チャイルド・イン・タイム
「チャイルド・イン・タイム」 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ディープ・パープル の シングル | ||||||||
初出アルバム『ディープ・パープル・イン・ロック』 | ||||||||
リリース | ||||||||
録音 |
1969-1970年 IBCスタジオ、ロンドン | |||||||
ジャンル | ||||||||
時間 | ||||||||
レーベル |
ハーヴェスト ワーナー | |||||||
作詞・作曲 | ||||||||
プロデュース | ディープ・パープル | |||||||
|
「チャイルド・イン・タイム」(Child in Time)は、イングランドのロック・バンドのディープ・パープルの楽曲。1970年発表のアルバム『ディープ・パープル・イン・ロック』に収録された。 冷戦に多少触発された歌詞を持った、演奏時間が10分を超える大作である。
歴史と特徴[編集]
メンバーのイアン・ギランによると、「チャイルド・イン・タイム」はアメリカ西海岸のロック・バンドであるイッツ・ア・ビューティフルデイのサイケデリックな楽曲「ボンベイ・コーリング(Bombay Calling)」[注釈 1]を下敷きにしている[1]。彼は2002年のインタビューで、以下のように説明している[1]。
歌には2つの側面、音楽の面と歌詞の面があります。音楽面では、イッツ・ア・ビューティフル・デイというバンドによる楽曲「ボンベイ・コーリング」が以前よりありました。ある日ジョン(ロード)がこの「ボンベイ・コーリング」をキーボードで演奏すると、それは新鮮でオリジナルでした。素敵に聞こえたので、私達はその音(フレーズ)を真似て遊んで、それをベースとして活かしつつ少し変えて何か新しいことをやろうと考えました。私は「ボンベイ・コーリング」のオリジナルを聞いたことがなかったので、冷戦をテーマに"Sweet child in time, you'll see the line."という言葉を書きました。ここに歌詞の側面が入ってきたのです。その後、ジョンがキーボード、リッチー(ブラックモア)がギターのパートを書きました。この曲はまさに当時の雰囲気を基本的に反映していて、それが非常に人気が出た理由なのです。
「チャイルド・イン・タイム」は、戦争と非人道主義をテーマにしたヘヴィメタル・アンセムであり[2]、アート・ロックの例である[3]。この曲はブラックモアがギブソン・ES-335[注釈 2]を使って録音した最後の一つであり、ギランのトレードマークである高音の叫び声を含んだ幅広い声域が反映されている。
ディープ・パープルは1969年7月にギランとロジャー・グローヴァ―を迎えて第2期を開始して、同月10日にロンドンのスピークイージー・クラブの初舞台に立った[4]。彼等は国内でライヴ活動を行ないながら本曲を含む新曲を書き始め、8月下旬に始まったヨーロッパ・ツアーで早くも本曲を披露した[注釈 3]。1970年のアルバム『ディープ・パープル・イン・ロック』で本曲が正式に発表された後は、1973年にギランとグローヴァーが脱退して第2期が終わるまでの主なコンサート、第2期のメンバーによる1985年と1987年から88年にかけての再結成ツアーで取り上げられた後、1995年以降は常時には演奏されなくなった。2002年のヨーロッパツアーのセットリストにそれは再追加され、同年3月にハリコフのオペラ劇場で行われたディープ・パープルのライブセットが最後の演奏となった[5]。
ライブ・バージョンでは1972年のライブアルバム『メイド・イン・ジャパン』が最後の演奏。別のライブバージョンは1970年9月に収録されたライブアルバム『Scandinavian Nights』/ 『Live in Stockholm』に収録。1969年に未発表曲として演奏されたものは、9月24日にロイヤル・アルバート・ホールで録音された音源が『ディープ・パープル・アンド・ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ』のCDの追加版、10月4日にモントルー・カジノで録音された音源が"Live in Montreux 69"(2006年)に収録されている。
栄誉[編集]
「チャイルド・イン・タイム」は1989年、ラジオ・ヴェロニカの「スーパー・アワー・タイム・リスト」で1位にランクされた [6]。この楽曲は、ギタリスト(雑誌)読者投票による1998年の歴代ギター・ソロのトップ100では、16位に入った[7]。英国のディスクジョッキー、ジョン・ピールの1976年Festive Fiftyのリストでは25位となった[8]。
大衆文化でのカバーおよび引用例[編集]
- 1973年にディープ・パープルを脱退したギランが1975年に結成したイアン・ギラン・バンドが、デビュー・アルバム『チャイルド・イン・タイム』(1976年)でライブジャズの影響を受けたカバーを発表。1977年の日本公演でも演奏されて、ライヴ・アルバム『ライヴ・イン・ジャパン』(1978年)に収録された。
- イングヴェイ・マルムスティーンが1996年のアルバム『Inspiration』でカバー。
- ロードのオルガンによる前奏は、ビッグ・オーディオ・ダイナマイトによってサンプリングされ、楽曲「Rush」の前奏に使用された。
- 一部が1996年の映画『ツイスター』『奇跡の海』と『23』で使用された。
- 1999年にアカデミー賞を受賞したドキュメンタリー『9月のある日』(1972年ミュンヘンオリンピックの人質危機に関する作品)で使用された。最終的な空港銃撃戦の激しい結末での素早いモンタージュ編集間に演奏されている。
- Bottom Live 2003: Weapons Grade Y-Fronts Tourのフィナーレで使用された。
- 2003年のアルバム『Deep Purple Tribute』でカクタス・ジャックがカバー。
