スロウハイツの神様

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
スロウハイツの神様
著者 辻村深月
発行日 2007年1月11日
発行元 講談社
日本の旗 日本
言語 日本語
形態 新書判講談社ノベルス
ページ数 (上) 244・(下) 318
コード (上) ISBN 978-4-06-182506-2
(下) ISBN 978-4-06-182512-3
[ ウィキデータ項目を編集 ]
テンプレートを表示

スロウハイツの神様』(スロウハイツのかみさま)は、辻村深月による日本小説書き下ろし

あらすじ[編集]

人気作家チヨダ・コーキが、ファンによる殺人ゲームにより筆を折ってから10年。「コーキの天使ちゃん」によって復活を遂げたチヨダ・コーキは、新人脚本家・赤羽環に誘われ、彼女がオーナーを務める「スロウ・ハイツ」に入居し、クリエーターを志す狩野たちと暮らし始める。加々美莉々亜の存在から変革を始めていたスロウハイツでの生活は、ある日、一通の郵便が環の手に渡ったことで大きく揺れ始める。

登場人物[編集]

スロウハイツの住人[編集]

スロウハイツに住む人物たちは皆、「チヨダ・コーキ」のペンネームをもつ公輝を始め、「スー」、「エンヤ」、「ハイパークール」、「マサくん」等、作中カタカナで表記されたことのある別名を持っている。

赤羽環(あかばね たまき)
人気脚本家にしてスロウハイツの家主。自身スロウハイツの3階に暮らしている。大学生の頃、ある有名脚本家が引退する際に後継者を募集。これに環は応募し、見事その後釜の座を勝ち取った。チヨダ・コーキの大ファンである。負けん気が強く、これでもかというほど反骨精神に富んでいる。きれいな水で作った日本酒が好き。
チヨダ・コーキの作風を真似る作家、「鼓動チカラ」に猛烈に反発する。写真家の芦沢理帆子と知り合いである。妹桃花がいる。
千代田公輝(ちよだ こうき)
スロウハイツ202号室に住む。中高生に大人気の作家。「チヨダ・コーキ」のペンネームで高校2年生のときに代々社のノベル新人賞を受賞し、以降「チヨダブランド」としてヒット作を量産し続ける。10年前に、熱狂的ファンが彼の作品を模倣した殺人ゲームの事件を起こした影響で、3年間休筆していた。自称「被害妄想」病。家族以外の人間が作った料理が食べられない。高額納税者にもかかわらず服装には無頓着で、Tシャツの襟元が茶色に染まるまで同じものを着ていたりする。
猫背で手足が長く、エヴァンゲリオン初号機のような姿勢である。ファンたちからは「コウちゃん」と呼ばれる。
狩野壮太(かのう そうた)
児童漫画家を夢見る青年。誰も苦しまず、悲しまない世界観を描こうとするあまり、出版社への持ち込みもなかなかうまくいかない。スロウハイツ101号室に住む。
狩野が毎回持ち込みをしている漫画雑誌、『ケラケラコミック』のモデルは、小学館の『コロコロコミック』であると推測される。
長野正義(ながの まさよし)
狩野の親友。映画製作会社に勤務し、映画監督を志す。しかし、撮る映画になかなか感情を込められず、評価されない。
スロウハイツ102号室に居住。森永すみれと交際している。
森永すみれ(もりなが すみれ)
スロウハイツ103号室に住む。料理が得意で、スロウハイツ内でお祝いがあるとその腕を振るう。映画館でバイトをしつつ絵を描いている。正義から「スー」と呼ばれ始め、スロウハイツ内ではその呼び名が定着している。彼氏の髪を切ることが好き。
黒木智志(くろき さとし)
代々社の雑誌『週刊少年ブラン』の編集長を務める。203号室に住むが、出版社の近くにある別宅で寝ることも多い。狩野から「ハイパークール」と称され、仕事のためにすべてを捧げるような面も。チヨダ・コーキの売り出しを一手に引き受けている敏腕編集者。独身。
円屋伸一(えんや しんいち)
環の高校からの親友。201号室に住み、密かに漫画家を目指していたが、環をライバル視するあまり、スロウハイツを出て行ってしまった。狩野たちからは「エンヤ」と呼ばれる。
加々美莉々亜(かがみ りりあ)
エンヤが出て行ったあと、201号室に入居した、自称小説家にしてチヨダ・コーキのファン。ロリータの服装に身を固め、公輝の部屋に入り浸る。

その他の人物[編集]

赤羽桃花(あかばね ももか)
環の妹。大学生。後にスロウハイツで暮らすようになる。
拝島司(はいじま つかさ)
ゲームセンターで環と知り合い、付き合うようになった、環の新しい彼氏。男の趣味が悪い環にしては今回はいい男だと正義に評された。建築家で、スロウハイツの外観、内装ともに気に入っている様子。
芦沢理帆子(あしざわ りほこ)
写真家。父の名、「芦沢光」で活動している。「凍りのくじら」にも登場。公輝や環と親交がある。

スロウハイツ[編集]

表向きは、環が脚本を手掛けたドキュメンタリー調の映画「赤い海の姫君」を見たという老人が、使っていないからと元旅館だった建物を環に譲ってくれ、それをアパートに改築したことになっているが、実際は環が自身の祖父から貰ったという3階建ての建物。西武池袋線沿線に位置し、最寄り駅の椎名町駅までは徒歩で約15分。環が住む3階のみリフォームが施され、1階、2階は3部屋ずつあり、台所と洗面所は共有。入居希望者には人の好き嫌いの激しい環との面接が必要であり、狩野の友人は「バランスを考えない贈り物をした」という理由で不合格にされている。家賃は1ヵ月1万円であり、クリエーターを目指す狩野たちにとっては非常に魅力的な額であった。

作者が藤子不二雄Aの「まんが道」が好きで、トキワ荘のような共同生活の場所を舞台にしようと決めた。

漫画[編集]

本作を原作とした同名の漫画が講談社ハツキス』2016年11月号より連載されている。作画は桂明日香

舞台[編集]

2017年、演劇集団キャラメルボックスによって本作が舞台化された[1][2]。脚本・演出は成井豊。辻村は高校時代から、キャラメルボックスのファンであった[3]。2019年再演。

公演日程[編集]

初演
2017年7月5日 - 16日(サンシャイン劇場
再演
2019年3月22日 - 31日(サンシャイン劇場)
2019年4月5日 - 7日(サンケイホールブリーゼ

出演[編集]

脚注[編集]

  1. ^ サマープレミア「スロウハイツの神様」”. 演劇集団キャラメルボックス. 2017年5月8日閲覧。
  2. ^ 辻村深月; 成井豊 (2017年7月10日). “辻村深月の『スロウハイツの神様』が舞台化! 脚本・演出家の成井豊、“ラストが圧巻”『かがみの孤城』を語る!【前編】”. ダ・ヴィンチニュース. 2017年7月18日閲覧。
  3. ^ 林尚之 (2017年7月15日). “悲しみではなく幸せの涙、キャラメルボックスの舞台”. 日刊スポーツ. 2017年7月18日閲覧。

外部リンク[編集]