スッポン科

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スッポン科
ナイルスッポン
ナイルスッポン Trionyx triunguis
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 爬虫綱 Reptilia
: カメ目 Testudines
亜目 : 潜頸亜目 Cryptodira
上科 : スッポン上科 Trionychoidea
: スッポン科 Trionychidae
学名
Trionychidae Fitzinger, 1826
タイプ属
Trionyx Geffroy Saint-Hilaire, 1809
和名
スッポン科[1][2][3]
亜科、属

スッポン科(スッポンか、Trionychidae)は、爬虫綱カメ目に属する科。

分布[編集]

アフリカ大陸ユーラシア大陸アメリカ合衆国インドネシア日本パプアニューギニアメキシコ[4][5]

手取層群北谷層(福井県勝山市)での第1次から第3次恐竜化石発掘調査(1989-2010年)で発見された白亜紀前期の化石が世界最古とされており、白亜紀前期の化石が東アジアでのみ発見されていることから東アジアから世界に分布が広がっていったと考えられている[6][7]

形態[編集]

淡水域に生息するカメ目の構成種では最大級の大型種が含まれるが標本が現存したり、実際に計測した数値に基づく記録、信憑性の高い記録は少なく最大種に関しては複数の説がある[3]。一例として甲長100センチメートル以上の記録がある、もしくは推定される種はインドコガシラスッポン(標本に基づく記録で甲長110センチメートル)、タイコガシラスッポン(最大甲長122センチメートル)、カントールマルスッポン(最大129センチメートルだが甲幅が小さいことから疑問視する説あり)、ビブロンマルスッポン(最大甲長102センチメートル)シャンハイハナスッポン(推定甲長104.1センチメートル)、ナイルスッポン(現存する標本で最大甲長101.5センチメートル、推定110センチメートル以上)の6種に限られる[3]。最小種はヒラタスッポンで最大甲長26センチメートル[8]角質甲板が退化し、骨甲板は皮膚で覆われる[4][5]。甲羅を含め全身に大型鱗が無いため、皮膚呼吸(体表のみならず総排泄孔や咽頭粘膜からもガス交換を行う)も盛んに行う[5]。背甲は扁平な種が多く[4]、底質に潜りやすくなり隠蔽性を高めていると考えられている[8]。腹甲の可動性が大きいため頸部や四肢を収納した後、背甲と腹甲の隙間を閉じることができる[5]。フタスッポン亜科ではこれに加えて後肢の基部に蓋状の器官(フラップ)があり[4]、これにより乾燥を防ぐ効果があると考えられている[5]

吻端が突出し、細長い管状になる[4][5][8]。上顎及び下顎を覆う角質の鞘(嘴)は、肉質で覆われる[5]。頸部は長く、頸部の筋力も強い[5]。指趾には水掻きが発達し、第1 - 3指にのみ爪がある[4][8]

分類[編集]

頭骨や脊椎・吻端といった形態、核型酵素電気泳動ミトコンドリアDNA塩基配列による分子系統解析からスッポンモドキ科単系統群を形成するという説が有力である[8]

フタスッポン亜科 Cyclanorbinae[編集]

スッポン亜科 Trionychinae[編集]

多くの種が旧スッポン属Trionyxに分類されていたが、1987年に系統推定からTrionyxは模式種のナイルスッポンを残し細分化された[2]。この系統推定ではインドスッポン属Aspideretesと1属1種のミヤビスッポン属は姉妹群とされたが、後に核DNAとミトコンドリアDNAの分子系統推定でもこれらの単系統性が支持された[2]。一方でミヤビスッポンはインドスッポン属の姉妹群ではなく内群に含まれると推定され、インドスッポン属はより記載の早いミヤビスッポン属のシノニムとなった[2]

生態[編集]

河川湖沼などに生息する[5]。主に淡水域に生息するが、マルスッポン属は汽水域や海域で見られることもある[4][5]。フタスッポン亜科では乾季に泥中で休眠する種もいて、フラップが役立つと考えられている[5]

食性は動物食もしくは雑食で、魚類昆虫甲殻類、動物の死骸、果実などを食べる[4][5]。食物を探索して動きまわる種が多いが、コガシラスッポン属やマルスッポン属は底質に身を潜め、獲物が通りかかると瞬時に首を伸ばす待ち伏せ型の捕食を行う[4][5]

人間との関係[編集]

生息地では食用とされることもある。日本に分布するスッポンも各地で食用として繁殖されたため分布の撹乱が起こっており、移入個体群が確認されている[5][9]

開発による生息地の破壊や、水質汚染、食用の乱獲などにより生息数が減少している種もいる[3]

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。大型種が多いため、大型のケージが用意できない場合は一般家庭での飼育には適していない[8]

画像[編集]

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d 安川雄一郎 「スッポン科の分類と自然史2」『クリーパー』第69号、クリーパー社、2014年、18-41頁。
  2. ^ a b c d 安川雄一郎 「スッポン科の分類と自然史3」『クリーパー』第73号、クリーパー社、2015年、18-26頁。
  3. ^ a b c d 安川雄一郎 「スッポン科の分類と自然史4」『クリーパー』第74号、クリーパー社、2015年、22-53頁。
  4. ^ a b c d e f g h i 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、90、97頁。
  5. ^ a b c d e f g h i j k l m n 安川雄一郎 「水棲ガメの世界」『ハ・ペト・ロジー』Vol.3、誠文堂新光社、2005年、17、20、26、42-43頁。
  6. ^ “勝山から世界最古のスッポン化石 恐竜博物館が発見、中国出土より古く”. 福井新聞. (2017年4月21日). http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/society/119676.html 2017年4月22日閲覧。 
  7. ^ Nakajima, Y., I. G. Danilov, R. Hirayama, T. Sonoda, and T. M. Scheyer. (2017). “Morphological and histological evidence for the oldest known softshell turtles from Japan”. Journal of Vertebrate Paleontology. doi:10.1080/02724634.2017.1278606. 
  8. ^ a b c d e f 安川雄一郎 「スッポンモドキの分類と自然史」『クリーパー』第24号、クリーパー社、2004年、9、12、17頁。
  9. ^ a b 鈴木大 「遺伝的変異に基づくスッポンの日本列島集団について」『クリーパー』第73号、クリーパー社、2015年、27-31頁。

関連項目[編集]