- ブラックモアズ・ナイトによる2006年のスタジオアルバム『The Village Lanterne』に、「Mond Tanz / Child in Time」というタイトルの新たな分断バージョンが登場した。
- 一部が2008年の映画『バーダー・マインホフ 理想の果てに』で使用された。
- 一部が2007年のBBCのテレビドキュメンタリー『The Secret Life of the Motorway』3部シリーズの最後の番組で使用された[9]。
- 2009年6月9日にブエノスアイレスのショーでラタ・ブランカとターヤ・トゥルネンがカバー[10]。
- 音楽ゲーム『ロックバンド3』でダウンロード入手可能なコンテンツとなっている。
- 前奏部分が、ドイツのダンスフロアプロジェクトSnap!にて行われた「Exterminate! 」の前奏バージョンにおける基礎として使用された。
- 2010年に日本のメタルバンドLiv Moonが7分59秒の長さでカバー。
- Anu Malikは、ヒンディー語映画『Akele Hum Akele Tum』の楽曲「Aisa Zakhm Diya」のオープニングと最終部分についてこの曲からひらめきを得た[11]。
- フランスでフラワーバイケンゾーのコマーシャルで使用された。
その他[編集]
- 彼等に「ボンベイ・コーリング」を「パクられた」イッツ・ア・ビューティフル・デイは、仕返しとばかりに、同じ1970年に発表したセカンド・アルバムで彼等の「Wring That Neck」[注釈 4]を「Don and Dewey」へと改変した。
- 本曲録音時のメンバーからブラックモアを除いた4人とスティーヴ・モーズ(ギター)からなるディープ・パープルは、1995年にインドのムンバイ(旧ボンベイ)で開催したコンサートのライブを『ボンベイ・コーリング』と題して発表した[12]。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 「ボンベイ・コーリング」を収録したイッツ・ア・ビューティフル・デイのデビュー・アルバム『It's a Beautiful Day』は、1968年から69年にかけて録音され、1969年6月に発表された。
- ^ 彼はディープ・パープル結成以来、主にES-335を用いてきたが、この後フェンダー・ストラトキャスターに切り替えた。
- ^ 1969年9月24日にロイヤル・アルバート・ホールでロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団と共演して「グループとオーケストラのための協奏曲」を披露した時にも、彼等だけの第2部で本曲を披露した。
- ^ セカンド・アルバム『詩人タリエシンの世界』(1969年)に収録。日本やアメリカでは「ハード・ロード (Hard Road) 」と改題された。
脚注[編集]
- ^ a b Kusnur, Narendra (2002-05-03). "Ian Gillan, Mumbai, India. 3 May 2002". Mid-Day Newspaper. Retrieved 2006-12-30.
- ^ Jacqueline Edmondson Ph.D. (3 October 2013). Music in American Life: An Encyclopedia of the Songs, Styles, Stars, and Stories That Shaped Our Culture. ABC-CLIO. p. 38. ISBN 978-0-313-39348-8.
- ^ Pete Prown; HP Newquist (1997). Legends of Rock Guitar: The Essential Reference of Rock's Greatest Guitarists. Hal Leonard Corporation. p. 78. ISBN 978-0-7935-4042-6.
- ^ Popoff (2016), pp. 56, 60.
- ^ Deep Purple Setlist at Opera House, Kharkiv, Ukraine,setlist.fm.
- ^ Super All-Time List - From 1989
- ^ Top 100 Guitar Solos of All-Time
- ^ John Peel's Festive Fifty 1976
- ^ documentary "The Secret Life of the Motorway",BBC.
- ^ Metal from Finland: TARJA TURUNEN covers Deep Purple's "Child In Time" Archived 14 January 2010 at the Wayback Machine.
- ^ "Chori se Chori se...when copied songs are as good as the original". Daily News and Analysis. Retrieved 14 September 2016.
- ^ “Discogs”. 2024年5月3日閲覧。
引用文献[編集]
- Popoff, Martin (2016). The Deep Purple Family Year By Year Volume One (to 1979). Bedford, England: Wymer Publishing. ISBN 978-1-908724-42-7
関連項目[編集]
外部リンク[編集]
- ディープ・パープルのオフィシャルサイト
- 「チャイルド・イン・タイム」の歌詞 - メトロリリック
- IT`S A BEAUTIFUL DAY(「チャイルド・イン・タイム」と「ボンベイ・コーリング」の関係に言及した日本語サイト)