtet über traumatische Gefängniszeit”. Bunte. https://www.bunte.de/royals/royals-weltweit/norwegisches-koenigshaus/maertha-louise-von-norwegen-ihr-durek-berichtet-ueber-traumatische-gefaengniszeit.html 2022年6月7日閲覧。 
  10. ^ “- Jeg satt et år i fengsel [– I served one year in prison]”. https://www.seher.no/kjendis/jeg-satt-et-ar-i-fengsel/75799722 2022年6月7日閲覧。 
  11. ^ “Efter kæmpe tragedie: Nu er hun forlovet med udskældt shaman”. https://ekstrabladet.dk/underholdning/kongelige/udenlandskekongelige/efter-kaempe-tragedie-nu-er-hun-forlovet-med-udskaeldt-shaman/9287221 2022年6月7日閲覧。 
  12. ^ a b “Der Verlobte von Prinzessin Märtha Louise von Norwegen sass im Gefängnis [Princess Märtha Louise of Norway's fiancé served time in prison]”. https://www.20min.ch/story/der-verlobte-von-prinzessin-maertha-louise-von-norwegen-sass-im-gefaengnis-820414223218 2022年6月10日閲覧。 
  13. ^ “Vært gift tidligere: - Utnyttet meg”. Dagbladet. https://www.dagbladet.no/kjendis/vaert-gift-tidligere-utnyttet-meg/76164265 2022年6月7日閲覧。 
  14. ^ “Verretts eks-kjæreste har mottatt trusler om søksmål etter uttalelser om Durek Verrett”. Nettavisen. https://www.nettavisen.no/livsstil/verretts-eks-kjareste-har-mottatt-trusler-om-soksmal-etter-uttalelser-om-durek-verrett/s/12-95-3423973341 2022年6月8日閲覧。 
  15. ^ “- Märtha og Durek truer meg med rettssak”. Seher.no. https://www.seher.no/kjendis/martha-og-durek-truer-meg-med-rettssak/73044449 2022年6月8日閲覧。 
  16. ^ “Märtha Louise och shamanen i ny pinsam skandal”. Allt om kungligt. https://alltomkungligt.se/martha-louise-och-shamanen-i-ny-pinsam-skandal/ 2022年6月8日閲覧。 
  17. ^ Prinzessin Märtha Louise: Schwere Vorwürfe gegen Durek Verrett”. Adelswelt. 2022年6月8日閲覧。
  18. ^ VANITY FAIR” (英語). Shaman Durek (2020年12月8日). 2021年7月26日閲覧。
  19. ^ About” (英語). Shaman Durek. 2021年7月26日閲覧。
  20. ^ Why shamanism is red hot right now: 12 things you need to know” (英語). Los Angeles Times (2019年12月20日). 2019年12月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月2日閲覧。
  21. ^ a b Klausen. “Kurerer kreft om den syke har sterk nok vilje til å helbrede seg selv”. Fri tanke – nettavis for livssyn og livssynspolitikk. 2022年6月11日閲覧。
  22. ^ “Israelsk sykehus avviser at sjaman Durek jobbet for dem”. Nettavisen. https://www.nettavisen.no/nyheter/israelsk-sykehus-avviser-at-sjaman-durek-jobbet-for-dem/s/12-95-3423687258 2022年6月7日閲覧。 
  23. ^ “Sjaman Dureks bok stoppes”. Aftenposten. https://www.aftenposten.no/kultur/i/wP5WzG/sjaman-dureks-bok-stoppes 2022年6月7日閲覧。 
  24. ^ “Märtha’s shaman boyfriend says he can turn atoms”. https://norwaytoday.info/news/marthas-shaman-boyfriend-says-he-can-turn-atoms/ 2022年6月7日閲覧。 
  25. ^ a b “Durek Verrett erklærer seg selv som romvesen – og går til angrep på 5G-nettet: Prinsesse Märtha Louises kjæreste knytter seg til notorisk konspirasjonsteoretiker og antisemitt [Durek Verrett proclaims himself to be a Reptilian – and attacks 5G: Princess Märtha Louise's boyfriend is associated with a notorious conspiracy theorist and anti-Semite]”. Nettavisen. https://www.nettavisen.no/livsstil/durek-verrett-erklarer-seg-selv-som-romvesen-og-gar-til-angrep-pa-5g-nettet/s/5-95-311994 2022年6月10日閲覧。 
  26. ^ “Sjaman Durek Verrett står frem som reptil”. ABC Nyheter. https://www.abcnyheter.no/nyheter/kultur/2021/10/04/195792137/sjaman-durek-verrett-star-frem-som-reptil 2022年6月7日閲覧。 
  27. ^ “Durek Verrett: – Jeg er en hybrid av reptil og Andromeda”. NRK. https://www.nrk.no/kultur/durek-verrett_-_-jeg-er-en-hybrid-av-reptil-og-andromeda-1.15676780 2022年6月10日閲覧。 
  28. ^ Cathrine Gonsholt Ighanian, Marthe Stoksvik, Camilla Norvik and Jørn Pettersen (2022年6月7日). “Prinsesse Märtha Louise og Durek Verrett er forlovet” (ノルウェー語). Verdens Gang. 2022年6月7日閲覧。
  29. ^ “Prinses Märtha Louise (50) heeft zich verloofd met omstreden sjamaan Durek Verrett (47): een relatie die al heel wat ‘hobbels’ moest trotseren”. Nieuwsblad. https://www.nieuwsblad.be/cnt/dmf20220607_96463269 2022年6月8日閲覧. "Vele Noren aanzien hem als een charlatan" 
  30. ^ Thompson. “Gwyneth Paltrow's spirit guide, Shaman Durek, shares his simple guide to re-centering yourself” (英語). Glamour UK. 2021年7月26日閲覧。
  31. ^ Bennett, Jessica (2020年7月3日). “The Shaman of Instagram” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2020/07/03/style/self-care/durek-verrett-instagram-shaman.html 2021年7月26日閲覧。 
  32. ^ Husøy, May Synnøve Rogne Eirik. “Märthas sjaman-kjæreste sier han kan snu atomer – fysikkprofessor kaller det "sludder"”. Aftenposten. 2022年6月11日閲覧。
  33. ^ Nikolaisen, Rudi (2019年5月21日). “Sjaman-svada fra Märtha og Durek”. itromso.no. 2022年6月11日閲覧。
  34. ^ Hirsti, Kristine (2019年5月13日). “Kritiserer 'The Princess and The Shaman': – Bruker rått det at hun er kongelig”. NRK. 2022年6月11日閲覧。
  35. ^ Fjeld (2019年5月13日). “Fillerister "sjaman"-foredrag”. Dagbladet.no. 2022年6月11日閲覧。
  36. ^ Stephansen (2019年10月17日). “Nå er det blitt så pinlig at hele kongeriket rødmer”. Nettavisen. 2022年6月11日閲覧。
  37. ^ “ノルウェー王女、お抱えシャーマンと来夏結婚へ”. AFPBB News. フランス通信社. (2023年9月14日). https://www.afpbb.com/articles/-/3481529 2023年9月15日閲覧。 
  38. ^ Barlow, Eve. “The Shaman and the Princess” (英語). The Times. ISSN 0140-0460. https://www.thetimes.co.uk/article/the-shaman-and-the-princess-ns6k979mw 2021年8月2日閲覧。