タイリンキンシバイ

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タイリンキンシバイ
タイリンキンシバイ
タイリンキンシバイ
分類APG IV
: 植物界 Plantae
: 維管束植物Tracheophyta
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: キントラノオ目 Malpighiales
: オトギリソウ科 Hypericaceae
: オトギリソウ属 Hypericum
: ビヨウヤナギ節 sect. Ascyreia[1]
: タイリンキンシバイ
H. × hidcoteense
学名
Hypericum × hidcoteense Geerinck (2001)[2][3][4]
シノニム
和名
タイリンキンシバイ

タイリンキンシバイ[7] Hypericum × hidcoteense(大輪金糸梅)は、オトギリソウ科の直立する半常緑小低木[7][6][8]Hypericum addingtoniiセイヨウキンシバイ H. calycinum および Hypericum hookerianum を親種とする3種間雑種に起源するとされる園芸品種である[2][注釈 1]ヒペリクム・ヒドコート (Hypericum 'Hidcote') とも呼ばれる[7][11][8]

キンシバイ H. patulumと似ているが、本種は葉が平面上に並ばず、十字対生状に節ごとに角度がややずれてつくことや、花の径が約6 cmセンチメートルと大きいことからキンシバイと区別される[7]。かつてはキンシバイの園芸品種 Hypericum patulum 'Hidcote' として扱われた[5][12][注釈 2]。また、Hypericum forrestii とセイヨウキンシバイ H. calycinum の雑種と考えられたこともあった[6]

形態[編集]

樹形。多数の枝の末端に花序を付けている。
多数の枝を伸ばし、叢状に密に茂る。
十字対生となった花序を付けていない枝。枝は円柱形で赤く色づく。
葉柄はごく短い。 葉は対生で、枝に節ごとにややずれてつく。

樹高0.3–1 mメートル[7](1.5 mとも[6][8])。褐色円柱状の枝を出し、叢状に密に茂って横方向への広がりは1.5 mに達する[6][8]。枝は赤みがかっており[7]、稜をもたない[1]長楕円形から狭卵形、また披針形で、長さ(3–)4–5(–6) cm、最大幅は基部寄りにある[7][6][8]向軸側は暗緑色なのに対し、背軸側は薄い青みがかった緑色で[6][8]網状脈葉脈(側脈)がはっきりしており、キンシバイに比べよく見える[6][7]葉柄はごく短い[7]。葉はキンシバイに比べて厚い[7]対生で平面に並ばず、節ごとに角度がずれてつく[7]

集散花序を頂生する。
黄色い平面的な花で、短い雄蕊をつける。花弁の縁は切れ込んでいる。
花はキンシバイと違って大きく開き、直径6 cm近くなる。雄蕊は5本の束となる。
雌蕊はキンシバイより長く、子房と花柱がほぼ等長となる。

花は少数が集散花序として頂生し、6月から10月にかけて咲き続ける[6]花冠は平開し、径は5 - 7 cm、花色はゴールデンイエロー(黄金黄色)[6][8]花弁は基部3分の1だけが重複し、縁はよく多少切れ込む[6]雄蕊は花弁の3分の1の長さしかなく、橙色[6]花柱は5本で、離生し、子房とほぼ等長[6]。稀にしか結実しない[6]

人間との関わり[編集]

起源は定かではないが[6][11]1920年から1930年にかけてのイングランドで作出されたと考えられている[6]。よく好まれ、広く植栽される[6]庭木や公園樹として普通に用いられる[7]。キンシバイに比べ樹勢が強いほか、花径も大きく花数も多いため園芸品種として優れる[11]。葉が細くなり、斑入りにするウイルスに感染しやすい[14]

ギャラリー[編集]

花序。4つのを付けている。
若い果実。
花と赤い新葉。
よく花をつけ、庭木として好まれる。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ なお、Hypericum addingtonii および Hypericum hookerianum の雑種は Hypericum × cyathiflorum N. Robson (1985) と呼ばれるが[9]、正名として受け入れられた名前 accepted name ではない[10]
  2. ^ Hypericum patulum cv. Hidcote とも表記される[13]

出典[編集]

  1. ^ a b Krüssmann 1986, p. 161.
  2. ^ a b Hypericum × hidcoteense Geerinck”. Plants of the World Online. Kew Science. 2023年6月8日閲覧。
  3. ^ Hypericum ×hidcoteense Geerinck”. GBIF. 2022年6月3日閲覧。
  4. ^ Geerinck Taxonomaniac 1: 12 (2001) にて発表。
  5. ^ a b c Krüssmann 1986, p. 162.
  6. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q Krüssmann 1986, p. 165.
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m 林 2020, p. 457.
  8. ^ a b c d e f g 英国王立園芸協会 2001, p. 170.
  9. ^ Hypericum × cyathiflorum”. Trees and Shrubs Online. 2023年6月8日閲覧。
  10. ^ Hypericum × cyathiflorum N.Robson”. Plants of the World Online. Kew Science. 2023年6月8日閲覧。
  11. ^ a b c 塚本 監修 1989, p. 127.
  12. ^ 塚本 監修 1984, p. 540.
  13. ^ 横井 1998, p. 221.
  14. ^ 英国王立園芸協会 2001, p. 586.

参考文献[編集]

  • Krüssmann, Gerd (1986) [1977]. Manual of cultivated broad-leaved trees & shrubs Volume II, E–PRO. Epp, Michael E. (translator); Daniels, Gilbert S. (technical editor) (3 ed.). London: B. T. Batsford Ltd.. ISBN 0713453486 
  • 英国王立園芸協会 監修『新・花と植物百科』クリストファー・ブリッケル 責任編集、塚本洋太郎 監訳。、同朋舎、2001年3月15日。ISBN 4-8104-2657-2 
  • 塚本洋太郎 監修『原色花卉園芸大事典』養賢堂、1984年12月10日。ISBN 978-4-8425-0006-5 
  • 塚本洋太郎 監修『園芸植物大事典 4』小学館、1989年7月10日。ISBN 4-09-305104-6 
  • 林将之『山溪ハンディ図鑑14 増補改訂 樹木の葉 実物スキャンで見分ける1300種類』山と溪谷社、2020年1月5日。ISBN 978-4-635-07044-7 
  • 横井政人「オトギリソウ科」『山溪カラー名鑑 園芸植物』鈴木基夫・横井政人 監修、山と溪谷社、1998年4月1日、220-221頁。ISBN 4-635-09028-0 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]